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EP2『観測記録』

 2『観測記録』


 30xx、私達ギウス人は遥かな空に数十機の飛行物体を見つけた。

 目の前の未知から感じる恐怖に私達は怖気づいた。国王、ベテルギウス様のご命令の下、撃ち放った大魔法。

 今思えばその選択が、全ての始まりだったのかもしれない。

 後にその飛行物体は、破片や性質から、それが異世界の物だと判明した。その頃はそこそこ技術も発展していて、異世界の存在は既に明らかであった。

 国王方も流石に不味いと思ったのか、未知なる来訪者に謝罪をすべく、全技術を用いてその地を探した。

 およそ数か月くらいかかっただろうか。やっと見つけた未開の地。その名を”地球”

 さっそく私達は地球に赴くことにした。私達の言葉は通じるのか。そんな不安なんて、一切脳裏によぎらなかった。

 数時間掛けて、私達は地球に降り立った。そこにはガラスとコンクリートで覆われた塔のようなものが無数に建っていた。人が住んでいるというのがひと目でわかる。

 人々が私達を敵だと認識する。それもそのはず。私達はもはや宇宙人だから。

 私達も動揺していると、声をかけられた。いや、違う。正確には「動くな!」と拳銃を向けられ脅された。

 奇跡的にこの国と言語が同じなようで、その意味ははっきりと伝わる。しかし、仲間の一人がパニックになり、杖を取り出した。

「やめろ!!」と、声を出すはずだった。その前に、鼓膜を裂くような轟音が叫ぶ。

 発砲された。辺りに血飛沫が散る。

 それが、始まりの合図だった。私達は魔法を用いる。そんなことを、彼らは予想しただろうか。

 そこからはもう、住民や警官、建物なんて関係ない。私達はただ「殺されないため」に抵抗した。最終的に、全てを破壊する結果になっても。

 あとから知ったのだが、私達が破壊したのは東京都という地らしい。数十分も経てば仲間が到着し、辺りは焼け野原になっていた。

 最初に発砲したのは日本。だが、その前に撃ち落としたのは私達ベテルギウス帝国の一員だ。私達にも非はある。そう思っていたのは、どうやら私だけだった。

 第三皇帝、プリズナ・ベテルギウスは、この世界を乗っ取った。彼はこの世界の「全て」を破壊し尽くした。そして以降、日本は監獄と化したんだ。その戦争を【異界侵攻戦争】と呼んだ。

 それから数百年後のことだ。私達ギウス人に【呪い】が降りかかったのは。

 いつ頃だろうか。たしか、物凄く陽射しの強い日だったことを覚えている。日本の区分は北部、南部、中部の3つに隔てられた。

 たしか南部、当時で言う九州辺りで大爆発が起こった。監獄も、ギウス人も日本人も関係なく、全てが爆散した。その破壊力は、魔法よりも遥かに強力で、凶悪だった。そしてギウス人はその力を恐れた。その力はやがて、【カース】と呼ばれるようになった。その力が発現するのは日本人だけだった。そのため日本人はいつしか【カース人】と呼ばれるようになり、迫害の被害も増えてしまった。


 ***


「っていう話だ。わかったか?特に灯火」

「愚かな話だ。それで、俺達に何を求める」

「天才はお察しのようだな。私はお前ら生徒に、反逆を求める」

「馬鹿ですか? 先生」

「私は愚か者か? 貴様の眼にはそう映るか?」

「ええ。とても」

「そうか、一番期待した世代なんだがなぁ」

「まて、もしかして何世代に渡ってこんな事を?」

「ああ。それが私の生きる意味だ」

「それは愚か者のすることです。そんなことが何になる」

「私はカースの真髄を知っている」

「……叛逆者か」

「そう。私の目標は叛逆者の育成だ。軍事単位でもいいから、現在の国家を転覆することを目標としてる」

「反対だ。命を無駄にできるか」

「おーっと残念灯火君。不正解だ」

「はい?」

「生徒は他にもいる。多数決を獲ろうじゃないか」

「勝手にしろ」

 気に食わないものの、多数決を要求されては仕方がない。終了後の黒板には、正の字が4つと、少し余白を置いて2つ書かれていた。

「反逆するのが二十名か。決まりだな。さて灯火よ。お前には頼みがある」

「無理だ。俺は反対派だ」

「私がこの世代に期待してる理由の大半はお前の頭脳だ」

「俺に軍師にでもなれというのか」

「ああ、その通りだ。それにお前は」

 俺を嘲笑うように先生は続ける。

「カースを持って無いだろう」

 そうだ、その通りだ。俺はカースを与えられ無かった。かといって魔力も持っていない。神様に嫌われたのだろう。

「俺はやらない」

「ふざけんな、零!」

 俺の隣の席から拳が飛んできた。

「痛ッ!?何をする、星」

 隣の席のコイツは黒宮 星。一言で言うなら親友だ。

「お前はいつまでも支配下でいいのか!?勉強は出来ても頭はお堅いようだな!」

「じゃあお前がやればいいだろう」

「お前にしか出来ねぇから言ってるんだろうが!」

「私も星君に賛成」

 そう言って手を挙げたのは友人の氷室 未来だ。

「未来まで……」

 俺も人間だ。そこまで言われると流石に飲まざるをえない。

「しょうがない。軍師でもなんでもやってやろう」

「よっし!決まりだな。灯火。お前はさっきも言った通り軍師をやってもらう」

「待て。クラスメイトのカースが分からないと策は講じられない」

「そういうと思って全員のカースを纏めたノートをやる」

「こうなることを見越してたのですね」

 嵌められたか、先生に。星も未来も、クラスメイト達も。

 

 ***


 零は取り敢えず全てのカースを頭に入れた。先生の言う通り、中々攻撃向けなカースが揃っている。これならもしかしたら本当に? とはいえ零自身、戦略など初めて建てるんだ。教科書にも書かれてなければ参考資料もない。流石に無理がある。

「おうおうしっかりやってんねぇ優等生くぅん」

「集中している。黙ってくれないか」

「優等生には最初の課題を寄越してやる」

「……聞こうか」

「カースを従え私を殺してみろ」

「日頃の恨みを晴らせるいい機会ってわけですか」

「そうなるな」

「……本当に殺しても?」 

「いや冗談だ。まぁ身動きを取れなくしたら勝ちってことでいい」

「わかりました。その条件、飲んでやる」

「対決は明後日だ。楽しみにしてるぞ」

「明日で結構。今からでも生徒に説明しておいてくれ」

「ちゃんと寝なきゃ戦局に響くぜぇ?」

「消灯時間まで3時間もあるんだ。十分すぎる」

「余裕かよ。もう勝機を思いついてたり?」

 ニヤりと狡猾な笑みを浮かべた。

「先生、将棋でもいかがですか?たしか教室にありましたよね?」

「もしかしてお前本当に?」

「俺に勝ったら教えて差し上げましょう」

「大人舐めるなよ。クソガキ」

「六百歳越えの魔女でしょうに」

「貴様……」

 勝負が決したのは試合が始まってから十分も経ってないくらいのことだった。

「王手」

「……お前強すぎないか?」

「ルールを知ってるだけだ」

「こいつ……」

「気分がいいので教えてあげます。とはいえ、明日あなたに贈る言葉はもう贈ってしまいました」

「それは……?」

「王手という言葉をあなたに」

 そう言って、彼は独房へと戻っていった。

「どこまでもムカつく奴だ」

 そう愚痴を言うのと裏腹に、カルネは高揚していた。

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