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神代の魔導具士 豊穣の女神  作者: 黒猫ミー助
第二章 国立学校サンクタム・レリジオ
23/287

◆2-10 入学手続きと保証人と

第三者視点


馬鹿な会話は息抜き…

アナタ疲れてるのよ…




 入学試験が終わり、翌々日には4人のホテルに合格通知が届いた。


 再度、4人は入学手続きの為に学校を訪れ、講堂で入学同意書にサインした。

 年間学費と入学金は、全てエレノアが事前に支払っていたと確認されたので、その場で手続きは完了した。

 4人分で、中央区で家が一軒買えるくらいの金額を一括で。



 しかし、寄宿舎の入居手続きをする時に…


 「何故ですか!? 私達は姉弟ですよ?」


 「例えご姉弟(きょうだい)であっても、男女同室は規定により禁止されています。貴女は女子寮、弟様は男子寮にお願い致します!」


 「貴女には人の情が無いのですか!?」


 「人の情だとかは、一切関係ありません! 規定によって決まっています! 姉弟だろうと父娘だろうと母子だろうと、例外はありません! 男女同室はありえません!!」


 「そんな…酷い…人の情も無いなんて…この…きちく…」


 「誰が鬼畜じゃ、こら!」


 「鬼畜…女職員…何それ背徳的…そそる…」


 「何この子…もうやだ…」


 何故か寄宿舎手続き担当の女性職員が、クラウディアと言い争っている。


 「私はこの子が居ないと駄目なんです! 一日一回はデミちゃん成分を吸収しないと…」


 「そこは、『この子は私が居ないと駄目なんです』じゃないの!? 貴女、お姉さんよね!? デミちゃん成分って何?麻薬!?」


 「デミちゃん成分というのはね、吸うととても幸せになる…あれ? 麻薬かな…?」


 「クラウ…流石に恥ずかしいから…やめよ…ね?」と、ルーナが窘める。

 サリーは他人のフリをして、離れた場所で庭を見ていた。


 「お姉ちゃん、いつもは同じ部屋に住んでないのに…急にどうしたの?」と、デミトリクスが聞くと、


 「うん? このお姉さんをからかってたの。良い反応してくれるんだもん」と無表情で答える。


 担当職員が、笑顔のままで殺気を振り撒きながらクラウディアを睨んでいる。ぷるぷると震えていた。


 「んなアホな事してると、手続きが終わらないでしょうが…この娘、時々ちょっとアレなんで、ごめんなさいね。

 デミトリクスは男子寮の個室。ルナメリアは女子寮の個室。ルナメリアの侍女用に侍女室を個室で1室。私と、このアレな娘で、二人部屋を1室で。お願いします」と、ジェシカがまとめる。


