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神代の魔導具士 豊穣の女神  作者: 黒猫ミー助
第二章 国立学校サンクタム・レリジオ
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◆2-12 魔猫ニグレド

クラウディア視点




 私達が春祭りを楽しんでいたら黒猫が飛び出して来て、突然人間の言葉を発した。


 「デーメーテール様!?何故この様な場所に?」


 皆が驚いていると、今度はパックが


 「そうだ!魔女ディメルじゃない、魔女デーメーテールだ!」と意味の分からない事を言い出した。


 何?この状況?流石に私でも意味が分からない。

 ガラティア、ガラティア起きてる?…


 …駄目だ、起きない…


 この黒猫は何? よく見ると尻尾が2本ある。

 魔猫? 魔獣か?


 人語を話す魔獣…凄く大きい魔力器(まりょくうつわ)!…なのに、感じる魔力は凄く小さい…近付かれるまで気付かなかった…


 パックが周りを飛び回りながら、

 「昔、森の友達に聞いたのを思い出した!豊穣の森の魔女、デーメーテール様が魔人を人形に封じた話! 聖ブリードの話が似てるんだ」と一人で話し始めた。


 黒猫がこちらを見ながら、

 「当然だ。そこにおわすデーメーテール様が、皆を困らせていた魔人を封じたのだからな」と話し出した。


 何故こちらを見る?


 黒猫が足元まで歩いてきて、ちょこんと座り、

 「デーメーテール様、まさか、この様な人里にいらしていたとは。参られるのでしたら一言、我が名をお呼び頂けたらお迎えに上がりましたものを…」と喋る。


 黒猫が…私に対して、丁寧に喋る…?


 私が「???」という顔で黒猫を見ていると、


 黒猫が「どうなされました?もしや、このニグレド、デーメーテール様のお気に触る様な事を申しましたか? それでしたら申し訳ありません。死して詫びるしかございませぬ」と言いながら…「はっ!この肉球()では自死が出来ぬ!」と絶望して地面をペシペシと叩いた。


 「…私は、デーメーテールじゃないわよ」と答えた。


 ニグレドと名乗った黒猫は「え?」と言って、私の顔をじっと見た。

 「またまた、ご冗談を…え?」と狼狽え始めた。


 「そういえば…背が縮みましたか?」と聞いてきた。

 私は「元からこのサイズよ」と答えた。


 「そういえば…胸も縮みましたか?」と聞いてきた。

 私は怒りながら「元からこのサイズよ!」と答えた。


 「まさか、別人?」と聞いてきた。

 「そうだと言ってるでしょ!」と答えた。


 「良かった。あのお美しいデーメーテール様が、こんなチンチクリンになったかと絶望して死んでしまうところでした」と笑った。

 「殺す!」私はニグレドに掴みかかった。


 ニグレドの首を締めている所を、

 「待った!待った!!待った!!!」…皆に止められた。

 …ちくせぅ…




◆◆◆




 人語を話す猫と妖精が飛び回るのを見て、耳目が集まり出したので、人の居ない場所に移って話を聞いた。


 「つまり、私がデーメーテールと言う人に似てると?」


 「似てると申しますか…なんと言いますか…」

 歯切れが悪いわね…


 「クラウディアが伝説の魔女にそっくりなの?」とルーナがニグレドに尋ねる。


 「良く見たら、外見が少し違う様にも見えるのですが…」


 「私はチンチクリンですからね!」

 …ふん!どうせ!


