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無邪気  作者: いしまめ
第二章
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 大学近くの運動公園。僕らのサークルは、いつもここで練習をしている。大学内のテニスコートは倍率が高くため、いつも運動公園で行う。


 接待じみた体験会がようやく終わった。新入生に楽しませることだけを、意識して色々気を使って話す。ただただ疲れる。その練習の終わりを告げる集合の合図がかかる。

 みんなバラバラと集まってきて、歪な円陣が出来上がった。円陣を組み、若さをこれでもかというくらい見せびらかしている集団。それはまさに活気に溢れた健全なサークルに見える

「今日は練習会来てくれて、ありがとう!!この後、ご飯いける人はいきましょう!それでは、お疲れさま!!」

「お疲れ様でした!!」

 突然の号令で僕の宙を浮いた意識が戻り、慌てて頭を下げた。いつも以上に出遅れてしまった。その号令の後、各々が好きに動き出す。僕は誰にもピントが合わなくなっていた。動き始めている人込みを躱しながら、コート沿いに並んだフェンスにもたれかかる。  まだ信じられないな、、、、


 それを聞いた時は、意味が分からなかった。桐生が「お前、知ってるか?」と神妙な顔立ちで教えてくれた。それを咀嚼してやっと意味を、体が理解した。それからは、まさに胸に穴が開いた感覚で、体験会どころじゃなかった。いつも以上に話しかけれず、亡霊のようになっていたと思う。なんで桐生はこれを知ってあんなに普通そうに楽しそうに、まるで何も知らないように振舞えるのだろうか。おぼつかない思考で考える。


「おい、こんなところで何してんねん。新入生に晩御飯奢りにいくで!」

 桐生は、集団から外れた僕を逃そうとはしてくれない。

「あ、うん。」

僕は、ふらふらとまた戻る。しかし、踏み出すたびに胸から染み出る強迫観念に耐え切れず、声が漏れる。助けを求めるように。

「ねぇ、、さっきの話って本当かな、、、やっぱりまだ信じられないんだけど、、」

 桐生は少し眉をひそめて、小声で言い捨てる。

「マジや。詳細はよくわからへん。でも噂は広まってるらしいで。まぁ、とりあえず後にしてくれや。」

 突き放して、歩みをどんどん進める桐生に、一部の異物感を覚えた。僕は、この心境を抱えつつ気丈に振舞うのは、どう考えても難しそうだった。早く帰りたい。

なんの確証もないけど、多分桐生が言っていることは冗談ではなし、事実無根でもなさそう。恐らく本当だ。

このサークルで昔友達だった。いや、ヨッ友くらいの知り合いだった長崎くんが死んだことは確からしい。桐生が言うには自宅からの飛び降り自殺。そこまで仲が良くなかったとはいえ、知り合いの死は衝撃的だった。


 テニスの公開練習会の後は、いつも晩御飯をおごりに行く。サークルの新歓係が、ご飯に連れていき、とにかく親睦を深める。というか、サークルに入ってもらうために仲良くしまくる。後輩だけどちゃんと気を使って話す必要もあるし、楽しんでもらわないとサークルに入ってくれない。新歓期間が終わって正式に新入生が入ると、この気を遣うこともなくなるため、先輩たちが突然本性を見せだすのはここだけの話。

 兎にも角にも、コミュ障の僕には、このイベントは相当しんどい。しかも、今のメンタルでは尚更。ちなみに、ある程度は経費からお金は出るので、金銭面の心配は特にない。


今回の食事会は新歓の初期ということもあって、どこの店もいっぱいだった。それで、結局、桐生の独断で、同期の実希の家で新歓パーティを行うこととなった。実希の家はスーパーからも大学からも近い。更に、実希は押しに弱く、頼まれたら断れないお人好し。本当に実希が無理な時は、キッパリと言ってくる紗英に頼っているほどだ。だから、僕ら(主に桐生の)溜まり場になっている。

宅飲みパターンは覚悟していたが、いざ決まると投げやりになっていた。宅飲みは、いつも時間が長くなるし、帰る時掃除だってしなきゃならない。一番めんどくさいパターン。でも、新歓において言えば、新入生との距離感は近くなるので、悪くない空間となる。また今回は桐生が居る。桐生がなんでも話してくれるので、相当楽だ。

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