表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184  作者: Nora_
9/10

09

「松苗、そっちを持ってくれ」

「うん」


 一緒の場所になったから薮崎くんとお掃除をしていた。

 小夏も染谷くんもいてくれればよかったのにとついつい考えてしまう。

 よく分かっていないから少し怖いのだ、でも、本当に少しだけど。

 だって怖い子なら染谷くんが一緒にいるのときにあんなに楽しそうにはしないだろうからだった。


「松苗はさ、紅汰と六反のことどう思っているんだ?」

「私? 私は大歓迎だよ? だって小夏が楽しそうだから」

「それなら紅汰のことだな、あの変化にはなにか裏があると思わないか?」

「うーん、それこそ小夏とか薮崎くんというお友達ができたからだよ」

「そうなる前にあいつはああなったんだけどな」


 とはいえ、なにかがあったかなんて聞ける仲ではないし、勝手に「色々なことがあったんだよ」などと躱されそうな気がするから動いてはいない。

 小夏にも同じだ、あの子はそういう相手の大事な情報をぺらぺらと話してしまう子ではないから挑戦するだけ無駄だ。


「よし、ありがとな」

「薮崎くんもね」


 でも、この分かりやすく存在している差に引っかかることはある。

 あのときはともかく、それ以外では普通に接していただけだから。

 もう苦手ではないみたいだし、少し頑張ってみようか。


「あ、松苗さん、お疲れ様」

「そ、染谷くんに聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「いいよ? あ、SHRが終わってからでもいい?」

「うん」


 大丈夫、告白をするわけではないのだから緊張する必要はない。

 しかもすぐに終わるし、聞きたいことを聞けたらささっと帰ればいい。


「さ、終わったよ、なにが聞きたいのかな?」

「染谷くんってあるときから分かりやすく変わったよね、だからなにかがあったのかな……って」


 座っている状態で彼が手招きをしてきたから顔だけ近づけると本当のところを教えてくれた、村重さんも小夏も知っているということも全て。


「ちょっと紅汰、なに綾に変なことをしているの」

「松苗さんが色々知りたかったみたいだから教えたんだ、そうしたらこうして固まってしまったけど」

「そりゃ顔を近づけられたらこういう反応になるでしょ」

「小夏のせいで距離が近くなってしまうんだよね」

「なんで私のせいなの!」


 ……そうか、あれは冗談ではなかったのか。

 彼はあの後に「これからはこれだから」と口にした、そして実際にそうやってやり続けたからこそ小夏ともこういう関係でいられている……と思う。

 いやでもだからって……。


「そういうのは駄目だよ」

「ごめんね、次は気をつけるよ」

「うん、守ってね」


 今日はもやもやして寝られそうになかった。

 だけど後悔をしたというわけでもなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