やってきたプリンセスはイケメンゴリラで、俺のハートがパーリナイ
ヤ!俺は、クールなナイスガイでありながら、誰もが、キャーペットに欲しいぃ!という位に可愛いキューティーミラクルボーイこと、グラハム・ディケンズ!ちなみに侯爵令息さ!
そんな俺の事は、気楽にグラハム様と呼ぶといい。女の子からは、そう呼ばれているからな。さすが、俺、皆の尊敬を集めるキューティーミラクルハッピーボーイだぜ。
おかげで、引く手数多の俺は、90歳のおばあちゃんから、0歳のベイビーにまで、愛され、恋をされるわがままボーイ。俺は、皆のものだから、誰か1人のものにはなれないんだ、すまないキティーちゃん達…と断り続けて、はや18年。
そんなアイドルな俺にも、ついに婚約の話がきた。
俺は、親父とお母様に言ってやったさ。
「ヘイヘイ、親父〜!俺は、まだ、結婚する気はないぜ?なぜなら、そう!皆が俺を求めているから、誰か1人のものになってしまうと、戦争が起きてしまう!俺のために争うだなんて、俺は耐えられない!まじ、これ、本当。女の戦い、恐い」ってな!
そしたら、親父に殴られて、気絶させられ、俺は知らない間に血判を婚約書に押させられ、この国の女王と婚約させられたんだ。
まあね、女王だからね、今まで、ムキー、グラハム様が誰か1人のものになるなんて耐えられないわー!と怒ってた女の子も、仕様がないって身を引いたよね。おかげで、戦争は起こらなかった。素晴らしいぜ…。
別れを惜しんだ女の子達には、一人一人と懇切丁寧に対応した。皆、泣いていた。俺も泣いた。
そしたら、ハンカチをあちこちから渡されて、俺の涙を拭いた後ハンカチが、逆に戦争の火種になったよね。
だが、俺は、ハイスペッククールナイスガイ。涙くらい、いつでもどこでも出せるのさ!
全員分のハンカチに俺の涙の跡が着いたぜ。まったく、1つ涙を見せるだけで、これだから、困っちまうぜ…。さすがは、グラハム・ディミトリ。1000年に一人の色男と言われるだけはあるぜ。
ん?自慢かだって?
フ…、自慢さ!
そうやって、俺が別れを惜しんでいる時に、とある男がやって来た。
そう、俺に嫉妬した可哀想なチェリーボーイさ。慣れきった俺は、彼に笑いかけてやった。俺は、優しい蜂蜜みたいな男だから、こうやって、笑顔を振りまいているのさ。うれしかろう?男だろうが、このディミトリ様に笑いかけられて嬉しかろう?
そう思っていたのに、奴は、俺に殴り掛かった。
キャー!!という悲鳴がする。ハニー達、俺は大丈夫さ。例え、顔を殴られたとしても、スーパーミラクルボーイの俺の顔面偏差値は一向に下がらないだろ?それどころか、殴られる事によって男前度がますだろ?そうだろう?俺は、とりあえず、殴られたにしても、彼女達に笑いかけた。まったく、俺はどこまでいっても、気遣いのできるナイスガイだぜ。
笑顔を向けられた女の子達は、失神したり、鼻血を出したりしたよ。
恥ずかしいだろう彼女達の為に、君たちは、鼻血を出そうがかわいいねって言ったんだ。そしたら、奴は、さらに力を加えて殴ってきた。
まったく、俺の顔がいいからって、そんなに殴る事ないだろう、チェリーボーイ?
そうやって、殴られたり、避けたりしている間に、いつの間にか、王家の馬車が止まっていた。
そして、その中から「やめるのです!!」と、いう女性の声が…!
フッ、この顔は国宝級ですからね。女王陛下が気にするのも当たり前というもの…。
俺を殴っていた無傷の男(俺は暴力反対派だ)ガタガタと震えながら、女王が降りられるのを待ち、ボロボロになった事によってより色っぽいナイスガイになった俺は、笑みを携えながら待った。
がちゃりと外される馬車の鍵、出てくるのは、それはそれは美しくも愛らしいスーパーミラクルキューティーガールなプリンセス…。
そう、思っていた時もありました。
お姫様と言えば、愛らしく、可愛く、美しく、気高く、男達全員が憧れる女性であるはずだ、と思うだろ?実際、この国の妃は、それはもうすんばらしい女性だ。
俺のウィンクにも惑わされない最高にいい女だったぜ!
そんな彼女の娘だと言う事は、とんでもない美人なプリンセスと思うじゃないか。
しかし、馬車から出て来たのは、プリンセスとは思えない、ガッチリした肩、強そうな顎、凛々しい眉と気高い瞳を持った、男だったら、さぞかし男前と言われただろう、ゴリラのようなプリンセスであった。
俺と男は、ポカンと彼女を見、周りの女の子達もざわついた。
いや、まさか、プリンセスが、ゴリラのような女性だとはね、思わないよね。俺もビックリ!
