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影と呼ばれた男  作者:
第2章  目覚め
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目覚め 2

速見と名乗ったその男は,速見より背も少し小さいようだ。これは・・・擬態しているのか・・・局長以外の擬態を初めて見た浩介は,まじまじと速見と名乗る男を見た。

速見にはやはり見えない。


「速・・見・・さん?・・・な・・なんで・・ここに?」

「しっ・・・もっと小さい声で。・・・何でここになんてのは俺の台詞だろう?」

 中に入れともう一度部屋に戻らされた浩介に,

「まあ座れ。」

茶を出してくれながら,小さい声で話は続く・・

ここには潜入捜査の一環としてきているのだそうだ。食堂の女も仲間で,浩介のことを知っていたらしい。ちょっと見てきてくれと言われてな・・・

「今頃局長がこちらに向かっているだろうさ。

家出はおしまいだな。」

・・・・・

「でもこの部屋は・・・そのう・・・殺人とか・・・えっと・・・」

「ははん。おまえ部屋の気配を読み取れるんだな。

 まあ。いろいろやるさ。

だが・・・未成年者には毒な気配ばかりだろうからな。」

・・・

「そう引くな。我々も・・・やりたくてやってるわけでもないんだからな・・・」


・・・・・

 浩介は酷く居心地が悪かった。

部屋の壁の訴えをどうしたら無視出来るんだろう。テーブルからも何かの気配がする・・・毒?


「この部屋は,殺人が3件位ありましたね?」

沈黙に耐えられず,浩介が聞く。

「ほう。3件か。他には何が分かるんだ?」


・・・


「あのう・・・」

浩介が赤くなってもじもじしているのを見た速見は,困ったように頭をポリポリ搔いた。

「まさか・・・見えるのか・・・」

浩介は頷いた。・・・速見と給仕の女の白い体が絡みあっているのが見える。

「見たくないのに・・・」

つぶやきが聞こえたのだろう。速見はさらに困った顔をした。

「凄い能力だな。局長が大事にするわけだぜ。」


・・・


「局長は俺を・・・使いやすい人間・・・与し易い人間として育ててくれているんでしょうか?」

・・・速見は居住まいを正し,浩介を見た。


・・・


「いや。違う。おまえは水戸さんの息子だろう?」

父の名が出てきたことに浩介は驚いた。

「局長の片腕だった水戸さんの息子だ。大事にするさ。」

片腕?父が?局長の?





詳しい話は局長から聞け。そう言って話を打ち切った速見は,

「俺はこれからまた仕事だから出るが,おまえはここから出るんじゃないぞ。」

と言い残して出て行った。


・・・


だが・・・壁からのメッセージは浩介を苛んだ・・・白いからだ・・・飛び散る血・・・悲鳴・・叫び声・・・うめき声・・・嬌声・・・・駄目だ・・我慢出来ない・・


 浩介は部屋を飛び出した。当てもなく歩く・・・いつの間にか雨が降っていた。雨は容赦なく浩介に降り注ぐ。どこへ行けばいいのか。周りから聞こえてくる声はだんだん大きくなる・・俺はこのまま狂ってしまうのだろうか。


「浩介」

どれだけ歩いたことだろう・・・浩介は自分を呼ぶ声を聞いた。

目を上げても誰もいない。いつの間にかまち外れの人家もほとんどない畑の中にいた自分に驚きながら浩介は辺りを見回した。

「浩介。」

だれだ?

「俺はオマエの守護言霊ダ・・・コレガ最初のオマエトの会話にナル・・・ヨクキケ浩介・・・」

言霊の語る話は浩介には思い当たること,思いもしなかったこと・・・様々だった。雨の中に立ち立ち尽くしている浩介の姿は端から見れば異様だったに違いない。見咎める者もなく立ち尽くす浩介・・・・


やがて・・・浩介は顔を上げた。

「分かった。」

・・・・


ややあって,人影が近づいてきた。

「浩介。」

振り向くと,局長だった。

「家出はおしまいだ。帰るぞ。」

浩介は黙って局長の後に続いた。雨はまだやまない・・・

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