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 EP39『二次試験』

39『二次試験』


「今から君たちに、能力のランクと看守側の戦力、チーム分けの表を見せる」


 Aチーム

 

 獅子堂 雅火【煉獄】 【紅陽烈火】S

 霧島 妖狐【幻惑】 【夢幻抱擁】A

 雨宮 玻璃【反響】 【以心反心】B

 月城 ねむ【逆夢】【微睡之歌】B

 

 Bチーム

 

 神薙 幽【言霊】  【禁忌霊音】A

 望月 絶【領域】  【絶世絶界】A

 薄桃 淡依【希釈】  【薄死寂抗】B

 

 Cチーム


 紅蓮寺 緋華【烙印】 【燃烙刻命】S

 灰村 直人【歪曲】 【狂捻軌跡】B

 道坂 胡桃【翻弄】 【混乱花弾】B

 

 

 Dチーム

 

 氷室 未来【温度】 【絶対零度】S

 カルネ・ダリアル【時間】 【IN MY HAND】S

 アネモネ・スカルヘルト【転写】 【チェインコスト】B


 Eチーム


 シャンティ・コントルド【服従】 【ハート♡チェーン】S

 白咲 玲奈【電撃】 【迅雷閃華】S

 黒影 凪紗【格納】 【水墨影陣】B


 Fチーム

 

 ローゼルス・ローダンセ【戒律】 【オブリージュ・ザ・ローフォース】S

 メル・ホワイトリリィ【赦免】 【真白きアブソーブ】A

 オリジナ・ブルーローズ【原点】 【セーブ&ロード】A


 生徒たちは一喜一憂している。

「へっ、俺がSランクか、妥当だな」

 雅火がふんっと鼻を鳴らす。

「先生、なぜ看守のみなさんもチーム分けされているんですか?」

「いいところに気が付いた、妖狐さん」

「えへへ」

「AチームはDチームと、BチームはEチームと、CチームはFチームと、対抗戦をしてもらう」

「対抗戦?」

 普段大人しい幽がポツリ呟く。

「何回も言うがこいつは敵だ」

 そう言って未来を指さす。

「だから、そうだけどさ! 言い方があるじゃん!」

「零先生は参加しないんですか?」

「ああ、俺は指揮を執らないといけないらしい」

「えー、絶対勝てないじゃん!」

「いや、俺が指揮を執るのは生徒側だぞ」

 生徒達が感嘆の声を上げる。

「だから一次試験と称して、君たちの能力を見ていたんだ」

「零先生、未来ちゃんに勝てる気がしません!」

 未来は前日の交流会で、運動神経で生徒達を圧倒した。

「大丈夫だ玻璃、お前がいれば未来戦は安泰だ」

 玻璃は頬を赤く染める。

「未来のことは俺が一番よく知っている」

「だから! 私となりにいるんですけど!」

 未来が零の腕を軽く叩く。生徒たちがくすくすと笑った。

「チーム分けの意図については、各チームに直前で伝える。今は覚えることが一つだけある」

 教室が静まる。

「全力を尽くせ」

 それだけだった。

「……以上か」

 直人が静かに言う。

「以上だ」

「根拠は」

「お前たちを見た」

 直人は何も言わなかった。

「あのー」

 胡桃が呑気に手を上げる。

「なんだ」

「零先生って、未来先生のこと好きですよね?」

 教室の空気が変わった。

「……試験に関係ない」

「未来先生はどうですか」

「え、私?」

 未来が目をぱちくりさせた後、ぱっと顔を輝かせた。

「零ちゃ――先生のことは」

「三十分後に訓練場に集合。以上だ」

 零が早口で被せるように言った。

「え、続き聞きたかった!」

 胡桃が口を尖らせる。生徒たちが立ち上がる気配。緋華が零の横を通り過ぎる直前、足を止めた。

「……全部、見せます」

 それだけ言って出て行った。教室に零と未来だけが残った。

「零ちゃん」

「どうした?」

「さっきの胡桃ちゃんの質問さ」

「お前も試験に集中しろ」

 零は未来の頭をぽんっと撫でる。

「はーい」

 未来はくすっと笑った。それ以上は何も言わなかった。

 零も何も言わなかった。

 

