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討伐されたい転生魔王〜弱すぎ勇者を強くする  作者: ただのこびと
第五章 奴隷開放
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エマ

 

 この世界から奴隷制度をぶっ潰して全ての奴隷を開放する。

 震えながら眠るエマを抱きしめながら、そう決意した俺は今後の事を考えていた。


 奴隷を開放するだけとは単純に国を支配する頭を潰すだけでは意味がないだろう。

 結局は行く宛の無くなった奴隷がまた別の所で奴隷になるだけだろう。


 奴隷だった人達が安心して生きていける環境を作らないといけない。


 まずは住む場所と仕事の確保。

 最低限個人で生きて行ける分ぐらいは稼いでもらう必要がある。

 直ぐに働くスキルがない者もいるだろうから教育する支援施設は必須だな。

 帝国の中にどれほど空いた土地があって、どれくらいの数の住居や、支援施設を作れるか。

 俺が見た感じだと城壁がある分、中はギュウギュウになってるんだよなぁー。


 いっその事、新しい国を作ったほうが早そうな気がする。


 帝国の隣に新しい国でも作ってやろうかなぁ。

 護衛の意味も含めて基盤が安定するまで配下を一定数住まわせてもいい。


 それはそれでヤケになったアホのせいで無駄な戦争の引き金になって面倒くさいか。

 無駄に血が流れるのは嫌いだ。


 となると帝国という国の基盤は残しながら今の体制を退け、奴隷を開放させる。

 基本的な形はこれだろうな。

 土地は根回しさせて買い占めるとして、問題は奴隷を扱う商人からの反発がある事か。

 奴隷以外で稼げる方法として、魔族に狩らせた魔獣を卸させるか。

 これでいくらぐらい儲かるかはわからないが持ちかけてみるのはありだな。


 まぁ、何にせよ武力行使の前に話し合いだな。



 そうと決まれば行動だ。

 とはいえ震えながら眠るエマを置いて行くのは気が引ける。


 そっとベッドから出ようとしたら、服をギュッと掴まれた。

 はぁー、起きるまで待つしかないか。


「ディアブロ、いるな?」


「はい、なんでございましょうか」


「魔獣狩りの件で人族と交渉させていた者がいたが、どうなっている?」


「各国共に話しは最終調整に入っております」


 思ったよりも早く話しは進んでいるようだな。


「そいつ等を使って各国の王に奴隷制度の撤廃を約束させろ。奴隷の安全と生活の保証も含めてだ」


「かしこまりました」


「これは魔王としての命令だ。賛同する国にはこちらも国をあげて協力をする。だが逆らう国があれば、俺に伝えろ。直接話しに行く」


「御意」


 さてと、これでどういうリアクションが帰ってくるか。

 まずは要となる三つの大国が応じれば小さな国は直ぐに奴隷制度を撤廃するはずだ。

 そんなにすんなり行くとは思えんが、そこは俺の配下を信用しよう。



 俺はしばらくエマをあやしながら眠った。



 目を覚ますと目の前にニコニコ微笑むエマの顔があった。


「パパ、おはよー」


「おはよう。少し顔が近すぎるな」


「パパの顔見てたの」


「そうか。とりあえず起きるぞ」


「はーい」


 一生懸命元気でいようとしている。

 不安を取り除き、この子が当たり前のように日常が過せるようになるにはどれ程時間がかかるのだろう。


 俺は寝室を出ると玉座の間へと転移した。


「おはようございます、アルス様」


「ああ」


「おはようございます、ディアブロさん」


「おはようございます、エマ様」


 本当にきちんと挨拶をする娘だ。


 さてとセレネの様子でも見てみるか。

 俺はディアブロが用意してくれたモニターでセレネの様子を確認した。


 相手にしているのは体長二十メートルはあるエンシェントドラゴン。

 シードラゴンと言うらしいがシードラゴンと聞くとタツノオトシゴが頭に浮かぶんだが……違ったかな?

