第9話 いざ、フォールン邸へ
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スロット1にセーブしてから4時間31分経過。
日時:聖星暦4012年5月8日17時57分37秒
あの戦闘のあと、直ぐに集まってきた衛兵たちに事情を
説明し、1時間ほど衛兵団と共に対象の捜索を行ったが、
白夜・キルティアを見つけることはできなかった。
この戦闘での被害は、公道の一部半壊と、建物2棟の半壊、
3棟の軽壊となっていて、これは八色聖権との戦闘だったと考慮すれば、かなりの軽微なものだったらしく、
怪我人も一人も出なかったことから、
俺達は衛兵達から何度も感謝の言葉を貰った。
その後、俺達3人は3時間ほどの事情聴取を聴問所と
呼ばれる場所で受け、
事細かに状況を王族直属の上位聴取官に説明を行った。
俺達が1人ずつ聴取を受けている間、
国王から第一級警戒令がケイティニア人魔共栄国の首都
であるオルティナ全域に布かれたらしく、
王国最高位聖騎士軍『紅蓮』が直接、発見後即討伐の許可を得て、八色聖権【白夜】の捜索が行われたが、
今だ白夜の動向すら掴めていない状況らしい。
また、魔法鑑定士の周辺地域調査により、
ギルドの扉に上位級魔法『遅延付与 天臨爆壊』が、
ギルド周辺の地域に『誘引欺城化』が仕掛けられていたことがわかったが、これらの能力は、魔法鑑定士が発見した際
には既に効果が切れていたとのことだった。
「はぁ〜〜〜!疲れた〜。
まさかあんなに長時間拘束されるとは思ってなかった…」
「まぁ、今回は事が事ですからね…。
ただ一つ言えますのは、今回、私達は運が良かった
ということですわ」
「………うん、そうだね…。
しょうじき、スゴいヤバかった…」
「いやいや!運だけじゃないと思うよ俺は!
何せライラの攻撃も凄まじかったしな!
アリシアの、あのカッケェ光の攻撃も凄かったし、
ふたりの実力あっての結果だったと思うけどな…!」
立ち止まり、沈黙するふたり。
少しの間の後、最初にライラが口を開く。
「……うんん、今回は、白夜がなぜかボクらにトドメを
刺さずにいなくなったからこその結果だと思う…。
ボクは…今回のたたかいでヤツに1ダメージも
あたえられてない…。
結構な魔法を連発してあびせたのに…1ダメージも…。
それに…上位魔法クラスを連発して発動させたせいで、
ボクの魔力もあの時点で相当尽きかけていたんだ…。
あれ以上長く続いたら…ボクはやられていたと思う…。」
「私も同じよトオルさん…。
私もあの時、相当強力な光魔法を放ったのだけれど、
奴にダメージを与えることはできなかったわ…。」
「……………………」
まぁ確かに…。
言われてみれば、奴はどんな攻撃を食らった後でも
終始余裕な表情を浮かべ、服にすら傷どころか、土埃も
付けずに最後まで戦っていたな…。
…………どんな手品を………奴は…一体…。
「奴は……白夜は………八色聖権とは何者なんだ…。」
「?!」
「?!」
アリシア達にそう尋ねると、
ふたりは互いに顔を見つめた後、
驚いた表情を浮かべながら、トオルの方に顔を向ける。
「トオルさんっ!八色聖権をご存知ないのですか?!」
「あ…あぁ…てか、あれだ…。
多分俺、この世界の一般常識根こそぎ知らないと思う…。
ハハハッ…」
「全然笑い事じゃありませんわっ………!!
あなた今まで一体どこで暮らしてきたの?!」
まぁ、そこ聞かれるよなぁ…。
さて、どう説明したものか…。
「…………まぁ…そのへんは結構複雑で、
話すと長くなるんだけど、端的に言うと、
俺はこの世界出身の人間じゃないんだ。」
………………………………
「……………ブッ!アァハハハハハ!!!
なに?wちょっとw待って!
まw…!真面目な顔で何言うのかなとウフフ…w!
思ったらwウフフフッ!
アハハハハハハ…!!!
まったく良くありませんわトオルさん!w
自分の無知さをそんなwそんな…ww
変な理由で誤魔化そうとするなんてw!ウフフ…!
お腹いたいwお腹いたいわもうwwアハハハハハ…!」
くッ…なんかすげぇ恥ずかしいし腹立つが…まぁそうか…。
確かに、元いた日本で同じ事言ったとしても笑われる、
これが普通の反応……か………。
異世界ならワンチャン……とも思ったが、
それほどまでに異世界転移は稀な事案ってことか…。
魔法がある世界でも笑われるほどの………。
「ウフフフフ…wまぁいいわ…!