 「かしこまりました! 年間の食費と身辺世話代ですが、個室は金貨2枚ですので、全部で金貨8枚です! 一括でお願いしますね!」と怒りながら請求する。


 「はい、どうぞ」と、小銭でも出す感覚でクラウディアが金貨を出す。平民の年収の約8年分だ。普通の貴族の財力からしても高額だ。


 「このブルジョワが…」チッっと舌打ちして担当職員が領収証を書いた。



 「何で、怒ってるんだろう?」とクラウディアが聞くので、ジェシカが、スパーンといい音を立てて彼女の頭を叩いた。


 「あんたって…時々、凄いわよね…」


 「そんな…褒めないでよ…照れちゃう」と、全く照れずに叩かれた頭を撫でながら無表情で答える。


 「はぁ…天才と何とかは紙一重ってこれかしら…」と、ジェシカはため息をついた。



 落ち着いてきた女性職員が、ルーナを見て「こちらのお嬢様が、ルナメリア様でございますか? ルナメリア=キベレ様?」と聞いてきた。


 「私のルーナにナニを…」と、クラウディアが返事をしようとするのを、咄嗟にジェシカが止めて、「そうです」と返した。


 女性職員は「学校長が、一度ご挨拶したいと申しておりました。もし宜しければ、この後、お時間いただけますか?」と聞く。


 「私のルーナが欲しくば…」と、再びクラウディアが口を開こうとしたのを今度は、すぐさまルーナが止めて、「構いませんわ」と答えた。


 女性職員が「ありがとうございます。校長に話を通して参ります」と言って、受付を別の職員に任せて、足早に席を離れた。



 「ち…逃げられた」クラウディアが呟くと、


 「「いい加減にしなさい」」と二人が同時に突っ込んだ。


 「お姉ちゃんは、無邪気だからね…」と、デミトリクスが言うと、


 「無邪気じゃなくて、邪気しかないわ…」と、ルーナが溜息をつきながら呟く。


 「邪気だけじゃないわ。悪意もあるわよ?」と言うと、二人同時に、再びいい音でクラウディアの頭を叩いた。


 クラウディアが泣き真似をして、デミトリクスが頭を撫でていた。



 交代した職員は、我関せずと巻き込まれない様に無視して、次の申込者の対応をしていた。




◆◆◆




 4人とサリーと一匹が校長室へと案内された。

 案内に呼びに来たのは別の女性職員で、先程までクラウディアがイジメていた職員は居なかった。


 校長室に通されると、椅子に腰掛けた白髪白髭で小柄なお爺さんと、その横に立つ20代前半の女性が居た。お爺さんはニコニコしながらこちらを見ていた。

 案内してくれた職員は、一礼をすると、ドアを固く閉めて帰って行った。


 クラウディアは、女性の顔を見て、「なるほど」と言った。

 「貴女がエレノア様の…と言う事は…エレノア様は、権力と金と暴力と言ったのは…なるほど…」と独り言ちた。


 皆が「???」という顔をしたので、クラウディアが、

 「…ということは、私達の身元保証人になって頂いたのは、そちらのホウエン司祭様ですか?」

 「その通りです」と小柄なお爺さんが話した。


 そして、「貴方も…ですね?」と聞くと、ホウエン司祭は再度、「その通りです」と答えた。


 ホウエン司祭は「エレノア様からお聞きになりましたか?」と聞いたので、クラウディアは「いいえ。私が、恐らくそうだろうと予想していただけです」と言った。


 ルーナが「なんの事?説明して」と言うので、クラウディアは「彼等もトゥーバ・アポストロよ」と言った。


 皆が「えっ!」と驚いた。


 クラウディアが、「そこの女性、入試の時のイカサマに協力してくれた人よ。デミちゃんの魔力を低く見せる事に…ね」

 と言うと、ルーナが「トゥーバ・アポストロで無くとも、入試のイカサマに協力する人間は居るんじゃないの?」と聞く。


 「入試で魔力を高く見せたがる貴族は居ても、低く見せたがる貴族は居ないわ。今回、私の魔導具を預けてあったから、見る人が見れば、光りにくい魔導灯だとわかる。

 魔力を高く見せたがる貴族なんて掃いて捨てる程いるから、お金儲けのネタにはならない。だけど今回は『低く見せたがる訳あり貴族』よ。裏の人間なら、これが金になる事はすぐにわかるわ」と説明した。続けて、


 「こんな危ないイカサマに信用出来ない人間は使わないわ、エレノア様ならね。もし、お金で動く人間なら、入試の当日の夜には川に浮いてたわよ。」と言った。


「今回の入学に関して、エレノア様は『金と権力と暴力』と言ってたわ。てっきり裏の人間の伝手でも使ったのかと思ってたけど、暴力は『暴力機関』である笛の事だったのね」と、クラウディアが言うと、


 ジェシカが「確かにそれなら、その女性は私達の一員だろうけど。でも、それじゃ校長先生は?なんで?」と質問をしてきた。


 「これもエレノア様がヒントを出していたわ。『知っているけれど、知らない人』が身元保証人だと。

 私達は仲間達の事を、誰よりも『知っている』けれど、仲間が誰かは『知らない』のよね。

 それに、この状況でトゥーバ・アポストロである事が確実な女性と二人きりで待っていた。それに…」と続けて、


 「校長はルーナだけを呼んだのに、私達が一緒についてきた。それなのに私達に対して何も言わなかったわ」


 「エレノア様が『教皇が納得する』と言ってたでしょう。トゥーバ・アポストロの間でも『悪目立ちする』くらいに噂になっていると。だから、私達4人が一緒に居る事に違和感を覚えない人物は仲間である可能性が高いなと思って、保証人の件を確認したの」