 まぁ、いい。こいつはシードラゴンだ。そういう事で納得しよう。


 見た感じだとわかりづらいが水を操って攻撃しているようだが、セレネが水の中を高速移動して躱しているようだ。

 すれ違いざまに雷を纏ったカーボンソードでシードラゴンを攻撃している。


 完全に人間の動きではないな。


「あのお姉ちゃん凄ーい。水の中なのにヒュンッヒュンッて動いてる」


「あれはセレネ。人族の勇者だ」


「えーっ、勇者っあの勇者様ですかぁー。凄ーい」


 なんだか凄く新鮮なリアクションだ。

 そうなんだよ。ああ見えてあいつは勇者なんだ。

 もはや俺ですらあいつが勇者であることを忘れかけている気がするぐらいだ。


「そうだ。あれが勇者だ」


「カッコいい」


 キラキラした目であいつを見るんじゃない。

 後で本人に会った時にがっかりする事になるぞ。


「様子はわかった。直にシードラゴンも倒せるだろう」


「えー。エマ、もっと見たいです」


 これ以上見てもなんも面白くはないと思う。

 ひたすら避けて、少しずつちまちま攻撃するだけだぞ。


「それよりもそろそろ夕食になる。先に風呂にでも入ってこい」


「えー、パパと一緒が良いー」


 なんて恐ろしい事を言っているのだ。

 女の子なら恥ずかしがりなさい。

 いや、まだ女の子だから恥ずかしがらないのか?


「裸は好きな男にだけ見せるようにしなさい」


「エマ、パパの事好きだよー」


 エマさんや、そーゆー事を言っているのではないぞ。


「裸を見せるのは結婚する相手にだけだ」


「エマはパパと結婚するんだよー」


 いやいやエマさんや、そーゆー事を言っているのではない。


「エマ、女の子が簡単に裸を見せるものではないのだぞ」


「簡単じゃないもん。パパだからいいんだもん」


 エマさんや、いきなり反抗期ですか?


「ははは、いいではないですか。一緒に入ってさしあげれば」


 お前はどっちの味方なんだ!

 本当にいらん事ばかり口にしやがる。


「うん、エマはパパとお風呂に入るー」


 ほら見ろ、こうなるに決まっているではないか。


「パパ?パパはエマの事……嫌いなの?」


 断れんやないか!


「はぁー、わかった。一緒に入るぞ」


「かしこまりました」


 いや、お前じゃないからな、ディアブロ。

 って何故に目を輝かせている。

 調子に乗るな、と今朝怒ったばかりだからな。

 おい、業務連絡を飛ばすな!

 今、魔術を使ってみんなに連絡を入れただろ、って顔をそらして誤魔化すな。


 こいつ、マジでやりたい放題だな。


「エマ、俺と二人で入るのか?みんなで入るのか?」


「みんな一緒じゃないの?」


 あかん。感覚が違った。

 奴隷生活となれば個人の時間なんかある訳ないか。

 尋ねた俺がアホだった。


「よし、じゃぁ一緒に入るか」


「わぁーい」


 この笑顔を見たら何も言えんよ。


 俺はエマを連れて脱衣所へと行った。

 エマの服を脱がせ、浴場へと行き風呂のマナーを教えた。


 そうだ。まずはかけ湯だ。

 湯船につかる前に、先に体を洗うのだぞ。

 その後のんびりと湯船につかるんだ。


 エマはやっぱり頭が良い。


 一度言ったことはしっかり理解して吸収していく。

 さすがは我が娘だ。って娘ちゃうわ!


 俺はしっかりとエマの頭を洗ってあげた。

 するとお返しにとエマは俺の背中を洗ってくれた。

 本当に可愛らしい娘だ。


 体を洗ってのんびりと湯船につかっていると不穏な空気を感じた。


 おい、お前等。誰が湯船に酒を持ち込んでいる。

 こそっとエマにお酌セットを渡しているがやり取りが丸見えだからな。

 テメェーらは何を教えとるんじゃ。


「パパ、一杯いかがですか?」


 満面の笑みでエマが来た。

 手にはお盆に乗った徳利とお猪口。


「いや、風呂で酒はいらんぞ」


「エマのお酒はいらないのですか?」


 泣きそうな顔をするエマ。


「何を言っている、もらうに決まっているじゃないか」


 パーッと笑顔に戻るエマ。

 凄い笑顔でお酌してくれた。


 こいつ等、絶対にお仕置きするからな!


「皆さんも如何ですかー?」


「「「ありがとうございます」」」


 こいつらーーー!!!

 そこまで仕込んできやがったか!

 今朝、説教したことを忘れているのか!



 このまま宴会になった事は言うまでもないだろう。



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是非よろしくお願い致します。

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