第3話 辿り着けない
切り替えろ切り替えろ⋯!
考えるんだ…思考を巡らせろ…!
何故俺は死んだ⋯?
そして、なんで俺は死んだ事に気づけなかった⋯?
手段は?魔法…?それとももっと物理的な何かか…?
分かっていることは、
痛みを感じる間もなく死んだということだけだ…。
いや……、それよりも、
この死の原因が事故か他殺かでも状況が変わってくる。
狙われてたのは俺か…、
それともあのふたりなのか…。
事故に巻き込まれたって線も十分にある。
…………………。
………………いや、何をそんな考えることがあるんだ…。
俺には回帰者がある…。
少なくともギルド周辺に今後一切近付かなければ、
同じ様に死ぬことはないんだ…。
………………………。
いや…違う…!
それだとあのふたりを見殺しにすることに…。
あのふたりは俺と出会わなくとも元々ギルドに行く
予定だったんだから、
また巻き込まれる可能性は重々ある…。
俺だけが知ってるんだ…!
しかも俺はあの時アリシアに恩を返すと約束した…!
そうじゃなくとも、
見殺しにするなんてことはできない!
俺にはスキルのおかげでまだチャンスはあるんだ。
狙われてるのが俺なら、
次の周回でアリシア達に近づかなければ
巻き込むこともなくなるし、
アリシア達が狙われてるなら、救い出すことができる。
それは事故でも悪意あるものの攻撃でも同じ事だ…!
アリシア達を救うことを決心したトオルは、
スロット1のセーブデータをロードした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
スロット1の時をロードしました。
スロット1のロード可能回数はあと4回です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから0分経過。
日時:聖星暦4012年5月8日13時26分11秒
最初のセーブ地点に戻ってきた。
まず俺がやることは、
前回よりも早くギルドに着き、
ライラと中にいる他の人達をギルドから避難させること。
その次にアリシアとの合流だ。
初めて会ったあの商店街の通りで待ってれば、
何れ合流できるはず…!
すかさず、トオルは
近くの店の店主にギルドまでの行き方を聞きにいく。
今度はしっかりとメモを取り、向かう事にした。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから30分経過。
日時:聖星暦4012年5月8日13時56分13秒
おかしい…!
明らかにおかしい…!
教えてもらった道の通りに進んで来たのに、
一行に目的地に着かない…!
あの店主は「ここから徒歩25分くらいで着く」
と言っていたのに、
ギルドの建物の影すら見えない…!
こうなったらもう一回、誰かに聞くしか…。
周りを見渡すと、
何やら慌ただしくしている衛兵達がいた。
トオルは前回同様、衛兵にまた声をかけることにした。
「すみすみません…!ちょっと急ぎの用件で…!
ここからギルドへはどう行けばいいですか?」
「……もしかして君もギルドまで辿り着けない口かい?」
「………はい?」
「いやね…、先程から我々の詰所にギルドまで
辿り着けないとの相談が相次いでね…。
それで我々が実際に調査に乗り出してみたんだが、
驚いたことに、本当にギルドまでどう頑張っても
辿り着けないんだ。」
トオルはそれを聞くと、焦り気味に聞き返す。
「そんな…!げ…原因は?わかってるんですか?!」
「十中八九、
魔法かスキルの類だと我々は踏んでいる。
実際、
ギルド周辺の地域に魔力干渉の痕跡を確認したしな。
今は、誰がどんな力を行使しているのかを魔力班が
調査しているところだ。」
「そんな…、解決は…解決はいつするんですか?!」
「申し訳ないが…まだなんとも…
我々もできるだけ早く、この事態を収集できるよう
行動しているので、しばし待っていただきたい。」
やばい…そんな…!
こっちはただでさえ時間がないんだぞ…!
「クソ…!」
「…あ!待ちなさい!!そっちは危険だ!
解決するまでここで待っていなさい!おいっ!」
トオルは衛兵の忠告を無視し、
ただひたすらに、ギルドへ向かって走り出した。
クソ…クソ…クソ!
走りながら考えろ! 頭を回せ…!!
一度はアリシアと一緒にギルドへ辿り着けたんだ…!
その道を思い出せ…!!
一度辿り着けたんだ!
辿り着けないなんて事はないはずだ…!
トオルはそう考え、ただ我武者羅に、
先の分からぬ道を走り続けるのであった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
スロット1にセーブしてから1時間経過。
日時:聖星暦4012年5月8日14時38分4秒
突然、あたりに爆発音が響き渡る。
その瞬間、街の景観が歪むのをトオルは自覚していた。
なん…だ?今の音は……?
………?! まさか?!
最悪の想像をしたトオルは、
急いで爆発音がした場所へと走り出した。
……………
トオルの目に、絶望が映る。
そこには、無惨にも弾け飛んだギルドの建物があり、
辺りには血と焦げの、
鼻につく臭いが充満していたのであった。
3話の最後まで読んでいただきありがとうございます!
よろしければブックマーク登録、感想などで是非、
応援いただければ幸いです!
作者の励みになります!!