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ようこそ、理想郷へ(改稿版)  作者: 林桃華
第1章 旅の始まり
9/21

旅立ち

よろしくお願いします


「............戻ってきたのか」



白い光が消えていくと、視界がフェイトと会う前の元の景色に戻る



(どうしたんですかアレウスさん?剣握ったままぼーっとしちゃって)


「あ、あぁすまん。どれくらいそうなってた?」


(んー、1秒くらいですかね。どうかしたんですか?まさか呪われたり...)


「いや、心配ねぇよ。この剣は問題なく使える」


俺は地面から引き抜いてフェイトの感触を確かめる


さっきフェイトからぶんどって振った時よりもしっくりくる

なるほど、フェイトに認められた証ってわけだ



(大丈夫ならいいですけど、その剣ただの剣ってわけじゃないですよね?)


「まぁな、でも使い方はわかるから問題ない」


(どうして持っただけでわかるんですか?)


「ん、あぁ実は持った瞬間にこの剣の精霊にだな...」


(え、アレウスさんってそういうこと言うキャラだったんですか...)



いや、話聞けよ


あと俺が話そうとするのは本当のことだから



とりあえずエリーナの言葉は一旦無視して、俺はフェイトについて説明する



(なんでも斬れるって、そんなデタラメな剣あるわけないじゃないですか。アレウスさん、会ったばかりの人をそんな信用しちゃダメですよ?)


その理論で行くとお前もダメじゃねぇかよ



「まぁ現実の世界で試してみればわかる話だ」



確かにあそこは結界で作られた夢のような世界だ

もしかしたら現実ではなんでも斬れるなんてことがありえない可能性もある




「だったら一回どでかいもので試してみるか」



俺は重力魔法を発動し、自分の身体を浮遊させる



「おっとと...バランスの取り方はこんな感じか?」



思いつきでやったみたが、バランスを取るのは難しくなさそうだ


重力を精密にコントロールすれば浮いているというより飛んでいるという状態になる



(アレウスさん、何するつもりですか?)


「こいつがほんとになんでも斬れるか試してみるんだよ......あれがいい」



試し斬りにちょうどいいものが目に入る



(え、アレウスさん...あれって山じゃないですか?)


「あぁ山だな」


(まさかあれを...いやいや、そんなわけ...)


「そんなわけ...あるんだよ!!」



俺は思い切りフェイトを山に向けて横薙ぎする



「.........どうだ?」



斬った瞬間は変化がなかった


だがしばらくして、頂上の一部だけが横にずれていく、俺が斬った部分だ



「問題なく斬れるようだな」


(アレウスさんのやったことがかなり問題だと思いますけどね...)


あまり被害が出ないように山の頂上だけ斬ったんだよ

あんな所に人がいる可能性の方が低い


それにちょっとばかし山の頂上がずれただけだ、大丈夫だろう



(なんか私アレウスさんとの旅が心配になってきました...)


「そうか?安全に旅ができると思うけどな。あと旅っていっても、こっからどうするかまったく決めてなかったな」


(そうですね...適当に最初は街を目指すのがいいんじゃないですか?)


「そんな簡単に街なんて見つかるもんか?」



さっき空に浮かんだ時も周りは森や山ばっかり見えていた


「まぁ俺以外の人間に会いたいから街を目指すのは妥当なところだな」


(じゃあとりあえずさっきの家で使えそうなもの色々探して、旅立つ準備をしたらどうですか?)



そうだな、旅に役立つものとかあったらいくつかお借りしよう







「とりあえずこんなもんか...?」



俺は家の中を調べて使えそうなものを揃える


と言っても荷物多くはできないし、お借りするものがいっぱいあっても申し訳ないから少なめだ



よさげなバックと服の上下を数着、そして水筒


偶然なことにこの家に置いてあった服のサイズがちょうどよかった、ありがたく借りていくことにしよう



一応探してはみたんだけど、流石に地図はどこにもなかった


しょうがないからもっと高くまで飛んで辺りを見渡してみることにした



可能ならば街を見つけたい、見つかんなかったら道を見つける


道があるなら、その道をたどっていけばいつかは街とか集落みたいな人がいる場所にたどり着くだろう


俺は空を飛ぶために外に出るが、ログハウスを眺めてしまう



「うーん...やっぱなんかな...」


(どうしたんですか?)


