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ⅱ 血縁の無い者と仲間意識を持とうとする。

主人公目線と、外部の語り手目線が混ざりますが、そういうものと思って頑張って読んでください。

「最果ての結び」を先に読んでいただけると、繋がる節があるかと思います。それ目的で書いてるので。

 

 お昼ご飯。私は弟が作った弁当を食べる。あ、ちなみに弟はめちゃくちゃ健康。

 -ガガガ、と机の動く音がそばで聞こえた。彼のお出ましだ。

「白石さんもお弁当なんだね。一緒にどう?」

 今日はやけに絡むな。しかし断る理由もないので、承諾する。「やった♪」と弁当箱を開けたユウギの顔は、何故だかどんどん青くなっていった。

「どしたのー?…って、あちゃー」

 私のあちゃーの下には、おかずが入った弁当箱が2つあった。兄妹弁当あるある。

「届けに行ってあげなよー。両方白米の妹さん酷だから」

「う、うん。じゃあ…」

 立ち上がると同時、私の後方で勢いよくドアが開いた。振り返ると、目を閉じたまま教室に向かって立つ女の子と、その子と手を繋いでいるおそらくドアを開けたであろう女の子が立っていた。どちらも中等部の制服。目を閉じている女の子は視覚障害とわかったが、繋いでいる子は何の病気だろう。

「柑梛!丁度良かった。今ね…」

「丁度良かったじゃねぇよ。兄貴と弁当交換するためにわざわざみーちゃんについてきてもらったんだよ」

 シワを寄せて不機嫌そうな顔をして女の子は言った。状況からするにユウギの妹だろう。

「柑梛ちゃん、お兄さんが可哀想だよ。時間もないし、ちゃっちゃと交換しちゃいな」

 両手をクロスさせてもう一人の女の子が言った。ぶんぶんと小さい腕が振れる。なるほど。この子の病気がわかった。現実では無いとされている《花咲き病》または《寄生草花》と呼ばれる、腕や足から花が生えるという奇病だ。先程は右手しか見ていなかったからわからなかったが、左手に花が生えているのが見える。隠そうとしている痕もあった。

「ちっ、次は間違えんなよ」

 大きな舌打ちをして、二人は去っていった。ユウギはきっと怒っているだろう。自分に用意させてるくせにと。

 恐る恐る顔を見ると、大粒の涙がほろりと流れた。

「うぅ…。柑梛怖いよぉ…」

 なんと、泣いてしまっているのである。高校二年生になって妹の言動に泣くのか。

「ユウギくーん。とりあえず、お弁当食べよ?」

 ずっこけて傾いた眼鏡を直し、席に座るよう促す。口調のキツい妹、カンナにも驚いたが、ユウギもなかなかだ。意外と私は常識人なのかもしれない。

「妹さん…カンナちゃんって、いつもあんな感じなのー?」

「うん、目が見えてた頃も男勝りな性格でね。そのせいか友達もあのみーちゃん…深風ちゃんしかいなくてさ。本人は『みーちゃんさえいればいい』って言ってるけど…。お兄ちゃんとっても心配」

 しょぼーんとする悠義。この表情は少し可愛い。本題の感想としては、友達は一人いればいいというのは共感できる気がする。私も友達はいないし。

「私はああいう口調でも気にしないけどねー。いい子そうだし」

 その時、普段はアルビノの影響で濁った色をしている白石の目が、桃の澄んだ色に見えた。


 というのを悠義は未だに言えずにいる。


 ×××


 名前。というより苗字だった。覚えていたのは。彼も私の下の名前までは覚えていなかったらしい。教えてあげた方がいいだろうか。


 午後の柔らかい日差しが暖かい教室内。この絶好のステージで、眠る以外の選択肢はない。机に伏せて、そのまま夢の世界へ……行こうとしたその時だった。

「下の名前、何ていうの?」

 彼がこう聞いてきた。折角の機会なので答えよう。眠いけど。すばり、

「白石…まひる」

 である。なんで『まひる』かはわからない。

 眠そうにそう伝えると、ニコッと爽やかな笑顔を向けて答えてきた。

「まひるちゃんか。可愛い名前だね。改めて、僕は結月悠義。よろしくね」

「結月っていうんだー。よろしく」

「このタイミングでいうのも変だけど、僕が何の病気か知ってる?」

 そう言われれば、彼が何の病にかかっているのか考えてなかった。なんだろう。

「わからない。ちなみに私はアルビノ」

「うん、それはなんとなくわかった。僕は《睡眠時遊行症》だよ。通称《夢遊病》」

 なるほど。だから気づかなかったのか。しかしそれならここに通う必要はないはずだ。症状は眠っている内にしか起こらない。

「なんでだろって思ったでしょ。実は《ナルコレプシー》も発症しててね。どっちかというと夢遊病の方が症状出ないんだ」

 そういうことなら納得がいく。ということは今も眠気と戦っているのだろうか。授業中とか大変そうだ。

「だから電車の中で寝ちゃうと大変でね。柑梛とは常に手を繋いで移動してるんだ」

 二人で支え合っているところを想像すると、まひるは羨ましく思える。自分は弟に支えてもらってばかりだからだ。眼鏡を外せばほとんど見えないし、体が弱い。姉らしいことをしたことなんて一切ない。

「いいねー。助け合えるの。いい兄妹だねー」

 少し妬ましさも混じる変な感情に、笑うしかないまひるだった。


 友達ができたと嬉しそうに報告する悠義の顔は、柑梛には見えない。

結構これ書くの楽しんでます。引き続き同時進行で頑張ります。

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