3話 楽しく過ごせますように
「今何て言った?」
「だーかーらー、もう1つはどうしますかって聞いてるんですよー」
あれ? このゲームってサブキャラ作れたっけ。
「私に関連さえしていればですね、その称号を獲得するだけでもう1つの姿を持てるようになるんですよ」
なんかナチュラルに心読まれた気がする。それよりこいつって意外と凄いな、関連した称号だけでサブキャラ解放か。
「今から作れるのか?」
「はい、大丈夫ですよー」
そうかそうか、ならあれが役に立つな。昨日見た目をどうしようか考えてた時に、最後の最後で二択になって諦めた見た目があるんだよな。ステータスは魔法職を取ったから適当に物理職っぽくしよう。
「よし、早速やるぞ」
「はいはーい」
「ほえー、本当に出来るんですね。あなた様はびっくり人間ですか?」
「誰がびっくり人間ですか…」
〈称号「びっくり人間」を獲得しました〉
えぇ…
「やっぱりびっくり人間だったー!」
「はぁ、考えないようにしましょう」
もう結構時間が経ってますからね。でも、そのおかげでいい感じに仕上がったと思います。
━▽━メーナ━▽━
人間:Lv0《盗賊》
HP 56
MP 56
STR 7
VIT 3
INT 2
MND 3
AGI 9
DEX 9
SP 0
━装備━
武器<古びたナイフ>
STR+1
頭<古びたフード>
MND+1
体<古びた布の服>
VIT+1
足<古びた革の靴>
AGI+1,DEX+1
アクセサリ
<旅行者の切符>
━スキル━
「剣術/1」「光魔法/1」「闇魔法/1」「身体制御/1」「解体/1」「偽装/1」<エリア跳躍>
━称号━
〈渡りの精霊《ベル》の加護〉
〈ここはあなたの夢の中〉
〈びっくり人間〉
━追加効果━
《盗賊》AGIとDEXを強化
「身体制御」身のこなしが上手くなる。AGIに+1
「解体」残骸が残るようになる。DEXに+1「偽装」情報を秘匿する。
<エリア跳躍>セーブポイント間の移動ができる。
『武器スキル』HPとSTRとVITを強化
『魔法スキル』MPとINTとMNDを強化
〈渡りの精霊《ベル》の加護〉インベントリ拡張。全ステータスを強化。
〈ここはあなたの夢〉懐かしの姿を解放。
〈びっくり人間〉びっくりするような行動に補正がかかる。
<旅行者の切符>アイテムドロップ率上昇
同じ性別でないとキャラクターは作成出来ないと言いましたね、あれは嘘です。いいえ、実際同じ性別でないといけないのですが性別チェックには抜け道があるんですよ。最近のVRゲームでは高度な技術によって、大抵の情報は入力ではなくVR機器を通して本人から直接読み取られます。さらに優れたAIによる性別のチェックは、肉体的ではなく精神的なものらしいのです。なので強い思い込みでいけちゃうんじゃ無いかと思ったんですが…いけちゃうんですが?
「この感じ、肉体的制限まで緩和されてるような…」
自由度が高いことでも有名なこのゲームですが、あまりにも自分とかけ離れた体型などには設定出来ないようになっているんですよ。性別が変えられることが分かってからはもう色々変えちゃおうと思いまして、テンプレートから選んでちょっとだけ小柄な体型にしてみたんですよね。まあ、男女の体からして大幅に変わっているので肉体的制限なんてものは無いも同然だったのですが。
「いやー、急に女の子になるって言われたときは帰ってクッキー食べようと思いましたが、結構可愛らしくなりましたねー」
こいつ今さりげなく見捨てましたね…まあ、私なら幼馴染のあいつに女の子になると言われたときはあっそう、とだけ返しますが。
「それにしても綺麗な髪ですねー」
「でしょう! 白髪や銀髪ではなく、青みがかった白という色には輝く水のような透明感がありましてね、それから」
「あなた様! 出発はいつにしますかー!」
ふぅ、もうここにいる必要はないですか。では、今度こそゲームスタートですね。
「では、そろそろ行きましょうか」
「はーい、って急に冷静になるのねー」
あっ、そういえば
「あの、男の姿に変えるにはどうすればいいんです?」
「それならメニューとかからできるよー。私の加護があるからのんでめりっとで変更できちゃうのっぷぎゃあ!」
フフンって仰け反ってるから捕まえてみたら簡単に捕まりましたね。そうだ、握ったまま姿を変更してみましょう。
「ぐぬぬ、抜け出せないよ……」
早速変身です!
「おお、元に戻るんだな」
何て言うか、一度ログアウトしてからログインし直したような感覚だな。
「はーなーしーてぇー」
「おっと、分かったよ」
それっ。
「あー、びっくりしました。何で急に掴むんですか!」
「目の前でふん反り返ってたお前が悪い」
「むきゃー!!」
強く思い込むには性格ごとロールプレイする方が楽だったんだよ。どうせゲームだからと攻撃的になってみたんだけどなぁ。
「あなた様、さっさと出発しちゃいますよー!」
「ああ待て、やっぱり変わってから行く」
折角だから陽介のやつを驚かしてやろう。いや、こっちだとライトニング…だったか? たしか陽だからライトなんだっけか。
「では行きますよー、準備はいいですかー?」
「ええ、いいですよ」
「いってらっしゃいませ、あなた様! あなた様がどうか楽しく過ごせますように」
わぁ、だんだん体が透けていきます。徐々に転移するタイプってこうなるんですね。
「ではまた会いましょう」
「うん、また会おーね! ばいばーい!」