話し合いの結果
扉越しにラニーニさんの過去を聞き、私はこのタイミングで突入するか迷っていた。今向こうの部屋に突入してしまえば、今の会話を聞いていたのがバレるのは必然だ。
かといって、今の話を聞いてもなお、ラニーニさんたちをここから追い出すという意見が出るのなら……やっぱり私は、賛成できない。
うーん、もし追い出すって話になったら、私は……
「うーん……って、いててててて!」
考え事をしていた最中に、髪に猛烈な痛みが。そちらを向くと、サニラちゃんが私の髪を引っ張っていた。さっきお兄ちゃんの髪引っ張ってたのに、髪好きだな!
って、そうじゃなくて、千切れる千切れる……!
「はは、その子、お前とも遊んでほしいんだな」
「わ、わかった、わかったから! とりあえず手を離して!」
「わはは、わーい!」
……そういえば、この子あんまりしゃべらないな……もしかして、つらい境遇の中であんまり話さなくなってしまった、とか?
私と同じ年くらいに見えても、その精神はまだ幼いままなのかもしれない。まあ、私もまた見た目通りの精神年齢じゃないんだけどね。
「仕方ない、遊ぼうか」
結局そのまま、サニラちゃんが離してくれないので遊ぶことに。くっつかれたままじゃ話を聞けないし、お兄ちゃんにも不審に思われちゃうし。
……部屋の扉が開いたのは、それから少し経ってからだった。
「お待たせ、三人共。……仲良くなったみたいだね」
扉を開けたダーネスさんは、私たちの姿を見て苦笑いを浮かべる。なんせ、今私とお兄ちゃんは、サニラちゃんに髪や頬を引っ張られている状態なのだから。
仲良くなったというより、おもちゃにされている感は否めないのだけれど。
「……はなひ、おあっふぁ?」
「あぁ、話は終わったよ。結論から言うと、ラニーニさんとサニラちゃんはこの村に住んでもらって問題ない、ということになった」
にこやかに微笑むダーネスさんの口から紡がれた言葉は、私にとって望んでいた言葉だ。二人を、この村に住まわせてくれる……!
二人の境遇に同情したのか、他に理由があったのかはわからない。それでも、結果として二人の在住が決定した。
その後、村人に決定事項が話された。村人は不安そうであったが、ダーネスさん含めこの場で決められたことに異議を唱える人はいない。ここでラニーニさんの過去を明かしこそしないため、どうしてこういう答えになったのかわからないようだが。
「とにかくこれで、これからも遊べるってことだね!」
きっと、二人には心休まる日なんてなかったのだろう。だからこそ、ここでは羽を伸ばして暮らしてもらいたい。
他のみんなはまだ動揺してるし、大人であればあるほど受け入れがたいだろう。特に、さっきの話を聞いてなかった者には。
ならばせめて、私がしっかりしなければ! 私から率先してサニラちゃんと遊べば、他の子も遊んでくれるはずだ。お兄ちゃんだって、さっきの時間でそれなりに仲良くなったはずだし。
「これからよろしくね、サニラちゃん! ラニーニさん!」
「う、うん……」
ラニーニさんはこんな対応されるのが初めてなのか固まっているし、サニラちゃんもおずおずとしている。
ラニーニさんはまだしも、サニラちゃんは同年代の子とこうして接するの自体、初めてかもしれないし。ちゃんと、ここに来て良かったって思えるようにしたいな!
このときの私は、新しい仲間が増えたことに喜び、このまま順調にみんなが仲良くなれるのだと……そう、思っていた。