「いや、なんでもない。行くか」


目の前のログハウスを見てると、よく分からんが不思議な気持ちになる


ファンタジーな世界なわけだし、俺が転生してやってきた家ということだからなんか不思議なパワーでもあるのかもしれないな


(あ、そうだ。忘れてました)


空を飛ぼうとした瞬間エリーナがいきなり呟く


「何を忘れてたんだ?」


(えーとですね...こうですね。今私の加護を付与したので、スキルとしてなってると思うのでスキャンでチェックしてみてください)


「エリーナの加護...?」


いや、なんか不安しかないんだが...


俺は自分にスキャンをかける


そしてそこには新しく「運命神の加護」というものが存在していた


「これどんな効果があるんだ?」


(それはもちろんこの運命の女神たる私の加護ですから、アレウスはこれからの人生で誰もより運がよくなります。アレウスさんの今後の人生は幸多きものと確定したに等しいです。感謝してくれても全然いいんですよ?)


「いや、うんまぁ......ありがとう」


とてつもなく嘘くさいし、怪しさしかないけど、感謝はしておこう

不安しか残らないが、エリーナの説明通りの効果があることを願おう


「さて...じゃあ探してみるか」


俺は飛行をして、可能な限り高度を高めて見える景色を広げていく


(うぅ...寒くないですか?)



「あぁ寒いし、空気薄くなって呼吸もしんどい」



どこまでも空高く飛べそうだが、このままだと身体が耐えきれなくて死にそうだな


それに高く飛んで見てわかったが霧が濃いのかなり遠くまで見るのは難しい


(ささっと、街でも道でもいいんで見つけて降りましょう)


「わかってるよ.........霧があるし、山に囲まれすぎて空からでもよく見えないな......ん?あれ道じゃないか?...というか」


(んー...小さくてよく見えないですけど...なにが戦ってる...というかむしろ襲われてるような)


「だよなぁ...」



道の先を目で追っていたら見つけてしまった


小さくてはっきりはわからないけど、人が魔物に襲われてるようなに見える


あれはある意味チャンスだな

あそこに助太刀すれば、人にも遭遇できたことになるし恩を売れば街まで一緒に連れて行ってもらえるかもしれない



「よし、行くか」



俺はその現場へと可能な限りの速度で飛んでいく







「くそ!!カイン、エイルがやられちまった!!」

「んなことはわかってんだよギグス!!エイルを安全なとこに運べ、その間はおれがなんとかする!!」

「くそ、いつものルートに盗賊たちがいなきゃこんな危険なとこ通ってなかったのによ!!」

「文句はあとにしろ!!エイルと護衛対象は死んでも守るぞ!!」







近づいていくとわかる。男たちが2人、カマキリみたいな化け物と戦っている


その2人の男の後には馬車が一台


どうやらあの2人はあれを護るために戦っているみたいだ




どんどん距離が近づいていく


俺は今気づいた、着地のことまったく考えていなかったことを



「くそ...次はなんだ!!」

「わからねぇ、空から何か降ってきてみたいだ」



「なんとか着地はできたが、クソいてぇ...」


とりあえず俺は全力で着地の衝撃を流して、地面へと降り立つ


(痛い...足が痛いですぅ...すごいじんじんします...)



