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3章『無情無比の忘我者』
『余白を埋めの物語3』
薄明かりの中で、時間はまるで静止したように見えた。壁にかかる影は長く伸び、どこから来たのか分からない音が微かに部屋を揺らす。足元の床板は軋み、何度も踏まれた痕跡を語るかのように沈黙していた。
窓の外では、見慣れない街灯が揺れ、風に乗って奇妙な香りが混じる。空は厚い灰色に覆われ、星の一つも覗かせない。目を凝らすと、遠くにぼんやりと動く影があるようにも思えた。
誰かの存在を確かめたくても、そこには答えはない。ただ、部屋の空気が少しずつ変わる感覚だけが残った。過去の残像が壁や家具に滲み、触れれば崩れそうな脆さを帯びている。
心の奥底で、何かが動いた気がした。確かめるすべはない。ただ、知らず知らずのうちに、誰かが見ているような感覚だけが残った。
部屋を離れることはできないわけではない。だが、どこへ向かうべきか、誰に声をかけるべきか、答えは常に遠く、手の届かない場所にある。
それでも、時間は進む。あるいは止まる。確かめる者のいない世界で、微かに光る影だけが、静かに呼吸していた。




