EP16『突飛で不格好な作戦』
16『突飛で不格好な作戦』
そんな作戦で大丈夫なのか。全員がそう思った。天才である彼の品格を著しく下げるような作戦だった。本人も自覚しているとのことであるが、これはトリネコの弱点を的確かつ最大限に活かした作戦だ。
叛逆生たちは、グラウンドにトリネコを呼び出した零の状況を、インカムでから聞いている。
現場に向かったのは 灯火零、黒宮星、空野透司、黒影凪紗だ。
トリネコは自身の射程圏内である五十メートルより外にいる。しかし少しでも下手な真似をしたら魔法を発動するつもりだ。
「看守長に聞いたわ。あなた、わざわざ脱獄するって宣言するなんてどういうつもり?」
「看守長と取引したのさ。あなたが知る必要はない」
「よく言うわね、犯罪者の分際で。あなたの行いはとっくに処罰の対象になっているわ」
「そんなことは承知の上だ。ただ、俺がお前の家族の真実を明るみに出したら、監獄内での孤立は避けられないんじゃないか。死別した子供と同じようにな」
「お前!!」
トリネコは零に向かって走り、魔法を発動したが、星がそれを庇うようにして前に出た。
「う゛」
星は魔法に充てられ、苦しそうに頭を抱えている。するとトリネコは勝ち誇ったように近づいてくる。
「さあ、この状況からどうするつもり?」
「話を聞け。もし監獄内で孤立したくないのならば、こちらの条件を呑んでもらおうか」
「ふん、誰が聞くのよ。さあ星くん、彼を捕らえて」
しかし、星は必死の抵抗を見せた。
「な、なんで、今までこんなこと……」
トリネコは星に触れることで魔法の効果を強めようと考えた。しかし、その隙が仇となった。
気が付けば、トリネコの体が宙に浮いていた。星による渾身の背負い投げが炸裂した。
「気絶してる……そろそろ魔法が解けたかな。凪紗さん、こいつをカースで覆ってくれ」
「わかったけど……なんかすごく嫌な気分」
「それはすまない。さて、透司くん、もう解除して大丈夫だぞ」
「はあ、助かった」
熱にうなされたかのように、汗をかいている。
「大活躍だったな」
そういって零は透司の肩を叩く。
「不服だ……」
「凪紗さんも、ありがとう」
「いえ、これが脱出に繋がるなら」
これで少しは、結束力も強まったんじゃないかと、零は内心ホっとしていた。