そうか、エリーナは俺と感覚を共有してるわけだから痛覚も共有するわけか


次からはもっと考えて着地しよう



「まぁそんなことよりもだ...」



俺は目の前の魔物に目を向ける


スキャンかけるとジャイアントマンティスという名前が出る


巨大なカマキリか、見た目通りの名前だな



俺はとりあえず男達とジャイアントマンティスの間に着地したわけなんだが


男達は呆然と俺を見ている

いきなり空から落ちてきて驚いてしまったのだろうか



「なぁ、これって倒していいんだよな」

「あ、あぁ...」

「ならやっちまうか」



俺はフェイトを抜いてジャイアントマンティスと向き合う


ジャイアントマンティスは牙を震わせながらギチギチと鳴く




「......って、おいアンタ!!そいつは危険種のジャイアントマンティスだぞ!!そんな簡単に倒せる相手じゃねぇ!!」



危険種ねぇ、まぁ確かにあの鎌で斬られたら一溜りもないかもしれないけど



「危険ってわけでもねぇな」


俺は魔力を溜めて身体に循環させる、そして一気ジャイアントマンティスへと近づく


ジャイアントマンティスとすれ違う



「まぁこんなもんか」




俺が振り返るとジャイアントマンティスの身体がバラバラになっていく




「おいおい嘘だろ...ジャイアントマンティスが」

「あぁ...一瞬だけ魔力が膨れ上がったが、あれは相当だったぞ...」



男達2人はまだ呆然としていた



「おい、大丈夫か?」

「あんた一体何者だよ...」

「ん?俺の名前はアレウス...ただ......旅人だ」



咄嗟に言ってしまったが、旅人ってのはあながち間違ってないから別にいいか



「旅人って...ってそんなことより護衛対象と...それにエイルは無事か確かめねぇと!!」



男達2人はなにかに気づいたように慌てて馬車の方へと向かう



「護衛対象は無事だ、だがエイルが...」

「くそ...やっぱり致命傷だったか...」



男達2人が横たわっている仲間らしき男を心配そうに見ている



横たわっている男の腹からは血が流れている、確かに致命傷だな



(あれはかなり不味そうですね...状況が状況ですし...もうたぶん...)



まぁあのままほっとけば死んでしまうだろうな


だけどここには偶然にも回復魔法がいる俺がいるわけだ


あれくらいの傷だったら......治せるな



なるほど、回復魔法は回復対象の傷の程度かわかるのか




「悪い、ちょっとどいてくれ」

「どいてくれって...エイルは重症なんだぞ!!」

「あぁわかってるよ、だから俺が治してやるよ」



ガタイがいい方の男に怒鳴られながらも俺は横たわる男のそばに座り、手をかざす



回復魔法の発動も雷魔法や重力魔法と同じで魔力を練れば発動可能だ


手のひらから緑の光が灯り、男の傷がみるみる塞がっていく


「おいギグスこれって...」

「あぁ間違いない、回復魔法だ」

「あんだけ強くて回復魔法も使えるって...なんつー旅人だよ...」



そばでそんな会話をしている2人を横に俺は傷を完全に回復させる




「おい、治療は終わったぞ。出血で失った血は元に戻せないから安静にしてやれ」


2人は呆然として俺を眺めてるだけだ、なんだ俺に惚れたか?


(アレウスさんってこんな時でも冗談を言いますのね)


何が悪い、余裕な男の方がカッコイイだろう?



「エイルは助かったのか?」

「あぁ助かったぞ」

「本当か?」

「本当だ、心配なら見てみろ」


そう言うと男の2人は倒れている男の元に駆けつけ、確認している。二人のそんな様子を見てると馬車から一人の男が出てきた


「すみません、魔物はどうなったんでしょうか?」

「あぁビッグマンティスか?もう倒したよ」


俺がそう言うと男はホットした様子で俺に質問した


「ところであなたは?」

「あぁ街に向かっている旅人だ。名前はアレウスという。ちょうど通りかかった時に襲われるところに出くわしてな、加勢したってことだ」


「それはありがとうございます!」


そうは言うと俺の手を握って感謝してくる

暑苦しい人だな...とか思ったら失礼だよな


(いや、それもう思ってますよね?)


