ブル
若手の闘士が、王都への誘いを受けた、その話しを聞いた時は衝撃を受けた。
王都に行くために日々、鍛錬してきた、次に行くのは自分だと思っていた。
レンと言う闘士の試合は一度だけ見た事がある、なかなかに強いとおもえたが負けるとは思わなかった。
ただ綺麗な拳闘をする、それが王都のような華やかな場所に相応しいと思われたのかもしれない。
自分の拳闘を思い返す、ガードを固めて頭を振り近づいて殴る、それだけだ。
だが、これしか俺にはなかった、背も低い、特別なセンスもない俺には。
それでも勝つために地道に鍛えてきたのだ。
納得はいかなかったが、どうしようもないと諦めていたが、チャンスが巡ってきた、レンとの王都行きをかけての試合だ。
勝つ!
そして王都に
大きな石を持ち上げて、体を横にひねる、右にひねったら、次は左に、徐々に速度を上げて行く、ミチミチと腹筋が悲鳴をあげる。
最後に思い切り力を込めると、石を放り投げる、ドスンと石が地面に衝撃を与える。
石を拾いに行くと、今度は逆に投げる。
それが終われば、走り込み、ダッシュと休憩を繰り返し徹底的に足腰を鍛える。
それが終われば、壁の近くで逆立ちをして、首だけでバランスを取る、ミシリと首が軋むのを筋肉で抑える。
最後に、他の闘士に頼んで、ガードの上からパンチを叩きこんでもらう。
腕や腹にパンチが当たり、軋む。
パンチが当たる際に、力を込め、体をずらしダメーシを逃す。
頭をふる、パンチが空を切る。
一歩ずつ前にでる。
前にでれはその分当たるが、それに耐える。
相手の右ストレートに合わせて、素早く踏み込む、相手の右脇腹にパンチを軽く触れさす。
試合なこれで形勢を自分のものにできる。
ずっとこの拳闘でここまできた、始めの頃は相手のパンチに耐えきれず、簡単に負けてしまっていた。
けれど、繰り返し体を鍛えて、積み重ねてきた。
そうして、いつしか猛牛とあだ名されいたのだ。
これしか出来ない、だからこそ、これだけを鍛え抜いてきた。
レン、奴は天才という奴だろう、いずれ遅からず王都に行く闘士だろう。
けれど、まだ負けない、才能溢れたやつを何度も退けてきた、以前戦った、ガリシアもそうだ。
体が熱い、頭が冴え渡る、いつもよりパンチが見えるような気さえする。
パンチを放つ相手に、隙を見てはパンチを触れさす。
練習を終える。
『やっぱりお前がチャンピオンだよ、俺達は奴隷だし、拳闘は見世物だけどよ、強い奴が上にいく、そこは譲れねえよ、勝って王都にいけよブル』
『ああ、そのつもりだ』
力強く俺は答える。
レンを侮っている訳ではない、ガリシア戦のあの動き、ただ綺麗なだけではなかった、あんな拳闘は俺には絶対にできないだろう。
けれど、勝つのは俺だ、そこだけは譲れない。




