#初夏のラジオリズム 1
4㍉ラジオ
#初夏のラジオリズム 1
「ららららー♪」
こんにちは!わたしは和泉 織夏。
通称オリカノ!
今は、太陽がちょうど真上にくる時間。
今日は学校はお休みで、他県にある実家の行事に出席してました。
普段はわたしは学校の寮やみんなの家に泊めてもらったりしてるんだけど、2週に1度くらいは他県にある実家に帰る。
家柄上、色々堅苦しい行事とかがあったりするけれど、わたしはこの家が好きだった。
そして今日はもっと特別な日。それは
みんなが初めてわたしの家に遊びにくるのですっ!!
鼻歌交じりで着物を片付けられるのもその理由かも。
「織夏。お父さんが呼んでるわよ」
「ひゃあっっ!!?お母さんっ!!」
「あら、どうしたのよ。今日はやけに片付けが早いわね。」
「もう、びっくりさせないでよぅ・・・。」
「フフフ。いつもの今頃だと疲れで突っ伏してるのに。よっぽど楽しみなのね。」
お母さんはわたしに微笑む。
お母さんもみんなに会うのは久しぶりだから楽しみにしているんだろう。笑みが自然とこぼれる。
「海里くんと守也くんは大っきくなったんでしょ?」
「うん。そりゃもう!っていいたいけど、あんまり変わってないと思うよ?」
「フフフ。期待してるわ。」
「よしっ!片付け完了! じゃあ、お父さんのところへいってきます!」
「ええ。いってらっしゃい。」
☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡☆彡
「午前11時。
ボク、海原 海里と須藤 守也。「おねーちゃん」こと椎名 流衣は山奥にある豪邸、織夏の家へむかっていた。」
「海里また地の文でてるぞ」
「ええ!?」
「ええ!?じゃないわよっ!なんで気づかないのよ。。」
「なんでだろ、、」
ここで自己紹介を、、
僕たちラジオ部の4人は幼馴染です。
幼稚園児のころからの付き合いだったらしく、家族のような感覚だった。
でも中学生になると織夏だけ家の事情で引っ越してしまい、手紙や電話だけしか交流がなかった。
別れ際の織夏の泣き顏は今でも鮮明に覚えている。
で、僕たちが向かう織夏の家がそこ。
だから織夏の引っ越し先の家に行くのは初めてなのだ。
「それにしても綺麗なところねー」
「緑が綺麗だなー」
「そうだね。僕らの地元は都会だし・・・」
「まぁ、織夏があんなに実家をオススメしてくるだけあるな。」
四方八方が緑に囲まれた閑散とした駅で僕たち3人は次の電車を待っていた。
そして待ち時間は約1時間。
駅には僕たち以外には駅員すら居なく、世界に3人だけが取り残された気分になる。唯一意識を現実にとどめさせてくれているのは山が鳴いてるのかと思うくらいのセミの大合唱だった。
電車を待ち始めて30分くらい経った頃だった。ホームの端から端までをなんども往復して暇を潰していた流衣は手に何かをつまんで帰ってきた。
「見てっ!この青くてキラキラしたトカゲ!!」
「げっ!!?」
「カナヘビだね。」
守也が流衣の持つ爬虫類をみたとたん蒼白した。
それをみた流衣の口角がニヤリと持ち上がる。
「ちょっ!やめろよ流衣っ!!」
「フフフ・・・。」
二人の間に流れる一瞬の沈黙。
山が鳴きやんだ。
刹那。
二つの影は対岸のホームへ矢の如く飛び出した。
ちなみにこの二人の運動能力は逸脱しており新幹線並みの速度で追いかけっこしている。
「待てっ!!」
「待つわけねぇだろがぁ!!!」
守也と流衣。さすがは体力自慢の二人だ。
10分ほど全力で走り回ってやっと二人の動きは止まった。
「ハァ・・・。やめ・・ろ、蛇だかトカゲだか知らねぇけど、とりあえず落ち着け流衣っ!!!」
あれだけの激しい動きをしていたにも関わらずカナヘビは未だに流衣の指に首根っこをつままれながら手足をバタバタさせている。
「はぁ。あんな鬼ごっこでバテるとは・・守也も落ちたな。」
ようやく流衣は守也をからかうのに疲れたのか、飽きたのか古く風化した木製のベンチに腰掛けた。
「いや、二人とも常軌を逸してるよ・・・。」
カナヘビは命を諦めたのか、安心したのか手足をバタバタさせるのを辞めて流衣の手のひらで大人しくしていた。
守也は流衣の座るベンチの隣の少し離れたベンチに腰掛ける。
「あ、そうだ」
カナヘビの真っ黒な瞳をじっと覗き込んでいた流衣が何かに閃きカバンを片手で漁り始めた。
そして赤い細身のリボンとコンパクト裁縫セットをカバンから引っ張り出す。
それと同時に整理されていないカバンの中から目的のもの以外のものが大量に溢れ出す。
「あー、、守也。」
「お前またぐちゃぐちゃに詰め込みやがったんだなっ!!」
「だって流弥が部活で居なかったから・・・」
椎名流弥。僕たちと一つ年の離れた流衣の弟である。
