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8-1:約束の時計台

 それから俺たちは玉座の間に案内された。

 広い玉座の間はいくつかの段差で別れいて、一番高い場所に玉座があり、そこに国王陛下が腰を下ろしていた。


 国王陛下はひじかけに頬杖をついて俺たちを品定めするように見ている。

 王さまってこんな人だったのか。

 てっき絵本に出てくるような、白いひげをはやした老人かと思っていた


 目の前にいる王さまは40代――いや、30代くらいの人に見える。

 渋みのある美系の男性。

 玉座に座っているよりも、酒場でカクテルを作っているほうが似合いそうだ。

 

 部屋の左右には何人もの兵士が整列している。

 俺もミーシェも緊張していた。


「騎士フィンです。陛下。勇者セフェウスとその仲間たちを連れてまいりました」


 フィンさんがひざまずく。

 俺とミーシェ、ルナも彼にならってひざまずいた。


 ……が、一人だけそうしない子がいた。

 アスカノフだ。

 彼女だけが平然とその場に立っていた。


「ア、アスカノフ!」


 慌てて耳打ちするも、彼女はまったく意に介さぬようすだった。


「我は偉大なる竜。人間の統治者に頭を下げる理由などあるまい」


 その瞬間、俺は処刑台に連れていかれる自分の姿を思い描いてしまった。

 さっと血の気が引く。

 おそるおそる国王陛下の顔色をうかがう。


「ああ、フィンから聞いた。お前がアスカノフとかいう竜か」


 意外にも、国王陛下は気にしていなかった。

 むしろ面白そうに笑っている。


「いいぞ。俺も堅苦しいのは苦手だ。他の種族にまで王の威厳を示すつもりはない。気楽にすればいいさ」

「ではそうさせてもらおう」


 ほっと一安心。

 肝を冷やした。

 まったく、アスカノフめ……。


「エルリオーネの娘よ。両親は息災か」

「はい。お気遣いありがとうございます」

「で、そっちの少年が勇者セフェウスか?」

「今はエリオと名乗っております」

「ならエリオと呼ぶか。うーん、見た限り普通の少年だな」


 にやにやしている国王陛下。

 俺も苦笑いする。


「いや、フィンが連れてきたお前を疑うつもりはないのだがな、勇者の末裔を自称するうさんくさい輩ってのはときどき現れるんだよ」

「お兄ちゃんは本物の勇者です」


 ミーシェが主張する。


「フィンの話だと伝説の聖剣『ルーグ』を抜いたのだとか。腰にさしているのがそれか? ちょっと俺にもさわらせてくれ。おい、フィン」

「はっ。エリオくん。僕に『ルーグ』を」


 フィンさんに『ルーグ』を差し出す。

 フィンさんがそに触れようとした――その瞬間、バチッと火花が起こり、フィンさんは弾き飛ばされた。


「フィン!」


 国王陛下が立ち上がる。

 フィンさんは尻をさすっている。


「いててて……」

「フィンさん、だいじょうぶですか!?」

「ちょっとしりもちをついちゃっただけさ」


 聖剣『ルーグ』が拒絶したというのか。勇者以外の人間を。


「真の持ち主にしか触れらえぬ剣。まさしく聖剣だな」


 国王陛下がパンッと手を合わせる。


「よし、エリオ。お前を勇者だと王の名において認める。領地を爵位をくれてやろう」


 領地と爵位!?

 いきなり大ごとになってしまった。

 つまり俺も貴族になるということか……?


「よかったですね、エリオさま」

「す、すごいよお兄ちゃん! わたしたち貴族だよ!」

「……」


 俺が返事をしようとした――そのときだった。


「ちょっと待ったー!」


 玉座の前に少女の声が響く。

 そして突如、俺たちの前に声の主であるツインテールの少女が飛び込んできた。

 黒い衣装を身にまとい、左目には海賊みたいな眼帯をつけている。

 だ、誰だ……?


「サラ王女!?」


 フィンが驚いたようすで彼女をそう呼んだ。

 王女……王女なのか? この子は。


「フィン。私を呼ぶときはソーサラーと呼べと言ったはずだが」

「は、はぁ……」

「私は漆黒の眷属たる者、ソーサラー!」


 びしっと決めポーズをするサラ王女。

 ……いや、ソーサラー。


「私は闇よりいでし漆黒の徒。お前が例の偽勇者か」

「サラ……」


 大きなため息をつくる国王陛下。

 心底呆れているのがわかる。


「父さんの仕事中に割り込むなといつも言ってるだろ。あとその眼帯外せ。恥ずかしい」

「これは私の膨大なる闇の魔力を封じ込めし漆黒の魔道具。外すわけにはいかない。それとも我が父よ、私の真なる漆黒の力を目にしたいと?」

「だーかーらー、そういう芝居がかったセリフやめろって言ってんだ!」


 ありふれた親子の会話だ……。


「あいかわらずですね、サラ王女」

「そうだね」


 ルナとフィンさんが顔を見合わせて苦笑いしていた。

 どうやら『そういう子』として有名らしい。

 サラ王女が俺のほうを向く。


「勇者を騙る偽者よ。我が漆黒の力によって闇に葬られるがいい」

「偽者……?」

「お兄ちゃんは本当に勇者ですっ」

「否。こいつは偽者だ。なぜなら真の聖剣は我が手にあるからだ!」


 サラ王女が手にしていた剣の切っ先を俺に向けてくる。

 実用には程遠い、華美な装飾が施された剣だ。


「これぞ勇者セフェウスの剣、グランカリバー!」


 ドヤッとした表情のサラ王女。

 ……。

 国王陛下に視線をやると、ひどい頭痛に悩まされているかのように頭を抱えていた。


「我こそが勇者セフェウスの転生した姿である!」

ここまで読んでいただきありがとうございます!


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皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!

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