リベンジマッチ ラスト
別にサブタはダイハ○ドを意識してた訳じゃありません。
大型の銃がまるで一本の腕に統一化され、酷くバランスの悪い腕部兵器が形成されていった。
銃床がトリガー方面に向かって縦に折畳まれ、その時にグリップ、トリガー等は一緒に銃身の中へと消えた。銃の全体像が細長い盾のような形になると、銃床の折られた箇所から一本の無骨で太い、斜めに切り込みの入った黒塗りの鉄棒が現れる。
銃身全体が更にスライドされて細長い盾から少し面積がコンパクトになり、重機械のような外見に変貌すると、肘から先の腕が銃の中に完全に納まってしまう。最後にはバレルが三つ叉に変形して、バレル全体が後方へとスライドされる。
バレルの中から現れた腕は、手先が折り畳まれて一本の杭になっていた。黒塗りの鉄棒が肘後方に引っ張られると、尖った手も一緒に引っ張られ、バレルが腕を軸に回転を始めて赤電が渦巻き始める。
「まさかのパイルバンカーだとッ!?」
なんて浪漫の塊なんだ、コイツ……デキる!
しかもこれはただの合体などではない。武器と一体化して、己をも武器そのものとしているのだ!
腕の合体にインパクトがありすぎて目が釘付けにされていたが、オートマタ全身にも変化が訪れている。
背中から外気に晒されたエンジンの塊が赤く熱され、ありえない程の熱気を放ちながら爆音を搔き鳴らしている。
背後に取り付けた複数のスラスターやブースターが青い炎から白い輝きに――最終的に凶悪な赤を思わせる光を放っている。
先ほどまで全身に刺さっていたアイスダガーが熱によって崩壊し、顔面のブラックスクリーンが割れて落ちると、筒のような目が二つ現れていた。眼光は赤く煌き、さながら神の怒りにでも触れたような気がする程の威圧感を漂わせた。
『これこそ、俺が最後に手に入れた最強兵器、《サンダーボルト》だ! 全てを打ち砕く最速最強の矛! 貴様がどのような小細工をしようが関係ない! この圧倒的な力で貴様を葬ってやろう!
負けた事を気に病む事はない、むしろ誇るがいい! ゼタ! 貴様にとってはこの敗北は必然であった! だが貴様は俺の予想をはるかに上回り善戦した!
これはその褒美だ。冥土の土産に持って行くがいい!!』
おお、素晴らしい、そこまで言いきれるとはなんと素晴らしい文句の羅列だ。拍手喝采したい気持ちにさせられる。
だが、間違っているぞ。大いに間違えている。
「アンタの武器には賛辞を送らせてもらおう。でも決定的な間違いがある。これから敗北するのは俺ではなく、前しか見えていない猪突突撃馬鹿だって事を教えてやる。アンタの事さ!
