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8月某日。
カンカンと照り付ける太陽がやけに近く感じる。
サングラス越しでも眩しい陽の光。
往来を行き交う人々は足早に日陰を求めている様だった。
「去年よりも暑いんじゃねぇの、これ」
その言葉を聞き俺は車内の冷房を強に設定する。
実際、今日の東京の気温は40℃。
"茹だるような暑さ"まさにそのものの夏の昼間、
俺は後部座席に汗をかいたサラリーマンを乗せて車を走らせている。
俺の職業はタクシー運転手だ。
休みの日以外は昼夜問わず様々な人間を乗せて
これまた様々な目的地までお連れする。
安心・安価・安全運転がモットーの
『すごろくタクシー会社』に所属している。
表の顔は、だが。