表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
討伐されたい転生魔王〜弱すぎ勇者を強くする  作者: ただのこびと
第一章 始まりの二日間
9/100

【勇者視点】1

勇者視点での話、前編です。

 話は少しだけ過去に遡る。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私は勇者。

 皆から勇者と呼ばれている。


 わたしはクヴァリル侯爵家の次女として生を受けた。

 そして普通の貴族の娘として育てられた。

 普通と言っても侯爵家の娘として恥じないようにと躾はかなり厳しかった。

 礼儀作法や勉強も子供の私には厳しく、使いやすい利き手である左手を使ってはいけないと無理やり右手を使うことを強制されるのはかなりの苦痛だった。

 それでも着る服は綺麗な物ばかりだし、食べ物も美味しい物ばかりの贅沢な生活には満足だった。

 当然、親の決めた顔も知らない許婚もいた。


 わたしの人生が劇的に変わったのは十二歳の洗礼式の時。


 貴族の子供は十二歳になると教会へ行き洗礼を受ける。

 わたしも他の子と同じように教会で洗礼を受けたのだが、教会で一番偉い教皇様から神の神託を承けたと言われて、後日父に連れられて王宮へと向かうことになった。

 そこで王様と面会することになり、聖剣を手に取った。


 その日から私は勇者になった。


 王様から直々に魔王の討伐の使命を受けた。

 勇者の使命は魔王を倒すこと。


 私はその日より王国騎士団の所属となった。

 毎日毎日泥まみれになりながら訓練を受けさせられるようになった。

 勇者として恥じないようにと周りの期待に応えようと必死に努力した。

 どんなに努力したところで元々貴族の娘だ。

 身体など鍛えた事もなければ運動をしたこともない。

 力はもとより体力もまったくおよばない。

 幼少期より毎日訓練を続けている屈強な男達についていける訳はなかった。

 非力さを馬鹿にされ笑われる毎日だった。

 それでも非力な身体を必死に鍛えた。

 そんな毎日になった。

 それでも、こんな非力な私でも剣での打ち合いになると聖剣を握る私に敵う者はいなかった。

 実践で魔物と戦うようになった時も周りの誰よりも魔物を倒した。

 その頃には私を馬鹿にする者はいなくなっていた。

 聖剣を持つ者が勇者。

 それからの日々も必死に訓練を続けた。


 私はみんなを守るためにこの力を使おうと決めた。

 いつか魔王を倒すその時まで。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 ウルカラン大陸東部。


 ラストール山脈。

 大陸を南北に大きく縦断する巨大な山脈であり、人間が越える事は不可能とされている山脈だ。

 山脈の頂上はドラゴンの群生地となっており、ここを越えようとする者はいない。


 そのラストール山脈の西側の麓にある街道沿いの地に私はいた。

 山脈沿いの麓にある森に住む魔物達の活性化がはじまっていると情報が入ったからだ。


 魔物の活性化とは、魔物の異常行動の総称だ。

 もっと簡単に言うと魔物が凶暴化する現象。

 普段は縄張りから出ない魔物が、突然縄張り以外の場所まで行動範囲を拡げたり、異常繁殖がおこり数が爆発的に増えたりする。

 今回はその兆候を目撃したと情報が入ったのだ。


 通常の魔物であれば、無闇やたらに刺激したり、無理な土地開発をしたりして生態系を乱すようなことをしなければ、魔物は縄張り内におさまり、人間は安全に暮らせる。


 だが、活性化がおこればどうなるかはわからない。

 魔物がある日突然、街や村を襲うこともある。

 そのため魔物の活性化の兆候が見られるとすぐさま討伐隊が結成され活性化した魔物の駆除へと向かうのだ。


 当然、勇者の私にも招集がかかったわけだが。


「魔物の状況ってどうなんですか?」

「街道沿いにはあまり目撃情報がありません。」


 おかしいなぁ。

 活性化の情報があったという割には魔物の数が少なすぎるよなぁ。


 目撃情報があったのはこの辺り。

 この数日のうちに移動しているのか?