「あなた達は、なぜ、喧嘩をしていたのですか?」
声だけは、すごくいい…!おしい!外見がとても惜しい!!
さて、聞かれたからには、紳士的かつかっこよく答えなければなるまいと、俺は優雅且つクールな一礼をして、こういった。
「よくある事です」と…。
そう、こんな事しょっちゅうである。
俺の婚約者を!だとか、俺の妻を!だとか、母を!だとか、祖母を!だとか、娘を!だとか、そういうので、しょっちゅう殴られてきたからな!無駄に怨みをかいまくっているからな!俺にとっては、これくらいなんでもないのさ…。
それに、我が家の連中は、皆、どこからともなく怨みを買う事が、めちゃくちゃ得意だ。素晴らしく得意だ。恐ろしいくらい得意だ。
背中にナイフ?当たり前。
包丁もって追いかけられる?朝飯前で逃げちまう。
洋服ダンスから旦那が?それくらいどうってことない。
まあ、そんなもの達は、犬に食わしておけばいいのだ。なんせ、いつもの事だからな。
さて、そんな事は、ご存知ないプリンセスゴリラは、怪訝そうな顔をして「それは、いけませんね」と言った。
「本当ならば、このまま、ディミトリ侯爵のグラハム様に会う予定だったのですが、これを諌めない事には、行く事はできません…」
「女王様、俺がディミトリの息子のグラハムです。どうぞ、諌めるなんて無粋な事はして下さいますな。これは、男同士の男な戦い。キューティーガールなプリンセスが、とやかく言ってはいけませんよ。そんな優しい事を言われては、男が参っちまいますからね」
「ま、まあ…」
「それより、家で紅茶でもどうです?さあ、ご案内しますよ。このクールなナイスガイでありながら、誰もが、キャーペットに欲しいぃ!という位に可愛いキューティーミラクルボーイこと、グラハム・ディケンズが!」
そうして俺は、プリンセスの逞しい肩を、ギチギチと腕を伸ばしてなんとか抱いて、家の中に入った。
プリンセスはまだ、あの男の方も心配していたが、結局、大人しく用意していた部屋に入ってくれた。もしも、ここで「いえ、それはできませんわ!」なんて言って、振りほどかれたら、俺は壁に身体を強打して失神していただろう。
なにせ、俺はひ弱だからな。
女の子の庇護欲と母性本能まで誘ってしまうなんて、俺はなんて、罪な男なんだ…。
さすが俺だぜ。
そう自分に酔いしれていたら、親父に殴られ、俺はまた気絶した。
その間に着替えさせられ、怪我は治療され、あのプリンセスゴリラの前に連れて行かれた。
俺はその前に親父に部屋で「あんなゴリラと婚約?!このミラクルボーイな俺を、プリンセスであってもゴリラと婚約させるぅ?!冗談はよせよ、ダディ!!」と訴えたら、拳骨を落とされた。
さて、我が家自慢の中庭で、小さなカップティー(絶対筋肉で小さく見えているだけだ)を楽しんでいるプリンセスに、再度礼儀正しく礼をする。
顔を赤くしたプリンセスゴリラ。さすがは、俺だな、この顔面偏差値は、人類を越えて愛されるんだな。ああ!俺は自分が恐ろしいぜ!!
今回は、親好を深めにやってきたというプリンセス。そんな事、俺にかかればお茶の子さいさい。愛される男は得てして、少しの間で愛されるのさ!そう、それはプリンセスゴリラでも例外なくな!
俺は、自らのテクニックを最大限に使い、プリンセスとの親好をふかめ、多分、進行度は10中9くらいは上がっただろう。だいたい、いっつもそう。
それに、気を良くした親父達は、あとは、若い者2人で、と席を外した。
待ってくれ、ダディ、俺をゴリラと一緒に置いておくなんて危険すぎやしないかい?俺のこの素晴らしい神の奇跡的な顔面をへこませる気かな?まったく、俺は親父にも嫉妬されてしまうくらいに、ヤバいくらいにナイスなミラクルゴッドガイだぜ…。
とりあえず、中庭を案内する事にきめたスマートな俺は、スマートなエスコートでクレバーにプリンセスゴリラを楽しませた。
彼女はキラキラとした笑顔を見せながら「まあ、なんて可愛らしいんでしょう!」とミモザを愛でた。
俺は、花にはちょいと詳しいんだぜ?なぜなら、女性にしょっちゅう花束を送っているからな!俺は、プリンセスに懇切丁寧に花の説明をした。
え?なに、学術的な言葉が多いって?何言ってるんだい、諸君。こうやって、俺の知性を見せているのさ、俺は顔だけの男じゃないってね。アンダースターン???