 小柄な老人が拍手した。

 「ほぅ…まだ12歳の子供とは思えませんな。流石です。子供が我らの仲間になると聞いた時は、エレノア様の正気を疑いましたが、噂以上ですな」と言った。そして、


 「私はホウエン=バルバドス。司祭兼校長、そしてトゥーバ・アポストロの諜報部員を率いております」と、自己紹介をした。続けて、


 「(わたくし)はアルドレダ=バルバドスと申します。流石ですわ。フレイ様」と言う。

 それを聞いた、クラウディアとデミトリクスがピクリと動いた。


 「フレイ?」と皆が聞くと、「まだ、言ってはいらっしゃらないのね。ごめんなさいね」とアルドレダがニヤリと笑った。


 「あーー!そういえば!」と、クラウディアが叫び、


 「アルドレダ様。思い出しましたわ。私達お会いした事が御座いましたわね。親愛を込めてアビーと呼んでも宜しくて?」というと、

 デミトリクスが、「え? お姉ちゃん…この人…アビーなの?顔が全然違うけど?」と言った。


 「あーーー!そういえば!!」と、アルドレダが叫び、


 「クラウディア様、デミトリクス様とお話したい事がございましたわ。こちらでお話しませんこと?」と言って、二人を引き摺って行った。


 「…何故、わかりましたの…?」「エレノア様には…?」「この顔どうなってるの?」と3人でボソボソと話し出した。

 「何よ…バルバドスって…貴女…」「しー!ここではお祖父様の孫ですわ」

 部屋の隅でも結構聞こえる…


 「クラウディア嬢、あまり孫娘を虐めんで下さい。」と、ホウエン司祭が困った顔で話に入ってきた。

 「アルドレダも、『我が国の不利益にならない限り、お互いの秘密に踏み込まない』というのが鉄則だろう。余計な事は話さぬようにな」と叱って止めた。



 「さて、先程クラウディア嬢が説明した通り、私が貴方達の身元保証人となっております」と、ホウエン司祭が説明をし始めた。


 「しかし、私の身元保証だと目立ってしまうので、表向きは架空の人物達が、貴女達それぞれの保証人をしております。

 そして、その架空の人物達の存在を私が保証する形となっております。なので、一応、貴女達は自身の保証人の名前を覚えて於いて下さい。

 ルナメリア嬢は、お父上が直接、保証人をしているので必要ありません」と言って、名前の書かれた紙を配った。


 「貴族籍の保証人はエレノア様がなっております。教会所属は周囲の知るところですし、問題は無いでしょう」


 次にアルドレダが口を開き、

 「そして、皆様の専任担当教師は、(わたくし)、アルドレダが行います。宜しくお願いしますわね。『笛』関係の連絡も(わたくし)が全て仲介致しますわ」と、先程の慌てた様子はまるで無かったかのように、教師の威厳を出しながら自己紹介をした。そして、


 「学生同士で何か問題が起きた際は、『必ず』私を通して下さいませ」と、念を押した。


 クラウディアが「私の様な良い生徒が、何か問題を起こすとでも?」と言うと、皆が白い目でクラウディアを見た。


 気を取り直してアルドレダが、「エレノアからも言われていると思いますけれど、『生徒に対する殺人』はお止め下さいませ。ついでにクラウディア様は、教員や職員をイジメるのもお止め下さいませ」と釘を刺した。


 クラウディアは雑に「はい、はーい」と言いながら、窓の外を眺めていた。


 ホウエン司祭が溜息をつきながら、

 「貴方達の身分や戦力を誤解し、絡んで来る生徒も居りましょうが、出来る限り穏便にお願い致します」と、注意をした。そして、

 「今後何か、そちらから希望する事がありましたらアルドレダに申し付け下さい」と言う。


 すると、クラウディアが手を挙げて「早速ですが…」と、話し始めた。



挿絵(By みてみん)

ホウエンお爺ちゃん

意味の分からない内容はそのまま読み飛ばして下さい。

アビーの事は、今後説明されるキャラで、以前の話には出ていません。

挿話でも入れようかと思ったけど、ネタバレにならない入れ方が思い浮かばなかった…今後、もしかしたら、以前の話の間に挿し込むかもしれません。


次の投稿は5月1日の予定です。

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