英雄色を好む。
朝日が眩しいな、つい夢中になってしまった。そろそろ帰り支度をするかな。
「まってぇ、帰らないでぇ。」
俺の隣には、とても煽情的な格好の女性が居る。
一晩中楽しませて頂いたお方だ。
ごめんな、もう行かなきゃいけないんだ。
「駄目ぇいっちゃやだぁ。」
いちいちエロいな。流石プロだ。
断腸の想いで、しがみつく腕をやんわりと離す。
あれ?離れない?ん?糸?
「アラクネの女は狙った獲物は離さないのよ。」
その魔道具は何かな?
「ごめんなさい英雄様、見つけたら知らせろって言われてるの。」
信号を発する簡易魔道具だな。
「せめてものお詫びに抱きしめてあげるわ。」
おおう、ボリューミーな感覚で顔が幸せだ。
罠だと分かっているが、抜け出す事が出来ない。
くっ!なんて高度な罠を仕掛けてくるんだ。
およそ一時間ほど経ち、俺の葛藤を他所に階下から、金属鎧の音が上がってきた。
「ここで間違いありませんか。」
「はっ!簡易魔道具の信号は、この部屋から出ております。」
バンッ‼︎
勢いよく開かれた扉から、漆黒の鎧を身に付けた鬼人族の美女が入ってくる。
「なっ!いつまで抱き着いているのですか!総員確保!」
鬼人族の号令で、揃いの鎧姿の男達が部屋に入ってくる。
男達は手慣れた様子で、糸で巻かれた俺を担ぎ上げる。
「またね英雄様♪楽しかったわ。」
アラクネなケニーちゃんは、男から小さな小袋を受け取り、手を振りながら去って行く。
今度会ったら、俺の懸賞金はいくらなのか聞いてみよう。
さて、おはようシンシア。
「おはようございます、ユウ様。朝食などご一緒にいかがでしょうか?」
それは願ってもない、ぜひご一緒させて下さい。
ところで、この糸はどうしようか?
「連れて行きなさい。」
あれぇ?聞こえてない?この糸の下は剥き出しの抜き身なんだが。辛うじて下半身は糸で巻かれているが上半身はマッパなんだが。
外は寒い上に、光の角度によっては魔剣が見えてしまうのだが。
「さっいきましょうか、ユウ様。」
屈強な男達に担がれた俺は街を行く。