学校ではシッカリ者として見られがち(おそらく見た目が清楚だから)の姉、流衣の正体は全く逆で弟がいないとダメダメ人間なのだ。
そんな姉を生まれてからずっとお世話しているのが流弥。
流弥は静かで優しい男の子で、どこかミステリアスな雰囲気もある不思議な男の子だ。
「流弥、部活入ったんだ。」
「うん。流石に流弥にも青春して欲しいしねー」
「お前のせいだろ。」
「わ、わたしだって自分のことくらい。。。」
流衣は口をごもごもさせた。
その頬は赤く染まり、うつむく瞳には涙の幕が張っていた。
「しゃーねーなー・・」
やれやれという感じで守也が立ち上がる。
そして流衣の方へ歩いていくが、立ち止まった。
流衣のカナヘビだ。
「・・・・おい。なんちゃらトカゲを森へ帰せ」
「・・・・・・ヤ。」
「なんでだよっっっ!!!」
「早く拾えよ」
「じゃあそこ離れろ」
「ヤ」
「ぐぬぬぬ、、」
守也が悔しそうに頭を抱える。
それを見た流衣は先ほどの泣き顔と真逆の恍惚の表情を浮かべていた。
「さて、アナタはこの状況に耐えられるかしら?」
「ぐぉおおぉ・・・!!」
「さぁ、駅のホームに散らかる私の私物たち。アナタに整理してもらうのを待ってるかのように静かにその時をまってるわ・・・」
「うおぉぉぉお・・・っ!!!」
流衣のこの口調は、“おねーちゃん”と呼ばれる流衣の人格no.2(自称)だ。
ラジオ部の放送中はこの人格になってる、らしい。
「じゃあ、アナタが苦しみ悶えてる間にわたしは本来の目的を果たすわ」
そういって流衣は赤い細身のリボンを5cmほど切り取りトカゲの首に巻きつけ始める。
「こ、、絞殺・・・!?」
「んな訳ないでしょっ!!!」
流衣は手慣れた手つきで針や糸を匠に操り、細かい作業をこなしていく。
そしてあっという間にカナヘビの首には赤い蝶ネクタイが出来上がった。
「うおっ・・カワイイ・・・!」
「さすがだねおねーちゃん。」
写メ。
「まぁな。最近は2日で一着コスプレ衣装作れるし。」
「すごいな。」
っていうかさっきの少し可愛いかった泣き顔の流衣はどこへ・・?
「あれ、守也。」
「なんだ?」
気がつくと駅に散乱していた流衣の大量の私物は綺麗にカバンに収められていた。
「流衣が裁縫に集中してる間に!」
と守也は親指を立ててしたり顔を作った。
その顔は清々しい青空のように爽やかだった。
「いやーーっ!!整っているって素晴らしいっ!!!」
「守也は驚くくらい綺麗好きで正直ひく時があるくらいだった。
中学1年の頃に僕ら4人で公園で遊んでいたときに守也は「トイレがきたねぇ!許せんっ!」と憤怒して持参していた折りたたみブラシや洗剤やらで一日中公衆トイレを掃除していたことも記憶に新しい。
とりあえず、気持ちの悪いくらい綺麗好きなのだった。
当然だらしない流衣の部屋も週に1度片付けに行く。
流衣の部屋は、一日に一回流弥が掃除しないと次の日にはゴミ屋敷になるのだ。
そして守也が掃除しに行く日は流弥が部活で不在の日。
守也曰く、流弥は流衣のお世話が本当に大好きらしく、流衣の汚い部屋をみた時の顔はすごく和みのある顔をして部活があって守也が片付けたあとの部屋をみると寂しい顔をするらしい。
流弥はお婿さんにいけるのだろうか・・・。」
「だらしなくて悪かったわね。」
「気持ち悪いくらい綺麗好きで悪かったな。」
「しまった。また地の文が出てしまっていたらしいっっ!!!?」
「全く。いくら声優目指してるからってやりすぎだぜ?」
「自分でもそう思うよ、、、」
「大体、何が原因?」
「流衣から中1の時に『涼○ハ○ヒの憂鬱』のアニメを見せたときからじゃね?」
「あー。確かに、、その頃から声優目指すーって言い始めて、キョ○に憧れてブツブツブツブツと、、、、」
「あああー!!言わないでーーっ!!」
僕は自分でもわかるくらい耳が熱くなっていくのを感じた。
「ほ、ほら!電車来たよっ!!」
「あらホント。」
「おっ!すげーいい雰囲気の電車じゃんっ!!」
「なにあれ超可愛いっっ!!!」
写メ写メ。
変わった電車が山裾から姿を現し、それを見た二人は予想外に興奮していた。
「助かったぁ・・・。」
#初夏のラジオリズム1 終
*あとがき*
お読みいただき、ありがとうございました。
えー、と。本当にびっくりです。いきなりラジオをしないという奇行です。
前回のプロローグで実はラジオ部には休部処分が下されているという設定。また、自分的には日常のラジオ部風景よりも休日の変わったイベントでのほうが人物の紹介がしやすいと思って、あえてラジオをしないでみました。
*キャラクター紹介
no.1 海原 海里
それでは、この辺であとがきを終わりにさせて頂きます。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。