そうとも言うけど、今は静かにしてなさい


「す、すみません!もう死ぬと思っていたもので。私は商人をやっております、エドと申します」


護衛対象とかいってたけど、なるほど商人の商品を運ぶ護衛をしてたわけか


「あの馬車にはうちの奴隷たちが入っています。商品とはいっても人でありますから、私だけ逃げるわけにも行かず...」



奴隷、奴隷か...この世界って奴隷とかって普通にいる世界なのか


だけどこのエドさんを見ている限り、俺が考える奴隷の扱いよりももっとかなり丁重に扱っているみたいだ


「仲間を助けてくれてありがとう。俺は冒険者のカインだ、横のでかいのがギグス。仲間を助けてくれて本当にありがとう」


「ギグスだ、感謝する」


ふたりはそういって俺に礼をする


「顔を上げてくれ、俺はアレウスだ。助けたのは偶然見つけたからだよ」


俺がそう言うと2人はいきなり顔を上げ


「そんなことはない!もしアレウスが来てくれなかったら俺達全員はビッグマンティスに殺されたいるところだった」


こいつがいきなり呼び捨てにしてきたな、距離感一気に縮めてきたな、おい


俺がそう思ってるといつの間にか復帰したエドさんもこちらに来て


「アレウス様がいたからこそ、私達は生きているのです。この感謝の気持ちは受け取ってください」


そこまで言われて嫌と言えるほど強くないので俺は渋々了承した


俺は助けた礼にと馬車に乗せて街まで一緒に連れていってもらえるらしい、これはありがたい


ちなみに倒れている男も一緒だ、名前はエイルというらしい、目を覚まさないけどそのうち目覚めるだろ


カインから聞いた話だが馬車なら街まで3日でつくそうだ。徒歩で10日だから大幅な短縮だろう


馬車の中では暇なので奴隷たちをエリーナと一緒に見ることにした

馬車の中には奴隷が四人いて、身なりもしっかりしていた、大切にされているのだろう


(ひとりはフードをかぶっていますが全員女性ですね)


「(あぁそうだな、犯罪者には見えないから借金奴隷と言った所だろうか)」


俺はエリーナとこそこそ話してると奴隷の1人がこちらに話しかけてきた


「あの、あなたが私たちを助けてくれたのですか?」


話しかけてきた女性は赤髪の三十代後半ぐらいであろう女性だった、流石に「調査」を使って人の素性を調べるのはよくないよな


でも見たところ、仕草とかの丁寧さを見るとなんというか普通の人には見えない


「通りかけた所を偶然ですよ、あまり気にしないでくださいよ」


正確には空から降ってきたわけなんだけど


俺が答えるといきなり泣き出した、他の二人の奴隷も泣いているようだ。焦った俺は


「ちょ、ちょっといきなり泣かないでくださいよ!」


(アレウスさんは女泣かせですね)


エリーナが冗談を言ってくるが、かまってる暇はない、俺が泣くのをやめさせようとすると


「もう私達は死ぬと思っていたんです、ほんとにありがとうございます」


とエドさんと同じようなことを言ってお礼を言ってきた。

やはりビッグマンティスは危険な存在なんだろうか、一撃だったのでいまいち実感が湧かない


その後奴隷たちを色々とおしゃべりをした。彼女達は借金奴隷のようだ。

悲しんでいると思ったのだがエドさんはやはりいい人らしくいい環境のとこに売られるらしく、売られ先も決まっているだとか、そうこう話してるうちに街につきそうだ


この3日間でエイルは目を覚まし、冒険者3人組とは仲良くなり、モンスターに襲われることもなく、奴隷の人たちと仲良く話して時間が過ぎていった。


しかしフードかぶった彼女とは1度も言葉交わすことがなかった。


お読みいただきありがとうございます

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