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①出迎え

****************


第1章の始まりは、キッザニア東京とサイバーサイジング社が初めて正式に向き合う場面が描かれる。

契約でも建設でもない。

キッザニア東京という空間に、五人が同時に立ち会った、その最初の一日である。


この計画については、すでに一定の形で社会に提示されていた。

体験として、学習として、そして未来の可能性として。

多くの人々は、それを理解したつもりで受け入れていた。


だが——


この日、訪れたのは単なる来客ではなかった。

それは企業同士の面会として始まりながら、まだ誰にも明確には見えていない「接続」の可否を見極める、最初の手続きでもあった。


ここで交わされるのは、挨拶と言葉と視線に過ぎない。

だがそのやり取りの中で、キッザニア側は相手が単なる企業ではなく、特異な判断構造そのものであることを知り始める。


すでに示されていたはずの内容と、

ここで実際に向き合う現実とのあいだには、わずかなずれがあった。


そのずれは、この時点ではまだ、違和感としてすら認識されていない。


後に振り返れば、すべてはここから始まっていたのだと分かる。

しかしこの時点では、そこにいた誰も、その正確な意味をまだ知らない。


****************

キッザニア東京のバックヤードは、普段とは明らかに異なる空気に包まれていた。

開園前の静けさの中に、どこか張り詰めた緊張がある。

動線は一部制限され、通常では見かけない警備スタッフが複数配置されていた。無線のやり取りは短く、無駄がない。


それに加えて、もう一つ——明らかに性質の異なる警備の存在があった。

現地の警備とは別に配置された、アダソン家専属のSP警備部。

彼らは周囲に溶け込むように立っていたが、その視線だけは一切の隙を持たず、空間そのものを管理しているかのようだった。施設の責任者である水瀬綾乃は、最終確認のチェックリストに目を落としながらも、何度目か分からない周囲の確認を繰り返していた。


「導線、再確認済みです。来館動線と完全に分離されています」

隣に立つ橘恒一は、小さく頷いた。

「ありがとう。ここまでの対応になる案件は、そう多くない」


その言葉は事実だった。

キッザニアがこれまで受け入れてきた企業は数多い。だが、今回のように創業者自らが来訪し、かつこの規模の警備体制が敷かれる案件は初めてだった。


水瀬は一度だけ、入口方向へ視線を向ける。

「……本当に来るんですね」


橘はわずかに笑みを浮かべた。

「来るから、この状態なんだよ」


その瞬間、無線が短く鳴った。

「対象、到着します」

空気が一段、静まる。


挿絵(By みてみん)

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