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Nostalgic dream world  作者: 現より
月夜に少女は何を見る
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8話 武器屋か鍛冶屋か

「マップってないんだっけ?」


 道具屋みたいな場所が知りたい。さっき所持金が0という衝撃の事実が発覚した。このゲームでは最初からお金をくれるなんてことはなく、最低限の衣服と武器に雀の涙みたいなアクセサリーしか貰えないというスパルタだったのだ。なので無駄に集めて燃さなかった草と投げなかった石を売ろうと思ったのだが…


「場所載ってないじゃんか」


 マップには自分が今いるらしき場所以外は、街の輪郭まで黒塗りになっていた。


「こんなことならさっき聞いとけば良かったか?」


 いや、教会のおじいちゃんにも手探りでいくって言ったし、ここは一つ探検といこう。


「あと1,2時間くらいだから…大通りだけにしておくか」


 入ったら絶対迷う予感しかしない裏路地もあるにはあるのだが…明日にしよう。もし明日行って迷ってもなんとかなるでしょ。あんなに怪しいのに何もないはずがないだろうし。それは置いといて、今日はそこら辺の店を適当に覗いていこう。



「こんちはー」


「おう、いらっしゃい! 何か買っていくかい?」


 武器屋か…失敗した。どっかの賢者が使ってそうな怪しい杖とか、やたらと長い材質不明用途不明の剣なんかがあるのだか、金が無いからなにも買えない。


「いやー、今日初めて街に着いたトラベラーなんですけど、まだお金持ってないんですよね」


「なんだあんちゃん、トラベラーだったのか。それじゃあ素材を売りにきたのかい?」


 武器屋、いや鍛冶屋か? ともかく、ここで売れる素材って何持ってたっけ…ゴブリンが持ってた武器とか売れるかな?


「ゴブリンの武器とかって売れますか?」


「うーん、ゴブリンのかぁ…剣なんかは鋳潰せば使えないことも無いが、それよりこんな石を大量に持ってたりしないか?」


 と言って石を見せられたが、これっていっぱい持ってる普通の石じゃん。


「ありますけど、この石何に使うんです?」


「この石は錬金術で量は少ないが質の良い鉄ができるんだ。そして、トラベラー達が来てから武器は売れるんだが材質の鉄が不足していてな。だから、近くにあるこの石から錬金術師に頼んで鉄を作って貰ってるんだ」


 はー、この石ころと錬金術で鉄がねぇ…錬金術も案外面白そうだな。


「と言ってもできる量が少ない上に、鉄が必要な連中がこぞって錬金術師のところへ頼み込んだせいで、最近は大量の石を持って一度にいかないと話を聞いてすら貰えないんだよな」


 うーん、取り敢えずこの石ころはたくさん持ってくれば売れるのか。これってみんな売りに来ないだろうか? あー、来るわけないか。そんなことするならモンスター狩って素材を生産組に売った方がいいし、何が楽しくて永遠と石ころ集めなきゃならないんだって話になるか。


「じゃあ、たくさんあるんですけど足りますか?」


「どれ、カウンターに出してもらえるか?」


「カウンターですか、多分あふれると思いますけど…」


 スライムに投げてたのは尖ってる方の石だったし、普通のはまだ500個近くある。


「あれあんちゃん、そんなに持ってたのか」


「ええ、まあ。ちなみにこの石って、どれくらいあれば錬金術師の方にお願い出きるんですか?」


「えっとだな、このくらいの大きさで大体…50から100くらいあれば十分だろう」


 全然足りるな、よし。


「良かったら錬金術師の方に注文してきましょうか? 錬金術っていうのに興味があるんですけど…」


「んっ? そうか、だが、うーん…まあ大丈夫か?」


 すっごい不安になる悩み方してるんだけど。何なの? その錬金術師って人、そんなに気難しいの? それとも、企業秘密だ! みたいなアレか?


「じゃあお願いしちまってもいいか? 代金は鉄の買い取りの時に渡すからよ。あんちゃん、ちょっとマップ出してくれねぇか?」


 〈クエスト「鉄を入手せよ!」が発生しました〉


 おおー、クエストだ。受注しとこ。それにしても、おっちゃんはマップにピンでも立てられるのかな?