さて、中庭を進んでいくと、背後から、なにかの気配が。
フッ…、やはり、俺は罪作りな男。きっと、ナイフを片手に嫉妬にかられたチェリーボーイがやって来たのだろう。だがしかし!俺にそんなものきかなーい!なぜなら、鉄製の防犯グッズを付けてるからー!俺は、ナイフでたおれなーい!唯一倒れるのは、親父の拳だぜ!
そして、この嫉妬のバーニングボーイのナイフを受ける事によって「まあ!なんて危険なナイスガイなの!私恐いわ!婚約を破棄します!」なんて事になる予定なのだ。
サンキュー、嫉妬のバーニングボーイ!これで、俺は元のアイドル生活に戻るぜ!!
そう、余裕のある俺は、余裕をもって、甘んじて彼のナイフを受けるはずだったのだが、なぜか、プリンセスゴリラに抱かれ俺は、男のくせに彼女に守られていた。
まったく、これだから、俺ってやつは、お姫様にまで、母性本能と庇護欲をそそらせちまったんだな、フッ…。だなんて思っていたのも、つかの間、周りから、黒い服に身を包んだ暗殺者達が一斉に木々から、降りて来た。
あちゃー、きっと、あそこの侯爵にバレたな!
でも、ここまでやるか、普通?まあ、あの人とんでもなく綺麗だったし、侯爵は嫉妬深いって有名だったから、さもありなん…。
「あなた達は一体誰です!」
「名乗る名前などとうに捨てた。その男に用があるのだ。怪我をしたくなければ、逃げるといい」
「そんな事、できませんわ!」
「ぷ、プリンセス…!俺の事はいいんだ!君は逃げ給え!これくらいどってことないさ」
本当は、強がりだが、さすがに情けない姿を見せて、女性達に広まったら最悪だからな!プリンセスが逃げたら、俺のこの鍛えられし脚力を持ってして逃げれば無問題だ。さすが、俺、完璧な作戦だぜ。
そうして、俺はもう一度、彼女に逃げろ!と、言おうと思い、彼女を見てみると、プリンセスゴリラは、その名に恥じぬような鬼神ぶりをみせた。
周りにいる暗殺者達をちぎっては投げ、ちぎってはなげ、無双のごとき暴れぶりをみせた。
おかげで、俺は木の後ろに隠れる事となった。
これは、彼女の邪魔をしない為だ、勘違いするなよ!!!
そんなこんなで、全部が片付け終わったプリンセスゴリラは、まさしくゴリラだった。
俺が木の後ろから出ようと、すると、ずっと隠れていたのであろう暗殺者の一人が、目の前に現れた。フッ、運命とは、ままならないもの。俺のこの美しさ、きっと、神々にもたたえ合いされる事だろう。グッバイハニー達。俺は、永遠の若さと共に眠りに着くよ。
とりあえず、暗殺者よ。俺の顔面に向かって刃物をたてるなよ。そんなことしてみろ、末代まで祟ってやるからな…!!
そう、睨みつけていたのも、一瞬。
どこからともなく、瞬間移動でもしてきたのか、プリンセスゴリラが奴の背後に立った。
「貴様…!さっきまで、あそこに!」
「フッ…、残像だ!我が婚約者殿に手を挙げる等という、愚かなマネをした自分達を悔いる事だな…。天誅!!!!!!!」
「ガハッ……!!!なんという…、強さ、だ…」
そう言って、倒れた暗殺者を、無双のごとき武神か勇者か大将軍のように、見つめた彼女は、腰の抜けた俺に微笑んで手を差し伸べた。
おま、ゴリラのわりに女神かよ…、神かよ…!!!
「大丈夫ですか?」
「ンッ!好きっ!」
「は?」
「ハッ!俺はなにを…?!」
「フッ、私が、好きと…」
「え。ぷ、プリンセス…?急に雰囲気かわっちゃったよ?どうしたのかな?ん?このクールなナイスガイでありながら、誰もが、キャーペットに欲しいぃ!という位に可愛いキューティーミラクルボーイこと、グラハム・ディケンズにお話ください」
プリンセスゴリラは、急に笑い出して「もう、令嬢のような喋り方はやめる」と言ったかと思うと「私は、あなたに、素のままの私を好きになってもらいたいのだ」と言った。
俺は、ハニー達が、俺にする反応のように「ひゃい」と言った。なさけないぜ、グラハム・ディケンズ!!!!
「私は、あなたが気に入った。愛らしく、可愛らしいあなたがな」
「ひえ、イケメンかよ…」
「今はまだ、私の事を心から好きになってもらっていないだろう。だから、ここで宣言しよう。いつか、なたを落とすと!」
「ひえっ、格好良過ぎかよ!」
「それでは、戻ろうか」
「あ、はい」
こうして、俺は、ハイパーイケメンプリンセスゴリラに嫁入りならぬ、婿入りをしようと、そっと心に決めた。
真のイケメンには勝てなかったよ…。