帰るところをなくした少年……
優希とクルミは少年に村の方に案内されていました。
クルミが風の力で魔物が近づいてこないようにしていたため、難なく少年の村にたどり着きました。
「ひっ!うぇっ。」
優希は村の入り口からなかを見ただけで吐きそうになりました。
村の様子はとても悲惨なものでした。家はかまいたちによりボロボロになっていたり、燃えている家もありました。そして、道端には馬や牛などの家畜のなれの果てや、村人の腕や足時には生首などがありました。
優希は吐き気をこらえるのに精一杯でしたが、クルミは冷たい声で敵の正体をつぶやきました。
「こんなことができるのはフォレストウルフしかいないわね。」
ですが、明らかにフォレストウルフが出来る規模のものではありませんした。
クルミが首をかしげながら考えていると少年は言いました。
「俺、見たんだフォレストウルフしかだけじゃなくて、もっと大きい黒いウルフを……」
「なんですって!」
それを聞いたとたんにクルミの顔は真っ青になり、声を荒げました。
クルミは少年と優希を連れて慌てて村から離れました。
村から少し離れたところの木に隠れてクルミは優希と少年に告げました。
「君がみた、黒いウルフは恐らく魔族の黒魔術によって無理矢理強化されているのよ。その黒いウルフは何体くらいいたかわかる?」
「俺がみたのは3体だった。」
「3体もいたのね……厳しい戦いになるかも、ユキちゃん手伝ってくれる?」
「……はい。いけます。」
優希はどうにかそれだけ返事をしたのだった。
「先に黒いウルフについて教えておくわね。」
<闇森の狼>
魔族がフォレストウルフに黒魔術をかけて出来た突然変異種。
身体能力・嗅覚、聴覚はフォレストウルフの3倍程度。
風の力を使ってかまいたちやブレスを放ってくる。
フォレストウルフを使役する場合がある。
「それとあなたの名前おしえてもらってもいい?」
クルミは少年の方をみてそう言いました。
「俺の名前はジル……さっき見た村の村長の息子だ……」
少年は泣きそうになりながらも、必死に耐えてそう告げたのでした。
「そう……ジルね。ジルはここに残って傷の治療をしなさい。
ユキちゃん、塗り薬ジルに渡してあげて。」
「あ、うん、ジルこれすごくよく効くんだよ。」
「……ありがとう。」
ジルは自分も戦いに参加したいと思っていましたが、今のままでは足手まといにしかならないとわかっていたので、おとなしく薬を受けとりました。
「じゃあ、行こっか、ユキちゃん。」
「……は、はい。」
「そんな緊張しなくてもちゃんとフォローしてあげるわよ。」
そう言って、クルミは優希に微笑んで、村に向かっていきました。
ジルは残されてからしばらくすると、静かに泣きました。
村のみんなを守ることができなかったことがジルを責めました。そして、ジルは思いました。あの2人だけに任せて自分はこんなところに隠れていていいのだろうかと。
そして、自分も戦わなければと思いましたが、自分には力がないことをジルはよく分かっていました。
ジルはもっと自分に力があればと考えてクルミの言葉を思い出していました。
次回は優希とクルミの戦闘です。
ジルの運命は………。
次話は明日の朝(余裕があれば今日の夜)に投稿させていただきます。
楽しみにお待ちください。