 〈マップが更新されました〉


 すげぇ、圧倒的黒塗りだ…おっちゃんが指したところだけ光ってる…


「分かりにくいかもしれんが、ここにいる魔女に頼んでくれ。その時合言葉があってな、今から教えるから誰にも言わないでくれよ」


 こんなところに魔女がいんのかよ。思いっきり迷いの路地裏じゃんか、合言葉とか嫌な予感しかしないんだけど。


「ドアに向かって〈錬金術の知識を〉って言うだけだ。くれぐれも間違うなよ」


 これ別の姿でもクエスト達成になるんかな?


「分かりました。そういえば、鉄を持ってくるのって別の人でも良いですか?」


「ああ、良いぞ。だが、あんちゃんの知り合いかどうか分からんな」


「そうか…じゃあ、髪とか肌とか真っ白の人が来るはずです。なのですぐ分かると思います」


 真っ白なら目立つでしょ。


「なるほど、分かった。じゃあ今度は武器を買っていってくれよな」


 〈クエストが更新されました〉

 〈一部クエストが共有化されました〉


 やっぱり駄目だったか。まあ、分からなかったらその場で姿を変えればいいだけなんだが、知っておいて損は無いだろう。


「はい、次会うときはちゃんと買いにきますよ」


 いやぁ、おっちゃんだったなぁ…路地裏なんて今日だけじゃ回りきれないけど、少しだけ見てこようかな。



「やっべぇ…広すぎるだろ…」


 広い、広すぎる。なんだこの広さ…もう迷路でしょ。宝箱とか配置されてても驚かないぞこれ。


「意外と目的地が分かりやすくて助かったな」


 目的地までは大通りからほぼ直進で着きそうだ。魔女の家までの道のりだが、左に曲がったら次は右、右に曲がったら次は左というように、大通りからまっすぐ引いた線を左右に行ったり来たりするだけでどんどん奥に進めたのだ。


「今日はもう帰ろうかな…もう明日で良いでしょ」


 ぶっちゃけ飽きた。もう暗い道を歩くのは嫌だ。


「暗視とかないかなぁ…魔法に無かったっけか」


 いや無いか、魔法はこの街に来るまでに色々試したし。「生活魔法」は便利だったな…最初は表示が無くてビックリしたけど、魔法の名前のところを何気なくタップしたら詳細が表示されて、そこに使える魔法が載ってたんだよ。他の属性魔法は最初から使える魔法が見えてたから分かりやすかったんだけど…


「あれ? これ、もしかして属性魔法も詳細になんか隠れてる?」


 いやいや、まさか。そんなことありえないって。魔法の素晴らしさ! なんて言ってたのに、自分が魔法について全然知らなかっただなんてそんな…


「うわー、いっぱい出てきたぁ」


 今のところ使えたのが、ボールとウォールとアローの三種類だったんだけど、実はそれぞれの属性毎の固有魔法と、追加の共通魔法が存在してた。固有魔法は一時的にステータスを上げるもの、光を灯すもの、暗闇を見通せるもの、共通魔法には属性付与と属性回復があった。


「うーわ、いっぱいある…今日はこの魔法を試したら終わりにするか」



 と試した結果、いろいろ分かった。どうやら詳細に表示されるのは強化されないものという感じだった。ボールとかは魔法のレベルが上がると強くなるのだが、詳細の魔法は多分変わらない。だって周りを明るくするとかだし、そう考えると辻褄が合いそうな気がする。

 ステータスアップは微妙だった。使えそうで使えない、でも使っておいたら何かの役に立つかもという程度。属性付与や属性回復も同じ感じで微妙だった。ただ、光属性の回復は嬉しい。回復量的に一番高く、他の属性との違いも回復量以外はよく分からなかったため、純粋な回復手段として使えそう。今のHPを2,3割くらい回復してくれる優秀さ。


「あー、疲れた」


 明日は錬金術師のところへ行こう。そういえば姿はどっちで行こうか。あぁそうだ、一日おきに変えてみるか? 意味は無いけど、意味が無いからこそ新しい発見があるかもしれない。いや無さそう。うーん、あれだ、臨機応変ってやつだよ。基本交互に、時々気分で、別に決める必要も無いしな。

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