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神代の魔導具士 豊穣の女神  作者: 黒猫ミー助
ソルガ原書
140/287

◆4-40 報告・連絡・相談

???達の会話

第三者視点




 とある真っ暗な部屋にて、円卓に座る複数の人々。


 影のように映るその輪郭は動きも少なく、この場を見た人に無機質な印象を与える。


 窓には分厚いカーテンが掛かっており、真夏の強い陽射しをほとんど遮っていた。

 僅かな輪郭しか映し出さないほぼ真闇の空間に、ノイズの入った様な乾いたお互いの声だけが響く。



 「クリオ…貴方…今迄報告も連絡もせずに何をしてたのよ…」

 豪華なドレスを着た女性が、対面に座る男性を(なじ)る。


 「報告ねぇ…昨日は一日快晴。この所、暑くて嫌になるねぇ…」

 若い貴族の服を着た顔の見えない男性が、相手の女性をおちょくる。


 「アンタ…私を馬鹿にしてんの?」

 「いえいえ…ソムニ姉様。今日も麗しぅ」

 ドレスを着た女性の顔は見えないが、怒りを我慢している様子は伝わってくる。


 「ふぅ…貴方も少しは『母様』に協力しようとは思わないの?少しは成長しなさい」

 「そういうのに興味ねーんだな、俺は。多分一生な」

 クリオと呼ばれた人物は、ヤレヤレといった気持ちを表現する為に、わざわざ重い腕をゆっくりと動かした。


 「おい…てめぇ…巫山戯(ふざけ)てんのか?」

 ソムニと呼ばれた女性は、突然ドスの効いた声で怒りを表現した。


 「いぇいぇ…実際の話、こちらは連絡手段が少ないもので…多少の報告不足は見逃して頂きたく…」

 「今ここに来てんだから、やろうと思えば出来るんだろうがよぉ?一月以上も連絡しねぇでよぉ!?

 どうせ、私達を面倒くせぇ女…とか思ってるだけだろーがよぉ!」

 ソムニが手を机に叩きつけると、硬い物同士がぶつかる様な音がした。

 


 カン…カン…カン…。

 クリオとソムニの間に座る女性が手を叩いた。…何故か乾いた音がする。

 言い争う二人を止める高位貴族の服装をした女性。


 「クリオが『母様』の為に動かないのは今更でしょう…。

 それで、ソムニウム。例の物の様子はどうなの?」

 手を叩いた人物が、喧嘩腰になった女性に声を掛けて話を戻した。


 「ふぅ…コピ姉様…全然駄目です。

 起動装置のプログラム自体が消去されてますわ。

 『遺物』の本体も何処にあるかすら分からないから、走査してプログラムを抽出する事も出来ない。

 コルヌアルヴァの間抜けな連中を操って探させているけれど、全く手掛かりが無いわ…。

 死んだ当主が図書室に火を放たなければ、文書から探せたかもしれなかったけれど…。焼け残った本も意味のない物ばかりでしたわ…」


 「ホーエンハイムの人間を、1人ぐらいは生かしたまま捕らえられていたら良かったのでしょうけど…。

 まさか、コルヌアルヴァの阿呆な連中が興奮して皆殺しにしてしまうなんて…。

 欲望に忠実なのは可愛いけれど、指示を忘れるなんてねぇ…。

 人間って本当に不完全な生き物ですわね」


 「予測が出来ないから人間は面白いんじゃん。

 コピ姉もまだまだだねぇ」

 「「……はぁ…」」

 クリオの軽口に、二人は溜息で応えた。


 「クリオ…アンタなら起動装置から本体を探せるんじゃないの?」

 「出来るかも知れないし、出来ないかもしれないな。『遺物』を持って来てくれよ」

 「動かせる物なら、アンタじゃなくて『母様』の所に直接持っていくわよ!」

 「なら無理だな。俺は自由に動けねえからな。ホーエンハイム領に入るなんて、周りの連中が許さねぇよ」

 「クソッ!帝国の『魔導遺物』も護り手がガチガチに固めてて近付けないし…『母様』に何て申し開きすれば…」

 ソムニウムと呼ばれた女性が爪を噛む動作をした。



 「ルディクラ…貴女の所から有能そうな魔導技師を派遣する事は出来ないかしら…?」

 コピと呼ばれた女性が、ソムニウム達とは別の所に座っている人物に向けて声を掛けた。


 「私も周囲の目があるから、下手にコルヌアルヴァとは関われませんわ。

 それに、あそこは今『魔素の冬』の真っ只中でしょう?魔素の雪は溶けたのですか?

 そんな場所に行きたがる技師なんて居るのかしら…」

 幼い高位貴族女性の服装をした人物が答える。


 「…もうホーエンハイムの『遺物』は諦めて、帝国の『遺物』を狙うべきじゃねーのか?姉ちゃん?」

 ルディクラと呼ばれた女性の隣の『何か』が男の子の声を発した。

 それは彼女と同じ様な、幼い貴族服を着た男の子だった。顔は他の人物と同じで、影になっていて見えない。


 「チェル…貴方は相変わらずお馬鹿さんね。

 ソムニウム姉様のお話を聞いて無かったのかしら?

