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転生エルフの復讐劇  作者: 白い彗星
平和な日常
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エルフとしての生活



 小さいと、意外とやることはない。外にも出れない、親もいつも構ってくれるわけではない、ダンお兄ちゃんも毎日遊びに来てくれるわけではない。


 普段はご飯食べて、ごろごろして、大抵いつも眠いので寝る。なんて怠惰な生活……こんな理想のごろごろ生活、一生過ごしていたいかも……と最初のうちは思ってたけど。


 まず言葉が出せないので意思疎通が取れない。異世界であるこの世界にはパソコンなどのネット機器がなく、暇をつぶす手段がない。極め付きは、自分の意思とは関係なくトイレが我慢できないことだ。


 トイレまで行こうにも、この体では我慢なんてものができないので、尿意または便意が来ればそのまま漏らしてしまう。元の世界で言う、おむつのようなものがここにもあり、それを履いてはいるけど……その、漏らした後の処理をされるのが、たまらなく嫌だ。


 これが赤ん坊ならばなにも気にすることはないんだろうけど、あいにく私は生前の精神年齢のまま赤ん坊になっている。だから、こんな状態で下の世話をされるのは……すごく、屈辱だった。


 怠惰最高とか思っててごめんなさい早く大きくなりたい……そう願いながら、日々を過ごしていた。


 そして……



「おーい、そっち言ったぞレーア!」


「うん! ……えい!」



 あれから……私が転生してから、五年の月日が流れた。日々、この体のありがたさを実感している。あぁ、しゃべれるの最高! 体を自由に動かせるの最高!


 どうやら長寿であるエルフだが、赤ん坊の体から子供の体……いわゆる思春期の体に成長するまでは、人間の体と年月さほど変わらないらしい。


 それから個人差はあれど、基本的には赤ん坊→少年少女→大人の体→お年寄り……と、見た目と中身の熟年度は同じようだ。



「そ-、れ!」



 で、自由になった私はというと、こうして村の子供たちと遊んで……遊んでもらっている。この村の中では、私が一番年下だから、仕方ないけど。


 子供の体というのは不思議なもので、長時間遊んでいても全然疲れない。その代わり、夜すごい眠くなるけど。



「あたっ」



 私が弾き返したボールが、キャルの頭に当たる。落ちてくるボールが当たっただけだからそんなに痛くはないはずだけど、キャルは涙目になっている。


 エルフは基本、みんな金髪緑目と、個人差がないようあな容姿をしていると思っていたが……実は、そうでもない。元々日本人だった私だけど、考えてみればあっちだってほとんどみんな黒髪に黒目と、似たような見た目だった。その中で、それぞれ個性を出していく。


 このキャルだって、くりくりと大きな目がとてもかわいい。すぐ涙目になっちゃうようなところも。



「はは、キャルはいつまで経っても泣き虫だな」



 落ちたボールを拾い、大きく口を開けて笑うのはダンお兄ちゃん。私はいつしか、ダンのことをそう慕うようになっていた。やっぱり、小さい頃から遊んでくれてたからかな。


 そのダンお兄ちゃんが、キャルの頭をわしわしと撫でる。少し羨ましいと思ってしまうのは、なんでだろう。



「も、もう、やめてよ兄ちゃんっ。みんな見てるし……」


「ははは、いつものことだろう」



 その兄妹のやり取りは、もはやおなじみのものだ。そう、ダンとキャルは兄妹だ。それも、キャルは私より少し年上。


 なるほどだから、私に対して世話焼きだったのか……と納得したものだ。キャルは私と変わらない背丈だが、ダンはまああれから背も伸びたみたいだ。私より頭一つ分大きいかな。


 そんな兄妹のやり取りを見て、みんなが笑う。タレット、ウーム、コーニャ、ザン、ルイ……村の子供たち。ここエルフの村は、森の中にある。そこで、エルフの一族は暮らしているのだと、教えてもらった。


 当初、私は元の世界と異世界の言語の違いはどうなるんだろうと思っていた。だけど、そんな心配はない帆と度、この世界の言葉も文字もすんなり理解できた。


 多分、生まれた時からずっと見聞きしていたからだろう。ここが異世界妥当とそうでなかろうと、変わらない……赤ん坊というものは、学習する生き物なのだから。元の世界でだって、赤ん坊に言葉を教え、赤ん坊は覚えていく……それは、異世界でも同じこと。


 だから、当たり前のように、文字や言葉を覚え、扱うことができた。今となっては、日本語がどんなだったか思い出せないほどだ。もう、使うこともないだろうけど。



「ほーら、泣かないのキャル」


「……私の方がお姉ちゃんなんだけど」


「じゃあ、もっとお姉さんらしくしてほしいかな」



 こうして、キャルの頭を撫でるのも、もはや日常風景だ。それをキャル本人は不服そうにしても、振り払うことはない。


 確かにお姉ちゃんではあるけど、あんまり歳も変わらないし……なんか、妹みたいなんだよな。



「いいなー、俺も俺も」


「私もー」


「……ちょっとー」



 いつの間にか、みんなでキャルの頭をなでなでしていた。癒され系妹キャラ……って感じだ。


 いやあ、なんて平和なんだろう。家にあった本によると、エルフは魔法ってものを使えるらしい。魔法、魔法だって……エルフに並ぶ、ファンタジーものの王道!


 魔法のことも、いやこの村のことだって、まだよく知らない。家族のこと、一緒に遊ぶ子供たちの名前……そんなレベルだ。もっと、いろんなことを知りたい! 村のことも、森の外のことも、この世界のことも!


 それに……エルフの世界だけじゃない。きっと、人間もいるはずだ。見てみたい、会ってみたい。まだまだ、知りたいことはたっくさん、あるんだから!

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