プロローグ
「ねえ、明智君。君は名探偵になるのに必要な条件って何だと思う?」
意味ありげな微笑を浮かべ問いかけてくる岡崎探偵事務所の所長にして自らの雇い主である岡崎 陣の問いかけに明智 邦太郎は、またかと面倒に思いながら答えた。
「探偵であることですかね」
その答えを聞いた途端、岡崎はアハハと大きな笑い声を上げた。
「先生!! 何がそんなに面白いんですか!」
「ククッ、いや、悪いね。あまりに素直な答えだったものだから。つい、ね」
「なんですか。そんなにおかしな事いいました?」
「可笑しくはないかな。名探偵と言うからには探偵であるべきと言う主張もまたありだ」
「だけど、先生の考えるものとは違ったってことですよね」
「うん、そうだ。いくつかあるんだけどね―――まずは事件に遭遇することじゃないかなと思うんだ」
明智は、現実逃避のように昔の会話を思い出していた。
事件に遭遇することだけで言えば、岡崎は確実に名探偵だ。
「事件だねぇ、明智君」
「殺人事件ですね、先生」
二人は背中を刺された死体を見下ろした。
名探偵の条件そのいち、事件に遭遇すること(殺人事件で、トリックを使っていて、警察が介入出来ないと尚いい)
※この作品で書かれる名探偵の条件は作者の個人的な考えです。