6話 ダンジョンは泣いているか
「ダンジョンの短いトンネルを抜けるとゴブリンの集落であった」
「グギャ」「グギギ」「「グギャギ」」
うわぁ…ゴブリンですかね、あれ。このダンジョンは洞窟のような構造をしていて、入り口を少し進んでみると横にトンネルみたいで綺麗な穴を見つけまして。そこを覗きに行ったのですが…何故? ここは初心者向けじゃなかったのですか…まあいいでしょう、たくさん戦えるということです。この戦いが終わったら夕御飯を食べるんだ…ということで、張り切っていきましょう。
「数が多いですね、ここは盗賊らしく隠れながらいきましょう」
派手さよりもクールな格好良さのために《盗賊》を選んだのですから、ここで活かしていきましょう。
そろり、そろり、ドスッ…シュンッ
〈スキル「暗殺」を獲得しました〉
ゴブリンは集まって何かしていますので、外側から攻めていきます。こっそり背後に回り込み、「剣術」「暗器術」「不意打ち」「隠密」<集中> <切断>〈びっくり人間〉〈慎重派〉〈鎧袖一触〉〈見敵必殺〉を使います、と言ってもパッシブなので勝手に発動していますが。<切断>の対象って首にも有効なんですね。「解体」の効果でアイテムをドロップさせず、体ごとそのままストレージに入れてしまいます。音が出ないよう1体ずつ丁寧に倒していきましょう。そーっと、そーっと、
「うひゃあ!」
転びました。石に躓くなんて「身体制御」が働いていませんね、バグです。報告しましょう。
「「「グギャア!!」」」
冗談言ってる場合じゃないです。なぜこうも肝心な時に転ぶのでしょう、昔からこんなことばっかりです。でも洞窟が暗いのも悪いと思いますよ、私だけのせいではないのです。
「ナイフでは多対一に向いていませんね…魔法を使いましょう」
各属性魔法には属性ごとの固有魔法と、どの属性にもある共通魔法があります。固有魔法には攻撃的なものが少なく、所謂なんとかボールのような攻撃魔法のほとんどは共通魔法に分類されます。と、説明書と掲示板に載っていました。初めはボール系統しか使えないので「光魔法」の〔ライトボール〕にしましょうか。
「光よ、敵を穿て〔ライトボール〕」
「グギャッ、グギギャ!」
単体攻撃、倒せない、詠唱が面倒。
「これは駄目ですね、改善しなければ…」
向かってくるゴブリンから一時撤退します。〈慎重派〉が働いてくれたおかげかは分かりませんが、あまり抵抗されずに入り口付近まで戻ってこられました。どうやらトンネルからは出てこないようなので、少し休んでからもう一度行きましょう。
「取り敢えず、詠唱は頭の中でも出来ませんかね」
「〔ライトボール〕」
「グギャ!」
成功、ですかね…。ちょっとだけトンネルから頭を出して、届きそうなところにいたゴブリンへ攻撃してみます。詠唱は最初の部分がイメージで補えましたが、最後だけは口に出さなければ発動しませんでした。ちなみに、このまま倒せないかと思い石を投げてみたのですが、ある程度攻撃されると奥へ逃げてしまうようです。まあいいです…最初はそんな事考えていませんでしたからね、今は魔法で殲滅したい気分なのです。さて、入り口へ戻りもう少し実験してからまた来ましょう。
「魔法の詠唱って同時に出来ないでしょうか?」
詠唱の最初を同時に思い浮かべながら、最後のところを連続して言えば途切れることのない弾幕の完成では? と思ったのですが、各スキルにはリキャストタイムが有ることを忘れていました。いや、ちょっと待ってください…今確か6属性持っていましたよね、リキャストタイムってそれぞれの属性ごとに別々なのですか。なるほど、なるほど、そうですか。
そういえば、洞窟の中を明るくする方法を思いつきましたよ。あの不味い〈雑草〉や〈草〉の説明欄にはよく燃えると書いてありましたね。これを奥へこっそり運んで燃やしておきましょう。草原が近くにあったのはここで草を燃やせということだったのですね。
「グギャッ」「ギギアッ!!」「ギュギィ…」「キャー!!」「グッギャ!」
「〔ライトボール〕…〔ダークボール〕…〔ファイヤーボール〕ッ〔スラッシュ〕! 〔ウォーターボール〕…〔ウィンドボール〕…〔アースボール〕…〔ライトボール〕…」
良いですね、大体5秒間隔で魔法が撃てます。最初にこの方法を試した時は失敗したのですが、それから「平行詠唱」というスキルを獲得しまして。どうやらこのスキルを持っていなければ同時に唱えることは出来ないようです。さすがに6つ同時は大変ですね…でもまだ周りを見渡す余裕があります。たくさんある称号の効果もいい感じです。途中で近づいてきてしまった可哀想なゴブリンさんには、全力で〔スラッシュ〕をお見舞いしてあげましょう。魔法職だと思いましたか? 残念! 盗賊でしたー、って何を言っているんでしょうか。
「グガァ!」
「活きのいいゴブリンですね! 〔ハイスラッシュ〕!」
〔ハイスラッシュ〕は「剣術」スキルがレベル3になったときに使えるようになりました。威力もデメリットもスラッシュの一段階上と言ったところでしょうか。何となく今のゴブリンは他よりも少し大きい気がしたんですよね。まあそれはそれとして、そろそろ全て倒せそうなのですがMPも無くなりそうです。一応<スキル共有>によって「魔力上昇」も持っているのでMPは多いのですけれど、やはり魔法職では無く威力が乗らないため魔法の数を増やす必要があります。質より量、というわけですね。
「ダンジョンを出たら今日はもう街でログアウトしましょうか」
街へ行くと言いましたからね。有言実行ですよ! …ゴホッ、煙がこちらまで来てますね。これは誤算でした、早く終わらせましょう。
「ふぅ、終わりましたか」
〈レベルが上がりました〉
〈アイテム「ゴブリンの服」を入手しました〉×87
〈アイテム「ゴブリンの牙」を入手しました〉×104
〈アイテム「生きていた証」を入手しました〉×46
〈アイテム「ゴブリンの剣」を入手しました〉×24
〈アイテム「欠けた魔石」を入手しました〉×13
〈スキル「毒耐性(小)」を獲得しました〉
〈称号「放火魔」を獲得しました〉
〈称号「地獄の体現者」を獲得しました〉
〈称号「ゴブリンハンター」を獲得しました〉
〈称号「敵対者」を獲得しました〉
〈称号「闇の中に」を獲得しました〉
〈称号「百人力」を獲得しました〉
称号はいつもの感じですかね。どうしてこんなものが手に入るのでしょうか。まあいいです、街へ行ってログアウトしましょう。結局ダンジョンでも1時間くらい使ってしまいましたからね。いくら学校が2時前で終わると言っても、今はもう7時くらいでしょうか? 少しやり過ぎましたね、まあ明日は魔法使いになりましょう。さて街へ…
「あっ、ここまで来た道…覚えて、ない……」
スライムを追って途中森の中に入ったんでした。教会からはこのダンジョンにこれますけど、帰りは…無理そうですね。でも一応デスペナによるアイテムばらまきを覚悟すれば最初の教会に戻れますが…何か…何か忘れているような? うーん、あと少しで……ああ!そうでした、レベル10まではデスペナが無いんでした。よく思い出しました私! そうと分かれば早速ナイフを喉に突き立てましょう。
「去らば今世、こんにちは来世ッ!!」
まだ、来世じゃ、無かったっ……ぐはっ。
ここまでが初日となり、次は掲示板の予定です。
「キャー!!」??