5話 宙を舞う?
「さて、ダンジョンは東へ向かうんでしたっけ」
あれ? 東ってどちらでしょう。ええっと、マップを見ればわかりますかね。ふむ、教会の出入口が数字の4みたいなマークの上にあたるので、えーっと、どっちでしょう。東はひだからひじゃなくて、右ですね。
「そういえば、ずっと教会の近くにいたんでしたね」
ここはモンスターに襲われることも無いのでいい採取ポイントだと思います。質は残念ですけど。
「さて、最初に会うモンスターは何でしょうか」
━━青スライム━━
Lv1
定番のモンスターですか、しかし初戦闘には相応しい相手でしょう。
「ピッ!」
えっ? スライムって鳴くんですか…どこに発声器官があるっていうんです、ってよく見れば中心辺りに何か浮いてますね。見た感じ弱点でしょうか? スライムが体当たりしてきたので真上にジャンプし、そのまま空中でくるりと体を回転させて青色の謎物体にナイフを突き立てます。うーん、アクロバティック。初めてナイフが本来の用途で使われた瞬間ですね。
〈アイテム「スライムの青さ」を入手しました〉
〈レベルが上がりました〉
〈スキル「切断」を獲得しました〉
〈スキル「不意打ち」を獲得しました〉
〈スキル「スキル共有」を獲得しました〉
〈スキル「生活魔法」を獲得しました〉
〈称号「不適合者」を獲得しました〉
〈称号「魔法の道」を獲得しました〉
不名誉なものは気にしないでいきましょう、びっくり人間でもう十分です。通知はまとめておきました。スキルレベルが色々と上がっていますので、これが全てアナウンスされても困ります。しかし何と言うか少し寂しいですね、通知はやはり全てオンにしておきましょうか。
━▽━メーナ━▽━
人間:Lv1《盗賊》
HP 57
MP 79
STR 15
VIT 4
INT 7
MND 8
AGI 14
DEX 12
SP 0
━装備━
武器<古びたナイフ>
STR+1
頭<古びたフード>
MND+1
体<古びた布の服>
VIT+1
足<古びた革の靴>
AGI+1,DEX+1
アクセサリ
<旅行者の切符>
━スキル━
「剣術/2」「暗器術/3」「光魔法/1」「闇魔法/1」「採取/6」「掘削/5」「身体制御/2」「解体/4」「疲労耐性/3」「不意打ち/1」「偽装/2」「瞑想/1」「隠密/2」<エリア跳躍> <集中> <様子見> <地形攻撃> <切断> <スキル共有> <生活魔法>
━サブスキル━
「盾術/2」「火魔法/2」「水魔法/2」「風魔法/2」「地魔法/2」「魔力上昇/2」
━称号━
〈渡りの精霊《ベル》の加護〉
〈ここはあなたの夢の中〉
〈びっくり人間〉
〈採取人〉
〈コレクター〉
〈慎重派〉
〈草原ブレイカー〉
〈穴掘り屋〉
〈不適合者〉
〈魔法の道〉
━追加効果━
《盗賊》AGIとDEXを強化。
「暗器術」武器携帯時にその武器の隠密性が増す。
「身体制御」身のこなしが上手くなる。AGIに+1
「解体」残骸が残るようになる。DEXに+1
「疲労耐性」疲れにくくなる。VITに+1
「不意打ち」自分に気づいていない相手への与ダメージが1.1倍。
「偽装」情報を秘匿する。
「瞑想」休むと回復する。
「隠密」存在を秘匿する。
「魔力上昇」MPに+20
<エリア跳躍>セーブポイント間の移動ができる。
<集中>集中しやすくなる。
<様子見>遠くから観察しやすくなる。AGIに+2
<地形攻撃>地形に攻撃が伝わりやすくなる。STRに+5
<切断>攻撃による部位破損が起こりやすくなる。
<スキル共有>別の姿のスキルが共有される。
『武器スキル』HPとSTRとVITを強化。
『魔法スキル』MPとINTとMNDを強化。
『生産スキル』AGIとDEXとLUKを強化。
〈渡りの精霊《ベル》の加護〉インベントリが拡張される。全ステータスを強化。
〈ここはあなたの夢〉懐かしの姿を解放。
〈びっくり人間〉びっくりするような行動に補正がかかる。
〈採取人〉採取アイテムの数と質が上がる。
〈コレクター〉インベントリが拡張される。
〈慎重派〉狙いをよく定めると威力が1.2倍。敵から逃げやすくなる。
〈草原ブレイカー〉植物系統への与ダメージが2倍。植物系統に対する状態異常の効果が2倍。
〈穴掘り屋〉地属性を強化。地属性への与ダメージが2倍。
〈不適合者〉嫌われると好かれにくい。
〈魔法の道〉INTとMNDを強化。INTとMNDに+5
うーん、見づらい。何がどうなっているんですかね? もう少し詳しくしりたいですね…鑑定系統のスキルがなければ詳細はちょっとしか見れないのですが、どのスキルが今どのような働きをしているか、ということだけは分かるようです。常時発動しているものはオンオフが出来るようになっていますので、オンオフを切り替える時に見れるんですね。
取り敢えずこうなった原因は分かりました。まさかの〈びっくり人間〉でした。えーっと、びっくりするような行動というところですね、ほとんどのスキルに補正が掛かっています。どうやら採取中はびっくりするような行動と判定されていたらしく、スキルレベルが上がりやすくなり、スキルや称号が取得しやすくなっていたみたいです。まるで人が2,3時間奇行にはしっていたとでも言いたげな効果ですね…スルーしましょうか。
早くダンジョンに向かうとしましょう。毎回こうならなければいいのですが……
「ピィ」
「スライムですか、ちょっと遠いですね」