 こんな短期間で一斉に巣を離れて移動するなど聞いたことがない。

 活性化したとしても巣を中心とした縄張りから少しずつ行動範囲を拡げるばず。

 危険ではあるが捜索範囲を徐々に奥へと進めていくしかないかなぁ。


 いまの状態は通常の護衛任務と変わらないぐらいに暇だった。

 時々出てくる魔物を討伐する程度。

 私が出る前に発見した者が倒していた。

 あまりに穏やかな様子だった。


「大変です。南の村の近くに魔物の集団が現れたそうです」


 えっ、街や村が襲われないようにと目撃情報があったという巣の近くで陣を構えていたのが裏目にでた。

 まさか巣を捨てて直接村を襲いにいくとは。


「皆さん、急いで村へむかいましょう」

「「はっ!」」



 到着した村では数多くの狼の魔物が村の周辺を埋め尽くしていた。


 村の周囲は柵で覆われており、唯一の出入口である村の入り口の外では、村の中に入れまいと兵士や冒険者、村の男達が必死に防衛にあたっている。

 休むことなく襲ってくる魔物を懸命に追い払っていた。


「ここで防ぐんだ、村には入れさせるな」

「わかってるよ、くっ!」

「数が多すぎんだろ」

「けが人は中に運べ!」

「動けるやつは前に出て戦え!」

「くっそ、数が全然減らねぇなぁ」


 声を出し迫りくる恐怖に負けないよう鼓舞しながら戦い続けているが、少しずつ負傷も増えていく。

 終わりが見えない戦いに絶望している住人もいる。


「よく耐えてくれました、皆さん!」


 私は村の人達に声をかけるのと同時に雷の魔術を放った。


 ズドォォーーン!!


 村を取り囲む魔物の一画に巨大な白い雷を落とした。

 その凄まじい威力で群れの四分の一ほどを一瞬にして消し炭にする。


 勇者(わたし)にしか使えない白き雷属性の魔術。


「加勢します」


 私は一気に魔物の群れへと突っ込み、一振りで何体もの魔物を斬り伏せる。


 村に攻め入ろうとしていた魔物達は背後をつかれる形となり反応に遅れている。

 その隙きをつき、同時に何体もの魔物を斬りふせていく。

 たった数秒で魔物は半壊した。


 私は村の入口まで一気に駆けると防衛にあたっていた兵士や冒険者に声をかける。


「手の空いている人は怪我人の救出と手当をお願いします、戦える人は引き続き入口の防衛を頼みます」


 それだけを告げて数が多そうな場所へと剣を振りながら突撃していく。


 守るため、ひたすら目の前の魔物を斬り続ける。

 剣を振って振って振って。


 半時もしないで魔物の群れは全滅した。


「ふー、怪我人の状況はどうですか?」


 魔物の全滅を確認すると軽く一息吐き、怪我人の状況を確認する。


「重軽傷者あわせて五十名以上です」

「なるべく一箇所に集めてください」


 怪我人を一箇所に集めてもらうと、聖剣を構え、精神統一をして『精霊』に呼びかける。


 聖剣へ小さな光が集まっていき私を中心に魔法陣を形成する。


集団最上級回復エルエクスヒール


 辺り一帯が光に包まれ範囲内にいた全員の怪我を癒やしていく。


 みるみる傷口がふさがり顔色が悪かった人達も生気を取り戻す。

 少しずつではあるが倒れていた者達が嘘のように起き上がりはじめた。


「ふう、これで一安心ですね」

「「「うぉぉーーー!!!!」」」


 村中から歓喜の声があがる。


「奇跡がおこったぞぉ!」

「ありがとうございます勇者様!」

「神の生まれかわりだぁ!」

「さすが勇者様、ありがとう!」


 村中から感謝の声が上がる。


 その中から、長老らしき人が前に来て頭を下げながらいった。


「この度は村のためにありがとうございます。おかげで村は救われました。たいしたもてなしは出来ませんが、お礼に一晩泊まっていってください。腕によりをかけて食事の準備もさせていただきますので」

「いえ、村のご迷惑になりますから、私達は引き上げますよ。」


 グーーーー。


 間の抜けた大きな音が鳴り響いた。

 断ったものの『食事』と聞いたせいかタイミング悪くお腹が鳴った。


「ははは、すっごいお腹がすいてるんですよ。お世話になります。よろしくお願いします」


 照れながらも勇者は村の人達に甘えることにした。



人族最強の勇者。

お昼にもう1話更新します。



【読んでくださった皆様へ】


↓にある☆をクリックすることで評価ポイントを入れることが出来るそうです。


この作品を読んで少しでも面白いと思ってくれた方、ちょっとでも続きが気になると思ってくれた方、出来ましたら、評価ポイントをぜひよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