 それとも、もう忘れちゃった?その頭の中には、おが屑しか詰まって無いのかしら?

 頭の代わりにゴミ箱でも置いておきましょうか?」


 ルディクラは男の子に、執拗に嫌味をぶつけるが、彼は全く気にしていない様子。


 「でもよ、でもよ!今回の計画が上手く行けば帝国の護り手も何とか出来るんじゃねぇの?そうすれば楽にアクセス出来る様になるだろー?」

 チェルと呼ばれた男の子は、ギクシャクと動く腕をパタパタと振って愉しそうに応えた。


 「貴方は、またホーエンハイムでの失敗を繰り返す気?」

 「今回は『侵略』じゃねーんだから、大丈夫、大丈夫!

 それに今回の計画が上手く行けば、俺達、国内外を自由に移動できる様になるぜ。楽しみじゃねーか?」

 男の子の楽観的な発言にルディクラは溜息を吐いた。


 コピと呼ばれている女性が解説した。


 「チェルターメン、確かに、今回の計画が上手く行けば自由に外国へ渡る事も出来る様になるでしょう。

 しかし、自由に外国に行ける事と、『遺物』に接触出来る事は別問題よ。

 …遺物を護る魔女は怖いわよ。魔女の弟子の件もあるしね…。

 それに、今は聖教国の学生達が居るせいで警戒が厳しいわ。

 帝国側だけでなく、あのクソ狸も護衛を多数出しているみたいだし。

 そして、今回はソムニウムの協力にも限界がある。成功確率は決して高くないわ」


 「コピ姉様の言う通りよ。

 貴方達の計画の日迄に()()()()を芽吹かせる時間はないわ。精々、知恵無し共をけしかける程度よ。

 …手伝いとして、多少の細工は施したけれど。あれは…あくまで気休め程度のサポートだしね。

 ティーバ・アポストロの連中の動きも不明だし、あまり目立ちたく無いわ…」


 「しょうがねぇじゃん。うちらの『依頼人』が計画の日にちを決めちまったんだからよ。

 ティーバ・アポストロは、コピ姉の(ネポテム)がアクセス出来るんだろ?そいつに内情を探らせれば良いじゃん」


 「…無理ね。ヘルメスの奴は元々あまり信用されてなかったから、大したアクセス権限を貰えなかったわ。

 孫自身もその事に疑問を持ってないから、過大要求をする操作は出来ないわ。会話が支離滅裂になっちゃう。

 …以前、ソムニウムの作戦に協力させた時からマークされていたみたいね。

 今は完全支配に移行して、本人の意識も封じている状態だから周囲からの違和感もより大きくなってるし、奴はこれ以上役には立たないでしょう。

 奴の家の周りでうろちょろしていた監視員も、大した事は知らされていなかったわ」


 「せめてさぁ…連中の人員構成だけでも分からねぇの?」

 意見を否定されたチェルターメンはいじけた声を出した。


 「監視員やヘルメスから聞き出した情報からだけで良ければ。

 エレノア司教は間違いなく構成員。

 そして北方教会区統括教会内にオマリーを含めて最低5〜6人は居るらしい…って事が分かった程度。

 どうやら構成員同士でも、誰が構成員かは知らないらしいわね。

 恐らくエレノアの司教補佐の中に居ると思われるから、今はヘルメスに監視させているわ」


 「お互いに知らない奴等同士で、よく組織として維持できるなぁ…。聖教国の魔人が余程優秀か、引き籠もりババァの入れ知恵か…」


 「明らかに私達(リベリ)を警戒してますわね…。

 しかし…帝国貴族が聖教国で教皇の密偵とは…普通の思考ではありませんわ…。エレノアといい、オマリーといい…帰属意識は無いのかしら?」

 話を聞いていたソムニウムが口を挟んだ。


 「それだけ、教皇の奴が食えない狸だと言う事よ」

 コピは、ギギギ…と動く手を目頭に当てて、溜息を吐いた。


 「そだ!コピ姉、何とか教皇を殺せねぇか?食えねぇ狸なら火をつけて沈めりゃ良い!」

 チェルターメンが名案だとでも言うかの様に、愉しそうに発言した。


 「無駄よ…あの狸自体、ただの人形。すぐに代わりが用意されるだけよ…」

 本当にこの子は考え無しなんだから…と呟いた。


 「めんどくせぇ、めんどくせぇ。人間って俺達より魔人達に近くねぇか?」

 チェルターメンは脚を投げ出し天井を見上げた。


 「そうねぇ…。私達の方が、よっぽどか弱い生き物よねぇ…」

 皆は、同意するように頷いた。




 


悪役のセリフって楽しいですよね。

続きます

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