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とある女中②

広がってゆく炎が私を焦らせる。


仮に、どうにかA様を助けられたとしてもA様はまた別の方法で誰かに殺されそうになるだろう。


だから、私は最期までA様の隣にいることにした。

それしか無かった。

こんな女中で本当に申し訳ない。


A様の隣に座って、A様の手を握って、A様に話しかけた。

涙が止まらなかった。


けど、A様と一緒に死ねるのが何故だか凄く嬉しかったのを覚えてる。

A様の最期に隣に居られることもかなり嬉しかった。


煙で喉がかなり痛かった、痛かったどころではないくらい痛かった。

けど、ずっと普段みたいに話しかけた。


火で部屋中燃えてて視界が火の赤と煙の灰色でいっぱいになってきた。


煙のせいなのか、握ってきたA様の手がいつもと違うからか、涙が止まらなかった。


一緒に話していたA様の声がどんどん弱々しくなってゆく。


無理して話しかけていたからか、かなり咳き込んで話せなくなってきた頃で私は

「私は間もなく死にますけど、最期にA様と共にいることができて私はとても幸せです」

みたいなことを言った。


そんな記憶がある。


その後、間もなく意識を失った。

恐らく、その辺りで私は死んでしまったのだろう。



「え、お前死んだやん!語り手誰やねん!」

と思った読者もいるだろう。


結論から言おう、この物語の語り手はあの女中だ。

けど、あの女中はもう亡くなってる。


これは、私の前世の記憶だ。

この記憶だけを頼りに、私は今世でA様を探している。


火事から救えなかったことを詫びたいし、何より、私のことを最期まで大事にしてくれていたことに礼を言いたい。


恋仲になる気は微塵も無い。

ただ、言いたいことが山ほどある。


お互いの名前も思い出せないけど、女としての幸せを諦めた私に、年頃の少女のような甘酸っぱくて楽しい日常をくれたA様が未だに大好きだ。

だから、感謝を伝えたい。


コレで終わりです。

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