北のファイターから
ふざけてます。先に謝っておきます。ごめんないさい。
「お前を魔物の巣にほたることにした」
「ほたぁぅ?」
悪魔リーダーに命じ、再び勇者を玉座の間へと連れてこさせた。
今後の行動について話したのだが、どこかの北の広大な大地で何もない所に家を建ててしまうオッサンみたいな返答が返ってきた。
「お前を魔物の巣に放置、置き去りにする」
きっぱり言い直してやった。
「断ります。」
きっぱり拒否された。
何故か強気に拒否してくる勇者。
「お前に拒否権はない」
強気に言い放つ。
「せめてご飯を食べさせてください!」
凄まじい迫力だった。
「あなたのせいで温かいご飯食べ損ねたんです。しかも聖剣まで折られて、ご飯ぐらい食べさせてほしいと直訴します」
なにがあったんだ、ガクブル勇者。
昨日とは、完全に別人になっとるがな。
「食べずとも死なんだろ」
面倒くさいので適当にあしらってみた。
「いーえ、死にます。食べないと死にます。どうせ殺されるぐらいならご飯を食べてからでお願いします」
確かに食べなきゃ死ぬが、なんなんだこの開き直りは。
ガクブル勇者が開き直り勇者になっとるぞ。
「そもそも聖剣が折れたのは俺のせいではない」
「もはやあんな聖剣なんてどーでもいいんですよ。私は、もうすでに一回は死んだも同然なんです。なのでこれからは死ぬまで死ぬ気で人生を楽しみます。なのでご飯をお願いします」
すげぇーこだわってたわりに聖剣に対する扱いが酷い。
そして相変わらず言ってる意味がまったくわからん。
「では食事を与えれば大人しく魔物の巣に行くのだな?」
「わかりません。食事をしてから考えます。食事をください、私は温かい食事を要求します」
ダメなやつだ、そういえばこいつも違った意味でダメなやつだった。
「おい、食事はあるか?」
「いつでも御用意は可能です」
さすがイケメンリーダー、完璧である。
「では食事を用意しろ」
「かしこまりました。では食堂へどうぞ」
あっ、食堂なんてあったのね。
よくよく考えたら俺って玉座のあるこの広間からまったく出てない。
当然、この城の構造なんてまったくわからん。
食堂ってどこよ。
「ご案内いたします。こちらの魔法陣へお乗りください」
勇者と一緒に悪魔リーダーが作った魔法陣の上に乗る。
と、長い大きなテーブルのある部屋に着いた。
「こちらが食堂になります」
さすがイケメンリーダー、俺の心すら読む。
食堂の場所がわからなかったから良かった。
さすがだ。
豪華な食堂、そのテーブルにはすでに豪華な食事が沢山並んでいた。
「どうぞ席についてお召上がりください」
ってすでに食べている勇者。
貪り食っている。
しかも基本素手だ。
何日ぶりの食事なんだ?
どこの肉食動物だ。
そんなにガッつかなくても沢山食べ物はあるぞ。
おいおいそんなに焦って食べると火傷するぞ。
しっかり噛めよ。
喉に詰まらすぞ。
一応飲み物の位置ぐらいは確認しとけよ。
とか、俺は変なことを思いながらゆっくりと席につく。
オレが席につくと同時にスッと飲み物を添えてくるイケメンリーダー。
完璧なタイミングだ。
「ッ!」
出された飲み物を飲んで驚いた。
恐ろしく美味い。
酒にはそこまで詳しくはないが、かなり飲みやすいワインだ。
渋みの角がとれ旨味にかわっている。
前世で飲んだどの酒よりも美味い。
「喜んでいただけたようで光栄でございます」
俺の様子をみて満足げなイケメンリーダー。
近くにあった料理を口に運ぶ。
「ッッ!」
どれもこれも美味い。
食事をとる手が止まらない。
どの肉も柔らかく程よく弾力がありソースの種類も豊富なのがいい。
味のバランスが良く飽きが来ない。
新鮮な魚介類もサラダも抜群に美味い。
そしてさり気なく置かれているパンが凄まじく美味しい、焼きたてふわふわ絶品である。
なんだここ天国なんか。
「ご要望がございましたらすぐさま改善いたしますので何でもお申し付けください」
神がいる。
ムカつくほどイケメンな神がいる。
そうか悪魔リーダーお前は神だったんだな。
イケメンな見た目はムカつくけど。
お前、神だったんだな。
とかアホなこと考えていたが目の前の光景が凄かった。
山のように盛った皿がまたたく間に消えていくのだ。
先程までテーブルにあった食べ物のほとんどが消えている。
そして食べ終えて空いた皿が山のように積まれている。
こんな短時間でこの量が空になるの?
「おひゃばりぃおべぇぐぁいじばぁず」
空いた皿を重ねると次の皿を手にして食べながら何かを叫んでるフードファイターがいた。
その後もどんどんと空の皿は積み上げられていく。
負けじと出来たての料理がテーブルの上にどんどん転移して出てくる。
さすがファンタジー、料理すら転移してくる。
勇者の勢いは止まることはない。
むしろ加速していそうな勢いである。
フードファイター、前世のテレビで見たことはある。
俺が大好きな企画だった。
見逃さないように録画もしていた。
いままで一度も生で見たことはなかったが、まさかここまですごいとは。
凄まじい迫力である。
俺は軽く食べ物をつまみながら酒を飲み、彼女が食べ終わるのをゆっくりと待ことにした。
俺は一通り料理をつまみ、お酒のおかわりも充分に堪能し満足した。
だが目の前の光景は相変わらず凄まじかった。
食べ終わる気配が全くない勇者の姿がある。
しかも両手スプーンだ。
これだけ待ったのにまだ食べている。
食べ止む気配がない。
のでキレた!
「いつまで食っとんじゃぁ、このボケが!」
「もうちょいです、もうちょいでお腹いっぱいになれそうなんです」
「アホかぁ! ランクを上げろ! 胃袋の許容量増やしてどーすんじゃい!」
「大丈夫です! まだです。まだいけます!」
「なにいっとんじゃぁ、ゴラァ!」
「私、初めてお腹いっぱいになれるかもしれなんです」
相変わらずまったく話が噛み合わないので首根っこを掴んで強制終了させる。
「まだ私が食べてる途中でしょぅがぁ!」
引きずられながら凄いキレ方をした。
北の大地の人のあれだ。
たしかに子供の食事は遮っては駄目だ。
子供の食事にはゆっくりと付き合ってあげるのが大人の常識だ。
だがこいつは大人だ。たぶん大人だ!
よって俺は無罪。
引きずっていく。
「まだ食べれるのにー、デザートもまだなのにー、せめてお腹いっぱいになるまでは待ってくださーい。」
まだ食べる気だったのかこいつ。
あれだけの量を食べてお腹いっぱいにならないとは。
しかもその後デザートだと?
恐ろしい。
こんなアホなことを本気で言ってるところかマジ恐ろしい。
まさかこんなところで勇者の凄さを見せられるとは思いもしなかった。
この勢いならすぐに、数ランクぐらいすぐに上げてくれるだろう。
何故か確信を持ってそう思えた。
俺の顔には自分でも気づかないほどの笑みがこぼれていたのだ。
自重解除の勇者さん。
なんか、ごめんなさい。許してください。
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