石でも投げますか、集めたのでたくさんありますし。
「ていっ」ヒュッ
「ピギャ!?」
〈アイテム「スライムの青さ」を入手しました〉
〈レベルが上がりました〉
〈レベルが上がりました〉……
取り敢えず通知をもとに戻しまして、この戦い方は楽ですね。ダンジョンには石を投げながら向かいましょう。
〈アイテム「スライムの青さ」を入手しました〉×175
〈アイテム「スライム核のかけら」を入手しました〉×45
〈スキル「投擲」を獲得しました〉
〈スキル「狙撃」を獲得しました〉
〈称号「移動砲台」を獲得しました〉
〈称号「固定砲台」を獲得しました〉
〈称号「鎧袖一触」を獲得しました〉
〈称号「見敵必殺」を獲得しました〉
遠距離から攻撃し続けていただけじゃないですか、今度は1時間で済ませたのですよ…途中で移動砲台が手に入りましたので、なんとなく固定砲台も欲しいなと思いまして。さて、そろそろ動きましょう、ついつい夢中になってしまいました。アイテムも散らばっているので集めなければいけません。収集は大事です、塵も積もれば山となりますからね。
ああそれと、石が当たっても稀に倒せないときがあったので弱点らしきあの物体を狙うようにしたんです。何匹か倒していると、スライム核のかけらというアイテムが手にはいったのであの物体は核だったのでしょ…う、あれ? この核を直接抜き取れば一撃なのでは…
「ピィー」
「それ」ドスッ
うーん、ぬるぬるします。
「なかなか、掴め、ないっです、ねっ! と、このまま引っ張れ…ない?」
「ピュルルル」
「最後まで抵抗しようというのですか。いいでしょう、勝負です」
これはもう純粋な力比べですね、スライムから引っ張られるような抵抗があります。あれほどスキルや称号があるのに全く役にたちませんね…スライムの中に両手を入れつつ後ろへ倒れるように引っ張る、誰かが見たら変な人だと思われないでしょうか。あっ、取れそう、ってこのままでは倒れるのでは?
「そうです、バク宙しましょう。きっとまた〈びっくり人間〉が発動していい感じになるでしょう」
腰を下げて、後ろに回るイメージで、3…2…1…今!
「あたっ!」
〈アイテム「スライムの青さ」を入手しました〉
当たり前ですね、失敗しました。核も滑って離してしまったので収穫は青いぬるぬるだけです。そもそも足の力だけで回れるわけがないんです、でもあと少しで出来そうですね。ダンジョンまではあと5分くらいでしょうか? この辺りは未だスライムしか出てこないので、バク宙しながら進みましょう。
「ピッ!」
「せい、たぁっ、着地!」
〈アイテム「スライムの青さ」を入手しました〉
〈アイテム「小さな青いスライム核」を入手しました〉
完璧です、さらにかけていない核も手に入りました。使い道は知りませんが、達成感がすごいです。しかしダンジョンの目の前まで来てしまったので、あと2匹ほどでバク宙は終わりにしましょうか。
「ピィア! ピィア!」
さぁて、バク宙をってあれ? 核が見えませんね…というより色がとても濃いです。これはレアモンスターを引いたのでは? 見つからないのならば、ちょっと弱らせてから中に手を入れて核を探しましょう。そういえばスキルのアーツ、全然使っていませんね。「剣術」にあった気が…えっとこれです、〔スラッシュ〕です。レアモンスター相手にどれ程ダメージを与えられますかね?
「〔スラッシュ〕」
何でしょうか、体が技を覚えていたような感覚です。こんな風に動かす、というイメージに添うように体が勝手に動きます。止めようと思えば止められそうなくらいには制御がききますね。
「ピッ!ピィァ…」
〈アイテム「スライムの深い青」を入手しました〉
〈称号「スライムハンター」を獲得しました〉
「あっ」
弱かったですね。って、あら?
「動きにくい…? ああ、お腹が減ってきたということですか」
説明書は読んで覚えたはずですが、きっかけが無いと思い出せないという重大なバグがあったんでした。誰かアップデートしてくれませんかね。
「食べ物は何を持っていましたっけ」
━アイテム━
〈雑草〉〈草〉〈良質な草〉〈石ころ〉〈尖った石〉〈丸い石〉〈スライムの青さ〉〈スライム核のかけら〉〈青いスライム核〉〈スライムの深い青さ〉
詰みました、えっとデスするとどうなるんでしたっけ…ってまだ死にたくありません。目の前にダンジョンですよ、ここまで来たのですから生き残らなければ。草とか食べれませんかね。
「うぐっ………不味い…」
〈雑草〉は駄目です、〈草〉も駄目でした。〈良質な草〉はギリギリ人類が食せる味でしたが、満腹度に対して数が足りない気がします。お腹がふくれません。
「石は食べれないでしょうし…」
ガリッ
駄目でした。
「もう全部口に入れていけば速いですね」
早くダンジョンへ行きたいのです。さっきまでスライム狩ってたじゃん、と言いますが気分の問題なのです。先程はスライムが狩りたかった、今はダンジョンに行きたい、これです。これなのです。うぅ……ぬるぬるする…不味い。
「あっ、おいしい」
〈スライム核のかけら〉は青いあめ玉みたいですね、何故かお腹も草よりふくれます。体積だけが重要じゃない、ということでしょうか。味とかが関係している…? つまり三ツ星シェフならば餓死寸前の人を一瞬で健康体に出来ますね、お医者さんもびっくりです。
「たくさんありますし、あめ玉食べながらダンジョン攻略と行きましょう」
追記:ステータスの効果欄詳細を修正