これからは何かわからないことがあったら素直に
この才色兼備な私に聞きなさい!
無知蒙昧なベイビーボーイにも伝わるように、
なんでも分かりやすく説明して差し上げますわ!」
…!こいつぅ……!
俺は真の男女平等主義者!!
ムカついた時は、どつくんじゃぁぁ!!
トオルが暴走しそうなのを見て、
何かを察したかのように、咄嗟に止めに入るライラ。
「ダメだよオルオル〜!こらえてぇ!!
ここはこらえどきだよぉ〜!!」
「くッ…止めるなライラ…!
一回だけでいい!!
一回こいつをどつかせろぉ!!」
「ダメだよオルオルぅ!!我慢してぇ!!
リルリルはこういうとこあるから…!
よくあることだから…!!!慣れよ…!ね…!!」
「アハハハハハハ…!!もうwこれ以上笑わせないでw!
腹よじれるwアハハ…!くるしいww!!」
ふたりのやりとりを見て、さらに爆笑するアリシア。
現場は混沌としていた………。
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スロット1にセーブしてから4時間42分経過。
日時:聖星暦4012年5月8日18時8分54秒
「はぁ〜、じゃ!いっぱい笑わせてもらったし、
早速説明に移らせていただきますわ!」
「………あぁ……ベイビーボーイな俺に早く説明しろよぉ」
「まったくダメじゃないかリルリル〜…
オルオルすねちゃったでしょ…!
その悪いクセ直さないと、
またジィジにしかられちゃうんだからね…!」
「ウフフ…!ごめんなさい…!そうね!
ゴホン……………では気を取り直して…………。
八色聖権に関して、簡単に説明いたしますわ。」
「あぁ…よろしく頼む。」
「八色聖権。
それはこの世界の五大厄災の一つに数えられる世界の癌。
いくつもの国、地域、村や都市を滅ぼし、
数え切れないほどの命という命を奪ってきた存在…。
全世界で最重要警戒組織に指定されている、
構成員9人の複数種族で構成された殺戮集団よ…。
9人の内8人までは冠する二つ名まで判明していますが、
内1人は不明…二つ名が判明している8人に関しても、
詳細な能力などは判明していません…。
世界中が八色聖権を滅ぼすべく動いていますが、
今だそれは実現していません…。
………と、簡単に説明するとこんなものよ…。
つまり私たちは、
本当にやばい奴らに狙われてたってこと…。
私達が運が良かったって言った意味がわかったかしら?」
「…薄々感じてはいたが、そんなにやばい奴だったなんて
この先…また狙われる可能性は…あるのか……?」
「………………………わからないわ。
でも、一度狙われたのだから、
また狙われる可能性は重々あるわ…。
まぁでも深く考えて、そこを恐怖してもしょうがないわ!
今はこの危機を乗り切ったことを喜びましょう!」
アリシアは明るい表情でそう呟く。
「………………………。なぁ…………。
この先、どうするつもりなんだ?」
「ん?あぁそうね!
取り敢えず、
あなた今日は私の屋敷に泊まっていきなさい!
あなた一文無しなんでしょ?
だったら宿も泊まれないんだから、家にきなさい!」
「?!いいのか?!」
「なにをいまさら…!
あったりまえでしょ!あなたは命の恩人よ!
ちゃんと家で饗させていただくわ!」
「わぁ~い!オルオルとお泊まり会だ〜!
ボク、オルオルといっしょに寝る〜!!」
「マジか?!ホントにいいのか…?!それは助かる!
正直、どうやって宿を取ろうか悩んでたんだ!
ありがとうな!」
「いいってことよ!……でもまぁ…………………
このままず〜〜〜〜と一文無しって訳にはいかないでしょ?
だから明日!ギルドで仕事、貰いにいくわよ!!」
「……………………………?ギルド………………?
ギルド……………。?!そう…………ギルドだ!
俺、元々衛兵のおっさんにギルド紹介されてて、
そこでお金を稼ぐ予定だったのすっかり忘れてたわ…!」
色々衝撃的なことが多すぎて、
すっかり元の目的を見失ってた…。
「あら、元々そのつもりだったんなら話は早いわ!
明日、私と一緒にギルドいくわよ!
それと今日、私の家に着いたあと、別件であなたに確認
したいことがあるから、それまで寝ないようにね!」
「………?確認したいこと?」
「内容は後で説明するから、今は家に帰るわよ!」
アリシアはそう言うと、
俺の手を引きながら、急ぎ足で屋敷へと向かっていった。