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転生エルフの復讐劇  作者: 白い彗星
平和な日常
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エルフ族と人間族



 この世界に生まれて、もう数年が経った。こうして思い返してみると、長かったような日々はあっという間だったような気がした。


 その間、家にある本でこの世界の知識を学んだ。日本語とも英語とも違う、見たことのない文字だったが、それは小さい子供特有の学習能力で今やそれなりに読むことができる。


 まあ本といっても、ほとんどが絵本とか小説で、この世界の成り立ちなんて小難しいものはなかったけど。私としても、別に世界の歴史について興味があるわけじゃないから、別にいいんだけどね。


 この世界の、最低限の知識があればいい。そのためには、やっぱり本よりも誰かに聞くのが一番だったりするのだろうか。



「うーん……エルフだけの村、か」



 ここは、エルフの村……エルフだけが住んでいる村。他の種族、異世界ならば獣人ってやつもいるのかもしれないし、なにより人間の存在はいるに違いない……しかし、この村では本当に、エルフ以外の種族はいないのだ。


 多分、この森の外にいるんだとは思う。けれど、森の外には出たことがない。このエルフの村は、巨大な森の中に作られている。何度か森の外に出ようとしたことはあったけど、それは両親に止められた。


 ここでの生活は、基本自給自足……だけど、どうやら村の大人数人が数日か数週間に一度、森の外に出ていろいろなものを調達してくるようだ。子供は、誰も出たことがない。


 森の外に子供が出るのは、危険……そう母さんに言われたのは、森の外に出てみたいと言った三回目のことだっただろうか。



『ダメよレーナ、森の外は怖いものでいっぱいなんだから』



 やんわりと却下されて、私はそれ以上聞けなかった。けれど、大人たちの会話を盗み聞いていれば、バラバラながらピースが集まっていくわけで。


 この世界には、エルフ族の他に人間族や獣人族、といった数々の種族が存在している。が、エルフ族は他の種族から……いわゆる迫害を、受けているらしい。


 要は、人間族獣人族に追いやられたエルフ族が、森の中にエルフだけの村を作った……それが、今のこの村らしい。名前はない。外と交流があるわけでもないし、わざわざ名前をつける必要もなかったようだ。


 迫害の理由というやつは、わからなかったが……こういうのを物語で考えるならば、遥か昔にエルフ族と人間族獣人族の間でいざこざがあり、それが現在まで尾を引いているとか。それか……見た目で不気味がられたとか、そんなところかな。



「エルフと人間、か」



 エルフ族は、この村にいる数しかいない……わけじゃあない。どうやらエルフ族ってのは、この村にいる以外にも、いるらしい。ただ、おそらくそのどれもが私たちと同じように、森の中に住んでいる。


 なんで森の中なのかというと、エルフという種族は自然豊かな場所となにやら相性がいいらしい。自給自足もできるし、住む場所さえ整えてしまえば、そう不便な場所ではない。


 ただ、好んで森の中で暮らしている……というよりは、森の中に追いやられて、という表現が正しいかもしれない。子供たちは多分このことを知らないから、今の生活に不満はない。大人たちにも不満はなさそうだし、私だって真実を知ったからって、どうってわけじゃない。


 ただ……元人間の身としては、エルフ族を迫害して森の中に追いやっている、なんて、あんまり気持ちのいい話じゃないよなぁ。



「共存、できないもんかね」



 一人、呟く。森の中と外とで分かたれていては、それぞれの交流もあるわけない。これでは共存なんて、夢のまた夢だ。


 外に出る大人だって、今考えてみればフードを被っている。多分人間の里に行って食料物資等を調達しているのだろうが、あれはおそらく、エルフ族だとバレないよう、髪や耳を覆い隠すものだろう。


 そんなことをしないと、人間の前に出られないなんて……なんか、この世界のエルフってやつは、思いの外生きづらい生き物なのかもしれない。

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