剣士と馬鹿と雇われた九人
ここではない世界にある大陸の創世記と暦の説明を小説風に?
よくわからなかったらすみません・・
聖なる数字は一と七である。それを知らぬ大陸人はいない。
無である零は混沌そのものであり、そこに降り立った主が僕たる七の神々に世界創造を命じた。第一の聖たる蒼鯨神は混沌を飲み込み浄化し海とした。赤竜神はその身を大地とした。鳥獣神は数多の命を育み、太陽神は法と秩序を、月神は安息と慈愛を与えた。すべてを刻み記す任を星神が担い、無に似て非なる見えざる定めを運命神が与える。そうした世界が生まれた後に、主は我ら人を創られた。という創世記と共に、七聖教団が分け隔てなく施す教育の初歩に語り継いで来たからだ。また暦はそれを元に、七日を一巡り、七巡りを一つ神として7つ神の後主の7日を数えた三百五十日を一年として数えている。第二の赤竜神には雪溶けて恵みの時期となり、第四の太陽神には最も陽が近しい時期となる。過ごしやすき月神が終わりを告げると、白が染める時期となる。そして主の七日間を境に、また世界は熱を帯びてゆくのである。
「第三の鳥獣神が統べる三巡り目の二日、聖神祭の前日に強盗とは、とんだ背教者もいたものだ」
月は雲に隠れ、夜が闇に近づいた辻で十人の男達に囲まれた若者は、脅えるでも強がるでもなく、呆れたように呟いた。その声も容貌も二十に届かぬ若者のもので、長身だが細身の身体を仕立てのいい黒革で装い長剣を帯びている。長い、緩やかに波打つ黒髪の狭間に同色の双眸が垣間見れるが、その眼に宿るのは憐憫。それを見て取った男達の長が、怒鳴り声をあげた。「黙れ!!財を掠め取る輩の愚児めが!!」
若者の装いは貴族や商人の子息と名乗るに遜色ないものであった。それを標的とした追剥、誘拐を生業とする者が自身の行いを正当化する際に、この怒声はよく使われていた。しかし若者は、この男達のうち九人がそういった犯罪者ではなく、単に荒事を代理する荒くれであると理解していた。
「先程の酒場で給仕に絡んでいた馬鹿。顔を隠しても無駄だよ?意趣返しかい?」その言葉に、一番奥の男がびくっと身体を震わしてはせっかくの男達の演技も言葉通り無駄であった。「だ、黙れ!!お前らやっちまえ!!」裏返りそうな叫びに男達は苦笑したようだ。それでも雇い主には違いなく、男達は動き出した。
「おとなしく半殺しになりな!!手向かえばうっかりやりすぎる事もあるんでな!!」前に立つ三人が剣を引き抜くも、片刃であり、それを反転させる。その仕草は堂に入っており、言葉通り殺す気はなく、ある程度痛めつけるだけを目的とする動きであった。しかしながら、若者はそれに従う気などこれっぽっちもなかった。
「不運は衛視詰所で嘆いてくれ。すまんが叩き伏せる」そう告げ長剣を鞘走らせた若者と男達の戦いは、十人の男達にとっては真に不本意な結末を迎えることとなった。喧嘩として処理され衛視詰所で一泊した後、それでも九人の男達は軽傷で報酬も分捕ったが、雇い主たる男は半月程、人前に出せぬ腫れ上がった顔を毎朝鏡に映すという罰に服したという。
投稿するのって緊張しますね~