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ラブレターの返信に代えて

作者: 宇宙人


 僕は恋をしているのだろうか。

 君に、「私たちの関係って何?」と文面で問われた時に僕はそれを考えた。


 僕は君といる時間が好きだ。

 まだ出会って間もない間柄だけれど、趣味が合うことは良く分かっていた。

 

 知り合ってから取り止めのない話をし続けて、昔遊んだゲームだったり、好きな作家の名前だったり、食べ物は麺類が好きなことだったり、とにかく色々な2人の共通点を見つけていた。


 話をするだけでもとても楽しい。

 それは僕が僕で、君が君だったからで、間違いのない事実だったけれど、恋をしていたからなのだと言われると違うと思った。

 それだけなら、たまに遊びに行く他の趣味友と変わらない。


 初めて一緒に遊びに行った日を思い出す。


 有名なモニュメントでの待ち合わせより、本屋の本棚の前での対面を望んだ君。

 万人受けしそうなデートプランより、本屋の散策だったり、キャラグッズの専門店だったり、そんな、誰かに自慢するためのデートより君と僕二人だけのおもちゃ箱を作り上げていくようなデートプランを選ぶ君。

 思いもかけない綺麗な歌声で、僕も好きな曲を歌い上げた君。

 

 別に予想外の事件に巻き込まれて二人の絆が深まったとか、意外なバックボーンが語られてこの後の物語の伏線になるだとか、そんなことはまるでなかったけれど。

 でも、とても印象に残るデートだったと思う。


 だから、デートの終わりどころかデートの最中に次のデートの約束を取り付けたんだ。


 とはいえ、僕は男だから。

 君が嫌いそうな、落とせそうな女の子に唾をつけておこうとする下心があったと思う。

 そのやましい気持ちは、きっと君に恋していると言い切れていたら抱かなかったはずだ。


 スマホでの君のやりとりを思い出す。


 本当に取り止めのない話を、僕と君は何度も交わした。


 男は女の子の話を聞き、共感してあげなさい。

 デートマニュアルだとか、恋愛ハウツー本にはだいたい出てくる言葉だ。

 このセオリーを守るためには僕からの発言は控えめに、君の言葉を引き出すような質問だったりをやり取りの中に散りばめるのが正道だ。


 自慢になってしまうけれど、僕はたぶん人より論理だった行動は得意だ。

 セオリーを学び、セオリーに従い、セオリーを分析し、セオリーを使う。十分に学んだセオリーを身につけて局所的に効率的なアレンジを考え、それを実践する。


 でも、君とのやりとりでそういうことはいつの間にかしなくなってしまっていた。

 本当に僕が君に恋をしていて、君を手に入れたいと願うなら、そんな打算的な努力も続けようとしていたんじゃないだろうか。

 僕は本当に君に恋をしているのだろうか。


 思い出したものを振り返って考える。

 どれも僕が君に恋をしている証明にはなっていないどころか、僕が君に恋をしていないのではないかと疑わせてくる。


 だけど何故だろう。

 疑えば疑うほど、どんどん君のことを考えるようになっていく。


 ああ、そうか。 

 君と話をする時、楽しいと思う感情が。

 初デートの時、また会いたいと願ったあの気持ちが。

 スマホでのやり取りで、君との自然体のやりとりが心地よく思えたことが。


 きっと、そのどれかが恋の理由ではないけれど、それらを僕に抱かせる君こそが、僕の恋の証なのだろう。


 自分の気持ちを100%理屈で証明できはしないけど。

 でも、君との関係性を進めることができたら。

 もっと、君に恋をしていると言える理由を集めることができると思った。


 君と恋人になりたい。

 君に恋をしているということをもっともっと確かめたい。

 いくら確かめても確かめきれないそれを、もっと確かにしていきたい。


 だから僕は僕の気持ちを、君からの勇気ある文面ラブレターの返信に代えて届けに行こうと思う。


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