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影と呼ばれた男  作者:
第4章  飛翔
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曙光


「 じゃあ。」

俺は茨城に挨拶をした。本来の浩介の姿にもどっての挨拶だ。

「最初からこの姿なら,俺はおまえが誰だかすぐに分かっただろうな。本当に光太郎そっくりだ。」

懐かしそうに目を細めて茨城が言う。俺は再び深く礼をした。


それから振り向きながら光太郎の姿になる。この家から出て行くのは光太郎であり,浩介ではないからだ。

 家の前に止まっている車に近づくと,声が飛んできた。

「光太郎!!」

振り向くと,多一郎だった。

「ありがとう。光太郎。」

「なにが?」

「全てにさ。」

・・・

「おまえって影だな。」

「え?」

「いつも側にいて・・・でも,決して自分を悟らせない・・・そしてなくてはならないものだ。俺はそう思う。」

7歳の子が言う台詞じゃないぜ。

俺は黙って指文字で

「いつまでも友達さ。」

と書いて,手を振って車に乗り込む。


車は滑るように走り出す。俺は黙って背もたれに深く背を預けた。

1年間で父の敵を取った。北国で。そしてここで。・・・闇の神官の企みをつぶした。

・・・俺はこれから先もきっとこの仕事を続ける。続けたい。

多一郎。おまえは俺より15も下だったけど,時々おまえの方が俺より年上みたいに感じたこともあったぜ。俺はおまえが気に入ってたよ。いつかまた会えるといいな。


 俺は影・・・そうだな。影に徹しよう。


 このときの多一郎の話は,いつの間にか局長達に知られるところとなった。茨城が聞いていて,伝えたのだろう。


この後,俺は,いろいろな国に派遣されることになったが,常に「影」と呼ばれることとなる・・・


 ロザリア,華国,印国,・・・・・・いくつの国を回ったことだろう。何人の人間をだまし,傷つけ,殺したことだろう。助けた命もあった。助けられる命を見捨てたこともあった。そんな生活に少し嫌気が差してきた頃,俺は小さな女の子のボディガードを頼まれることになった。

 

「また小さい子になるんですか?」

局長に聞くと,

「その子は高学園に飛び級して通っているんだ。だから,15~6の少年でいいぞ。」

と言う。15~6?それにしても今の俺の半分の年だ。

「ちょっと若いですね。」

「ははははは。若返っていいじゃないか。」

その前の仕事は50代のでっぷりした好色じじいの設定だったので,かなりいらいらしたものだった。確かにそれに比べたらずっといい。


 俺は,その女の子,若槻倫子のことを調べ始めた。

 その子は謎に包まれていた。城山倫太郎の許嫁らしい。まてよ。倫太郎と言ったら,あの倫太郎か?

「あの倫太郎だな。」

「人を和ませ,引き寄せる力を発揮するあの倫太郎?」

俺は一度別の人間として倫太郎と接したことがある。探ってみれば,本人はなかなか一筋縄ではいかない感じの少年だった。

「そうだな。場の空気を変えてしまうあの能力はなかなか捨てがたい物があるよ。

 彼の持つ天の属性は本物だ。おまけに星読みの力も素晴らしい。」

 局長に言われ,最初はえちご市の高学園に入る。それからまた転入という手順だ。




・・・・金色の 菜の花畑の 向こうから・・・・をお読みください。




 俺はこの学園で一人の女の子に出会った。俺をこの学園に招いた男の娘だ。

 倫子ちゃんと仲の良いその子が誘拐されたときは,少し頭に血が上ってしまったが。

 

仕事が終わり,俺は学園を後にした。倫太郎は眠ったままだが,倫子ちゃんがそばにいるから大丈夫だ。

・・結局・・俺はその子には何も言わずに学園を去った。






・・・・・






 次の仕事はロザリアでの後始末だ。


 仕事は長引いた。ロザリアの人間は闇の神官達に『天の神殿が占領されていた』という事実をなかなか認めたがらなかったからだ。破壊された天の神殿をテロで破壊されたと言い張っていた。

 しかし,あの日の,光と闇の対決の様子を動画に撮っていた俺の仲間の映像を見てようやく調査の腰を上げた。その間のいらいらときたら・・・・


 井部元首の息子も意外なことにロザリア入りをしていた。奴は大学園には進まないで,政府の仕事を手伝うことにしたようだった。こいつも局長の下で働くようになるらしい。同僚だな。


その後は外つ国を転々としたあげく,また東国に配された。

 そこで俺は大きくなった多一郎とまた出会った。多一郎は,日の本を1つの国にしたいと奔走している井部と,接触したいらしかった。

 奴の親は未だに1つの国にすることに反対しているようだが,多一郎は先を見越しているようだ。

 俺は20歳位の・・・光太郎が大きくなったらこんなかなと思われる姿で多一郎の前にでた。

 多一郎はすぐに俺だと分かったようだ。

「光太郎!!!」

・・・・

「おい。泣いてんのか?」

俺が言うと,

「泣くわけねえだろう。ちょっと水が垂れてきただけだ。」

とむきになっていた。


多一郎は,引き合わせた井部の息子と一緒に,いろいろな案を練っていたからこの国も大丈夫だ。


 ・・・・俺は遠くイミグランドへ向かうことになった。

 ここに闇の神官を育てる機関があるらしいとの情報からだ。







・・・・・イミグランドの地で・・・


 天の神殿。ここはいつ来ても穏やかだ。

 しかし,この神殿の中に闇の神官を育てるところが本当にあるのか。

 黙って壁に沿って歩く。気配を探りながら・・・。なんだか懐かしい気配。俺はそっとその壁に触った。だれだ?女?祈り?


 その先は漠然としていて読み取れない。こんなこともあるのか。

 さらに進む。


 ドアの向こう祈りの間に女が一人跪いていた。どこかで見た横顔。まさか。

「ひろかわ・・・・」

つぶやきが聞こえたのか女が顔を上げた。

立ち上がってゆっくりこちらに近づいてくる。

「私をお呼びになりまして?」

イミグランド語だ。

「い・・いや.人違いだ。」

「広川と聞こえましたわ。」

「・・・・・」

「あなた・・・どなた?」


 今の俺は紫色の髪,だらりとしたこの国特有の青いシャツに,膨らんだ長いパンツ姿だ。

「ただの商人ですよ。」

「ふうん?」

広川は俺をじろじろ見たあげく

「どこにお店を出しているんですの?何を売っているんですの?」

と聞いてきた。

俺は慌てて逃げ出した。



 しばらくして,ようやく落ち着いたが・・・あいつ,あんなこといつも言っていたら,いつか変な奴に殺られてしまうかも・・・心配になってきた。


 闇の神官を探りながら広川の護衛もする。俺の日常は一気に忙しくなってきた。



次回,最終回です。

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