自分が最強の矛とか勘違いしてるんだろうが、馬鹿言えよ。アンタは俺の最強の防御魔法『マルコシアス』に傷一つ付ける事なんてできやしない。断言するぜ! 絶対に、アンタに俺の最強は敗れない!」
混合魔法『コキュートス』を使用する。スノーの周囲に風と闇と氷の三種の属性が混じる空間が発生する。さらに演出として薄くシルバーダークネスを使用させ、最後の仕上げにと、変装により金髪だった毛色を今更銀に戻すために髪染め解除の指令を出す。スノーの髪が根元から徐々に銀に変化していく。
場も整い、魔力撃を溜めて『大氷壁』と入力する。変換して数値の羅列にしてスノーに氷壁を築かせた。さて、ココから先は黙るとしようか。
『ほう? あの時の氷壁か。ハハ、己の最強を誇る矛盾の勝負、なるほど。これは面白い、いいだろう。受けて立ってやろう』
自分に絶対の自信があるからだろう。あえてコチラの提案に乗ってくれる部分は嬉しい相手だ。
氷壁が完全に構築され終わる――と、それを待っていた赤く燃え上がるシグがとんでもない爆発力でバーニアを噴かせ、地面と空気の両方を蹴って襲い掛かってきた。
カタパルトから射出されたジェット機のように、一切のブレもなく真っ直ぐ、トップスピードに到達するまでに一秒にも満たない時間で迫ってきた。
氷とぶつかる直前、パイルバンカーを突き出し、爆音と氷を溶かして砕く衝撃がけたたましく鳴った。蒸気と氷塊が辺りを散らかされて切り開いてくる。それだけに留まらず、耳が破壊されるかと思うほどの割れる音でインパクトを知らせた。同時に画面内が発光してホワイトアウトしてしまう。一時的に何も見えなくなってしまった。
そんなインパクトの瞬間も、止まる事のない怒涛の衝撃が氷壁を派手にぶち壊し、後に残ったのは前方を一掃して空間そのものをバラバラに引き裂いたような惨状だった。
氷壁どころか、氷壁の先には何も残っていないかにも思えた。ただ見つけたのは、誰かの残骸と思わしき物体、膝から下だと思われる二本の足が二つ残っているだけだった。
まるで今の一撃で、何者かが膝から上すべてを灰燼と還されて消えてしまったかのようだった。
『……クハ、ハハハッ! なんと呆気ない! コレが最強の盾だと? 笑わせるなよ、ザコエルフが!!!』
ついに勝利を手に入れた、そんな風に高笑いでもしたかったのだろうが、そんな彼に空中専用コマンド、天中殺をお見舞いしつつ――
「――その通りだよ、マヌケ」
――言ってやった。
『…………は?』
目前の画面には、シグの背後上空から、脳天を縦に斬り裂く大太刀を振るうスノーの姿が映されていた。氷の刃は容易くオートマターの頭の天辺から刃が侵入し、流れるように肩首、脇腹と抜けて、ザパッと裂かれていく。
「もう一度、たっぷりと言ってやろうか、このマヌケめ。今のが最強の盾なワケないだろ、あっさり騙されやがって」
たっぷりと。それはもう皮肉と嘲笑と今までの鬱憤をブレンドして、隠し味にしたり顔をして絶望を味あわせてやった。
『な、なんでッ!? そこに居るのは――』
「ざぁんねんでした!! アンタが盛大にぶっ壊したのは変わり身の術(スノーの氷像)だ! こちとら忍者だぜ? なんの布石もせずに氷壁に隠れるわけないじゃないか!」
姿が隠れた瞬間、氷魔法でスケープゴートを用意し、自身は闇魔法のインジビブルで姿を消して、回避と攻撃のために上空へと移動したのだ。上空に飛び上がった方法は氷魔法のアイシクルタワーを使った。アレは防御以外にも立体的な行動をする時にも役に立つ。もっとも、それに気がつく為のヒントは、シグさんが自分でぶっ壊してくれたようだが。
『キ、貴様……最強の矛と盾の勝負はどうなったんだ?!』
「そんなもんアンタの勘違いだろ? 確かに最強の盾は絶対破れないと思ってる。でも使うだなんて一言も言ってないし、そもそも忍者は隠れ忍ぶものだぜ? 力を見せびらかせてどうする」
『どの口が言ってるんですかね……』
おっと、スノーさん。それ以上は言わなくていいぞ。こんなのは相手が悔しがるように適当に言ってるだけだ。
ふふん、と最後は得意げに鼻を鳴らしてやってから、さてと気分を改めて締めに入ろう。
「さあ、シグさん。ザコだと思ってたエルフ族に敗北した気分はどうですか? あ、褒めてくれてもいいんですよ?」
『……クソったれ……があ!!』
机でも殴りつけるような音がするなぁ。オンラインゲームで台パンする人と始めて出会ったかも。
しばらくすると、ぶつぶつと雑音交じりの音声に変わり、恨み節でも残していくように言葉を残した。
『汚い。さすが忍者、汚い』
接続が切れた。
「ありがとう。それは最高の褒め言葉だ」




