表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Angel Laugh  作者: 和鏥
第一部 ハジマリ
2/143

第一部 見知らぬ同居人(1)

 0


 ここは豊かな所だ。

 衣食住は事欠かない、清潔さを保ち、道路に寝転がる者もいない。誰もが信仰厚く今日も神に祈りを捧げ穏やかな日々を過ごしている。

 だから、だからこそ、呼ばなければならない。

 なぜならそれが牧師の役目であり、彼らの務めだからだ。


「そんなに信仰心があるのに、どうして天使様を見たことがないのかしら」


 ある日、見知らぬ女がそう言った。

 少女のような姿だというのに、その髪はまるで老婆のように白い。桃色の瞳にはうっすら星の文様が見えたような気がした。

 最初こそこの少女を魔女か悪魔かと思っていたが、彼女はこれ以上ないくらいに親切だった。

 彼女の持つ知識は凄まじいものであり、その助言は益々この北区を潤した。


「何故そのように沢山の知識を持っているのだ?」

「私は一度、天使様に会ったのよ。貴方も会ってみたくはなくって?」


 胡散臭い話だが、しかし信じるに値する証拠を持っていた。

 呼ばなければならないと思った。


「天使様は全てを豊かには出来ないけれど、考えを変えてくれるのだわ。それって重要なことじゃなくって?」


 少女にそう言われて「確かに」と頷く。この区画は確かに豊かだが、心は貧しい。

 生活が豊かになった為に、人々は他の土地の人間をバカにする節があった。よそ者が来ないよう、区画に来る際には重税を課す。犯罪者は受け入れない。

 北区以外の区画に住む人間こそが犯罪を犯す。そのような偏見も出てきてしまった。

 これからのよりよい生活のため、そして穢れた精神浄化のため。

 心の底からの善人は片手で数える程もいない。

 だからこそ、ここに『使い』を呼ばなければならない。

 たとえ、それがいくつか代償を欲するとしても。

 しがない牧師は覚悟を決めて立ち上がり、そして少女の手をとった。

 少女は微笑む、瞳に映る星の文様が鈍く光った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