 ***


 訓練室で、七人が向かい合った。

 生徒側は獅子堂 雅火、霧島 妖狐、雨宮 玻璃、月城 ねむの四人だ対して、看守側は氷室 未来、カルネ・ダリアル、アネモネ・スカルヘルトの三人だ。

 生徒側には、イヤホンがセットされている。

 合図はなかった。雅火が動いた瞬間、それが始まりだった。

「【紅陽烈火】」

 炎が訓練場の空気を焼く。真っ直ぐ、迷いなく未来へ矛先が向く。

 未来は笑っていた。

「やるね、雅火くん」

「笑ってんじゃねえ」

「【絶対零度】」

 炎と氷がぶつかった。轟音。白煙が訓練場の一角に広がる。

 その煙の中で、妖狐が動いた。音もなく、気配もなく。

 カルネの視界に、静かに滑り込む。

「【夢幻抱擁】」

 カルネの足が止まった。

「おや」

 カルネは笑いながら周囲を見回した。訓練場の壁が、ゆっくりと溶けていく。床が揺れる。天井が遠くなる。

「なかなかやるじゃないか、嬢ちゃん」

 妖狐は答えなかった。ただ、カルネから目を離さなかった。

 カルネはその瞳を見た。笑顔のまま、しかし目だけが細くなった。

「……そうか」

 何かを悟ったように、カルネは呟いたが、妖狐には聞こえなかった。

 煙の向こうで、玻璃が構えていた。未来の攻撃が来る。直感でわかった。どこから来るかはわからない。でも来る。

 来た。

「【以心反心】」

 氷の礫が、そのまま跳ね返る。未来へ向かって。

「えっ」

 未来が素直に驚いた声を上げた。氷で作り出した剣で、撃ち落としながら玻璃を見る。

「玻璃ちゃん、それ反射?」

「そ、そうです!」

「へえ、すごいね」

「ありがとうございま——じゃなくて!」

 玻璃が顔を赤くする。未来がくすくす笑う。その笑顔が、すっと消えた。

「でも」

 周囲の温度が、落ちた。じわりと、訓練場の空気が変わる。床に薄く氷が張り始める。玻璃の息が白くなった。

「さむっ」

 ねむが身を縮める。

「ねむ、俺が氷を解かす、自分に集中しろ!」

 雅火が煙の中から声を上げた。

「【紅陽烈火】」

 周囲の氷がじわじわ解け始める。

「わかってる」

 ねむは目を閉じた。

「【微睡之歌】」

 小さな歌声が、訓練場に流れた。原曲より緩やかなカノンだ。それはひどく静かで、ひどく遠くて、夢の中で聞こえる音楽みたいだった。

 ねむの身体から力が抜ける。代わりに、別の何かが入ってくる。

 目を閉じたままだが、世界が、少し違って見えた。

「行きます」

 ねむが動いた。さっきまでとは、明らかに違う速さで。未来がそれを見て、目を細めた。

 ――面白い。

 その時だった。

 アネモネが、静かに手を上げた。

「【チェインコスト】」

 声は小さかった。しかし確かに、何かが変わった。ねむの動きが、止まった。

「……あれ」

 ねむが首を傾けた。

 それは規定以上の眠気だった。さっきまで感じていた研ぎ澄まされた感覚が、急速に遠のいていく。瞼が重い。足が動かない。

「な、なんで……」

「眠気を倍にしただけですよ」

 アネモネが微笑んだ。

「【微睡之歌】は眠ることで力を引き出す能力でしょう。その眠気を、あなた自身に転写しただけです」

「そんな、反則じゃ——」

 ねむの声が、途中で途切れた。

 その場に、ふわりと座り込む。意識が、微睡みの向こうへと落ちていった。とても穏やかな寝顔だった。

「……ねむちゃん!」

 玻璃が叫んだ。

「大丈夫ですよ、ただ眠っているだけ」

 アネモネが言った。嘘ではなかった。ねむは静かに、規則正しく呼吸していた。

 雅火が舌打ちした。

「三対三か」

「そういうこと」

 未来が言った。笑顔だった。しかしその目は、真剣だった。

「ここからが本番だよ」

 雅火は炎を手に、未来を見た。

「上等だ」

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