 「実を申しますと、ワタクシには人の姿形の違いは良くわかりませぬ。髪や目の濃さがデーメーテール様に似ているなという程度でして。正直、貴女とそちらの男の子供ですか?、ともあまり区別はつきませぬ」とニグレドが言う。


 「なら、何で、デミでは無くてクラウに?」とジェシカが聞くと、


 「魔素が…全く同じなのです。魔力器(まりょくうつわ)も。その上、髪と目の濃淡が同じ…そこの男の子供は魔素が違うのです」と言って、

 「だから、黒の森から街に遊びに来たのかと思いまして…」とニグレドは説明した。


 黒の森と聞いて、イルルカがピクリと動揺した。



 パックが「確かに魔素がみーんな、違うよねー。ただニンゲンには違いが分からないらしいよ!」とニグレドに話し掛ける。


 ニグレドは「そうなのですね…まさか、デーメーテール様と全く同じ魔素を持つニンゲンが居るとは思いませんで、誠に申し訳なく…」と前足で顔を覆って、顎を地面にこすりつけた。


 「伝説の魔女さんって、まだ生きてるの?」とルーナが聞くと、ニグレドは「勿論でございます。このワタクシ、デーメーテール様より申しつかり、街まで参りました次第でして…」


 「何を申しつけられたの?」とジェシカが聞くと、


 「勿論……?あれ……? 何故(なにゆえ)此処まで来たかを忘れ申した」と答えた。


 皆、ガックリと疲れた様にうずくまった。




◆◆◆




 「クラウディア様の魔素と外見は覚えました。もし、ワタクシに会って、この魅力的な毛皮をもふもふしたい時は、ワタクシの名を呼びながら『閉じた物』をお開け下され。気が向けば参ります(ゆえ)」と言って、走って行ってしまった。


 ジェシカが「『気が向けば』かい!」と突っ込んだ時には姿は見えなくなっていた。


 イルルカは「あんな魔獣も居るんだな…」と呆気にとられていた。

 イルルカは魔獣に襲われた記憶があるので、猫の魔獣とはいえ、実はかなり怖がっていたらしい。

 「なるほど…貴族も魔獣も色々居るんだな…」とディードもクラウディア達を見ながら呟いていた。


 「流石に、あんな魔獣は私も初めて見たわね。本当、パックみたいなお間抜け妖精から、お間抜け黒猫まで…色々ね」とジェシカが言うと、

 「誰がお間抜けだー」とパックが、ジェシカにポカポカと殴りかかる。

 「パックはちょっと抜けてるから可愛いのよ」とルーナが言うと、「そうだぞー、僕は可愛いんだ!」とパックが自慢した。


 …『抜けてる』と『魔獣』という所には突っ込まないのね…




 「しかし…春祭りに遊びに来ただけで、色々あり過ぎでしょ」とジェシカが独り言ちた。


 私はイルルカ達に「兎に角、この事は誰にも言わないでね。面倒くさい事になりそうだから」と言った。

 二人共、変な事に巻き込まれたく無いという様に、何度も頷いた。


 …偶然だったけど、狙ってたイルルカとも縁が出来た。

 …打算だけど、イルルカの能力で新しい魔導具の構想が捗るので仲良くなっておきたかったのよね。



 皆がイルルカ達に、「じゃぁ、またね」と言うと、二人は手を振って、ディードがイルルカに肩を貸しながら、二人並んで帰って行った。


 サリーはハンカチを口に当てながら二人をずっと見送っていた。サリーが僅かに震えている様子を見て、ルーナは「?」という顔をしていた。ジェシカは疲れた様に溜息をついていた。


 …あの二人のどちらかがデミちゃんなら、まぁ、サリーの気持ちが分からなくもないわ。ただし、相手がデミちゃん並の美少年に限るけどね!




 …黒猫が現れた時、ガラティアが全く目覚めなかったのは、あの猫の出している魔力が低過ぎて感じなかったから? 私もあの猫が飛び出して来るまで全然気付かなかったわ。


 …呼び出したい時は名前を呼んで『閉じた物を開ける』だったかしら?

 本当にそんな事で来るの?どういう原理の能力なの?

 ガラティアなら解るのかしら…


 気まぐれみたいだったから、来なさそうだけれども…



 しかし本当に、今日は色々あり過ぎて疲れたわ。


 早くホテルに帰って休みたい…



挿絵(By みてみん)

ニグレド

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