①出迎え
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第1章の始まりは、キッザニア東京とサイバーサイジング社が初めて正式に向き合う場面が描かれる。
契約でも建設でもない。
キッザニア東京という空間に、五人が同時に立ち会った、その最初の一日である。
この計画については、すでに一定の形で社会に提示されていた。
体験として、学習として、そして未来の可能性として。
多くの人々は、それを理解したつもりで受け入れていた。
だが——
この日、訪れたのは単なる来客ではなかった。
それは企業同士の面会として始まりながら、まだ誰にも明確には見えていない「接続」の可否を見極める、最初の手続きでもあった。
ここで交わされるのは、挨拶と言葉と視線に過ぎない。
だがそのやり取りの中で、キッザニア側は相手が単なる企業ではなく、特異な判断構造そのものであることを知り始める。
すでに示されていたはずの内容と、
ここで実際に向き合う現実とのあいだには、わずかなずれがあった。
そのずれは、この時点ではまだ、違和感としてすら認識されていない。
後に振り返れば、すべてはここから始まっていたのだと分かる。
しかしこの時点では、そこにいた誰も、その正確な意味をまだ知らない。
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キッザニア東京のバックヤードは、普段とは明らかに異なる空気に包まれていた。
開園前の静けさの中に、どこか張り詰めた緊張がある。
動線は一部制限され、通常では見かけない警備スタッフが複数配置されていた。無線のやり取りは短く、無駄がない。
それに加えて、もう一つ——明らかに性質の異なる警備の存在があった。
現地の警備とは別に配置された、アダソン家専属のSP警備部。
彼らは周囲に溶け込むように立っていたが、その視線だけは一切の隙を持たず、空間そのものを管理しているかのようだった。施設の責任者である水瀬綾乃は、最終確認のチェックリストに目を落としながらも、何度目か分からない周囲の確認を繰り返していた。
「導線、再確認済みです。来館動線と完全に分離されています」
隣に立つ橘恒一は、小さく頷いた。
「ありがとう。ここまでの対応になる案件は、そう多くない」
その言葉は事実だった。
キッザニアがこれまで受け入れてきた企業は数多い。だが、今回のように創業者自らが来訪し、かつこの規模の警備体制が敷かれる案件は初めてだった。
水瀬は一度だけ、入口方向へ視線を向ける。
「……本当に来るんですね」
橘はわずかに笑みを浮かべた。
「来るから、この状態なんだよ」
その瞬間、無線が短く鳴った。
「対象、到着します」
空気が一段、静まる。




