第7話 思わぬ再会
クソ……!
ここにきてイレギュラーが発生しやがるとは…!!
…………いや、違う………!
そもそもの話、アリシア達が狙われてるのは
知ってたんだから、近くにそういったやばい奴がいることも考慮するべきだったんだ…。
抜かってた…。
それにしても…、これからどうすれば………。
奴の攻撃、見切れるどころか理解もできなかった…。
そもそも俺はこの世界に来たばかり、
スキルや魔法について知らないことが多すぎる…。
これじゃあ、対抗策を講じることさえ厳しいぞ…。
思考を一人巡らせていく内に、トオルはあることに気づく。
……………………そういえば…
頭を巡らせれば巡らせるほど…、いや違う、
この空間にいればいるほど精神が落ち着いてくるな。
少し前までとは精神の具合に雲泥の差がある…。
この空間には精神を落ち着かせる効果でもあるのか…?
それはそれで、助かりはするが…。
…………………
………………………………
ロードできる回数には限りがある…。
チャンスはあと3回…。
この3回でなんとかしないと…
ふたりを救い出すことはできない…。
いや、それどころか俺の命だって……………。
クソ…!
なんで俺まであんなイカれた奴に狙われてるんだ…!
……………俺が異世界転移者だからか…?
………まさか奴はそれを知ってて襲ってきてるのか?
それとももっと別の理由…………?
………………………
いや、やめよう…。正味、動機なんてどうでもいい。
俺も狙われてることは確かなんだ…。
これからは、その事実を考慮した上で行動するしかない…。
取り敢えず、
アイツをどうにかするのは今の俺には到底無理な話だ。
だったら、逃げる方向でいくしかない。
奴は、
俺が向かってた商店街通りに続く最短ルート上にいた。
つまり俺が少し遠回りして、そこに近づきさえしなければ、
少なくとも、直ぐに見つかってさっきみたいに殺られることはなくなるはずだ…。
その後は、予定通りだ。アリシア達を助ける…!
そしてその次、助けた後はとにかく3時間は生き残る…!
そうすれば、またセーブすることができるからな…!
何があっても、何とかなる確率が上がる…。
一旦の作戦はこれしかない…。
助けた後の細かいあれこれはその後に考えるんだ…!
絶対に、この危機を脱してみせる…!
覚悟を新たに決めたトオルは、
再びスロット1のセーブデータをロードした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
スロット1の時をロードしました。
スロット1のロード可能回数はあと2回です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから0分経過。
日時:聖星暦4012年5月8日13時26分11秒
戻ってきた。
向かう先は全開同様、商店街通りにあるチルドル屋。
ただ今回は、そこまで向かうまでのルートを変える。
少し遠回りにはなってしまうが、最初の周回をなぞる形で、
あの衛兵がいた場所から、チルドル屋に向かう事にしよう。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから14分経過。
日時:聖星暦4012年5月8日13時40分2秒
ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…
あと少し…あと少しであの商店街通りのチルドル屋に着く…!
あと少し…あそこの角を曲がればもう……
トオルは、あのイカれ野郎に出会わないことを切に願いながら、チルドル屋のある商店街通りの角を曲がった。
ハァ…ハァ…ハァ…………!?よし⋯!見えた…!!
あのチルドル屋だ…!!やった!!!
あと少し…あと少しだ…………!
ハァ…ハァ…!
ハァ…ハァ…ハァ…!
ハァ…ハァ…ハァ………!
……………………………………………よし!!やった…!
やっと着いた!辿り着いた!
チルドル屋に着いたぞ…!!
よし!まずは第一歩だ!前回よりも前進した…!
あとはここで、予定通りアリシアが来るのを待つだけだ⋯!
チルドル屋まで無事に辿り着く事ができたトオルは、
そっと胸を撫で下ろし、
アリシアが来るのを暫し待つのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから19分経過。
日時:聖星暦4012年5月8日13時45分27秒
……………
…………………
………………………ん?!あの竜はもしかして……!
「ライラ?!?!」
名前を呼ぶと、ビクッと驚いた素振りを見せ、
トオルの方を向いて羽ばたきを止めた一匹の竜。
その竜は、
一周目の周回で出会ったアリシアの相棒竜、ライラであった。
トオルは、アリシアと合流するつもりが、
全く想定していなかったライラと先に合流したのであった。
「ビックリしたぁ〜!!キミはだれ?
なんでボクの名前知ってるの?」
「誰って俺だよ俺!トオルだよ…!
ほらっ!この前ギルドで会っただろ…?!」
首を傾げるライラ。
「えっ?!そうだっけ!
う〜〜ん…う~~〜〜ん…
…ダメだぁ…ボク全然思い出せないや…ごめんよ…」
…………………あっ…………そりゃそうだ…!!
ライラと出会ったのは一周目…!
この周回ではライラとは出会っていないんだ…!
思わぬ再会に興奮してやらかしちまった…!
「あ…いや、謝らなくていいんだ…!
君の主人のアリシアの…知り合いでね…!
まだ君とは会ったことがなかったかもしれない…!
困らせてしまってすまないな」
「あ~~~そうなの?!
それならよかった〜!!
失礼しちゃったかと思ったよ〜!
商人たるもの、一度会った人の顔と名前は覚えるべし!
ってよく口をすっぱくしてリルリルに言われてるからね!
これで忘れてたらボク、
またリルリルに怒られちゃうとこだったよ〜!
それでオルオル〜、ボクに何か用事でもあったの?
ボクの名前、さっき呼んでたみたいだけど」
「………あっ!そうだ!そうだった!!
ライラ!よく聞いてくれ!!
信じられないかもしれないが、やばい奴に君とアリシア
が命を狙われてるんだ…!!!
だからそれを伝えに――――――」
「あらあらあら、見つけて仕舞いましたわ…」
話を割るように、
今一番聞きたくなかった存在の声がトオルの耳に入る。
瞬間、辺り衝撃音と土煙が舞う。
やばい…………攻撃された…………!!奴にまた……!
クソ……!またやられ…………ん?……………痛くない?
ケガもしてない………なんだ………これは一体…………?
瞬間、目の前にライラとそっくりな、
乗用車ほどの大きさの竜がトオルの体に覆い被さっていた。
「な…んだ?君は………ライラ…か?」
「うん〜!そうだよ〜!
オルオルはどこも怪我してない?」
「あ…あぁ…おかげさまで…助かった…ありがとう…」
「うん!それならよかった〜!!
…………さて、
それでボク達を攻撃してきたキミは一体なんなのかな?」
突然声色が威圧的になるライラ。
辺りの空気が重くなるのをトオルは肌で感じていた。
「あらあらあら、なんとまぁ大きなドラゴンさんでしょう!
とても可愛く、気高く、優雅で、愛おしいです!
でもごめんなさいですわ…。
傷付けるつもりはなかったのです…。
それはとても悲しい行為、苦しい行為、
酷い行為ですから。
それでも失敗は付き物であり、幸せは奇跡を呼ぶのです!
何せ、人は完璧ではない!
互いに支え合いながら生きているのですから!
素敵です、素敵です、素敵です、素敵です!」
「キミ、会話通じないね。
まぁいいや…どんな理由であれ、キミはボクたちに
殺意を向けて攻撃したね…。
だからボクは、キミを絶対 許 さ な い」
「竜神怒罰」
ライラがそう唱えると、
イカれた女は天高く吹っ飛んでいった。
ここで、最初の攻防戦が始まるのであった。
7話の最後まで読んでいただきありがとうございます!
よろしければブックマーク登録、感想などで是非、
応援いただければ幸いです!
作者の励みになります!!