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2章『劣弱の叛骨者』
『余白埋めの物語2』
空は青かった。青すぎて、どこか遠くの音が消えるような気がした。足元の影を気にする必要はないのに、なぜか踏み出すたびに心臓が早鐘を打つ。
誰かが何かを言った気がする。たぶん耳に届いていなかっただけだ。声は聞こえたけれど、意味は届かなかった。
光が揺れる。影が揺れる。手元にあるものは冷たくも熱くもなく、ただそこにあるだけだ。時間は止まっているのか、進んでいるのか、確かめようがない。
目の前には何もない。だが何かがあるような気がして、視線をそらすことができない。誰かが笑ったような気もするし、怒ったような気もする。だが、声は残らず、感情だけが漂う。
動くか動かないかも、考えるか考えないかも、もうどうでもいい。ここにあるのはただの静けさで、それに気づく者も、気づかない者も、等しく無意味だ。
それでも、空は青い。遠くで音が鳴っているかもしれないし、鳴っていないかもしれない。手元の影が動いたかもしれないし、動いていないかもしれない。
意味があるのか、ないのか、そんなことはわからない。ただ、青が青いことだけは確かだ。




