絶剣フェイト(変態)
よろしくお願いします
「.........うーん......うん?」
「よぉ、やっと目を覚ましたか」
どれくらい経ったか知らないがやっとフェイトが目を覚ます
「私は...一体...」
「悪いな、なんかお前のテンションがおかしくなってたから一回これで斬って寝てもらったんだよ」
「あぁそういえば...申し訳ございません、お恥ずかしいところをお見せしました」
さっきの発情ともいえるテンションはなんだったのか
今のフェイトは会った時同様クールである
正直起きてもあのやばい状態だったらどうしようと思ったが、大丈夫だったようだ
「とりあえずこれはお前に返しておくよ」
「いえ、貴方様は私を所有するに相応しいお方。どうかそのままお持ちください」
「いいのか、半ば無理矢理だったんだが」
「いえ、貴方様は証明して下さりましたから。私はあなたの所有物となりましょう、どうぞ馬車馬のようにご扱いくださいませ」
「いや、ひどい扱いはするつもりは無いんだが...」
この剣...というかこの目の前にいるフェイトはすげぇ使えるとは思うんだけど、なんか正直使いたくない気持ちが出てくるのは気のせいじゃないだろう
「はぁ...貴方様の剣として私が振るわれるなんて...濡れますね」
えぇ...ほんと使うの迷って来たわ...
◇
「なぁお前ってなんなの?」
「私ですか?」
フェイトが再び発作(発情)を起こしたので、それが落ち着くのを待ってから色々と気になったことを聞く
「私はですね...そうですね、剣の精霊といったところでございましょうか」
「剣の精霊か...ってことはお前は元々剣で、何かしらでその姿になってるってことか」
「えぇそうでございます」
じゃあこの目の前にいる女は絶剣フェイトという剣が擬人化された姿ということか
だがそうなるとあの変態性はどこから...いや、あれは考えない方がいいだろう、というか考えたくない
「お前はなんでも斬れると言ったがほんとになんでも斬れるのか?」
「えぇ、この世の事象すべてを。そして私ならばこの世の理すらも斬ることが可能でございます」
「この世の理って.....例えばでいいからわかりやすく教えてくれないか?」
「そうですね...例えば私で相手の腕を斬るとします。その時に腕を斬るのではなく、対象者の腕があるという現実...すなわちそういった概念を斬ることもできるということです。これは抽象的なものを斬る場合の応用ですね、貴方様が私の意識を斬ったときのように」
「なんつーか、発想力みたいなのを求められそうな力だな」
意識を斬る、なんてのもちょっと思いつきでやったところあるしな
使い手が斬るという意識さえあれば文字通りなんでも斬れるというわけだろう
「ただ現実や概念を歪ませるのはおすすめできません」
「なにかあるのか?」
「えぇ、斬って現実や概念を変えるということはこの世界に反発するということです。そうなるとこの世界から弾かれる、つまり存在を失う危険性も高いということです」
「なるほどな、この世界の理を変えようとすれば変えた反動が自分に返ってくるわけか」
ノーリスクでなんでもというわけじゃないのか
「理を斬らなければならない状況というのは万が一の状況なので、普通にただの斬りやすい剣として扱っていただけたら幸いです」
「まぁそうだな、護身用としてはもったいないくらいだな」
「貴方様の実力に護身用というものは必要ないと思いますがね」
「さぁどうだろうな、俺が自分が割と戦えるのはなんとなくわかったが...いまいちこの世界がどれくらいのものなのかよく知らないんだよ」
エリーナに色々聞いてる途中でここに飛ばされてきたわけだしな
「貴方様はこの世界に来たばかりだとおっしゃってましたが、本当にそうなのですか?いくら転生者と言えど、転生初期から強いものなどおりません」
「あー...そこらへんはよくわからない。というか俺がよく転生者ってわかったな」
「昔何人かの転生者を見てるので、そういったことを知っていたのですよ」
なるほどな、俺以外にもいるってエリーナが言ってたわけだし
「と言っても俺は正規の転生者じゃないみたいだけどな」
「正規じゃない...つまりイレギュラー...それはまた珍しい、あの人以来ですか」
「あの人?」
「ちょうど私の知っている転生者にもイレギュラーが1人いるだけのことですよ」
なるほどな
フェイトはかなり昔から存在していたみたいだし、俺みたいな転生者を見ていてもおかしくはないか
そんだけフェイトはすごいって思っておけばいいか
「んで話は戻すけど、俺はこの世界で安全に生きていけそうか?」
「そうですね...私が表世界に来たのは数百年ぶりですので正確なお答えができるか不安なのですが...貴方様が勇者のように世界をお救いになろうと思わなければ危険な目にあうということは皆無でしょう」
「勇者ね...別に俺は正規の転生者じゃないから勇者はやる気はないな」
「えぇ、えぇそれがいいでしょう。勇者なんてやるものではありませんよ」
フェイトが弾んだ声で答える
たぶん昔に勇者となんかあったんだろうな
勇者が善としたら、フェイトは明らかに悪の部類に入るだろう
絶剣、世界に終焉をもたらすことができる剣。明らかに善の者が所有するものではないだろう
その理論でいくとフェイトを所有することになった俺は悪に入るんだけど...まぁ別に世界とかどうでもいいからな、自分に降りかかる火の粉だけふり払えればいい
つまり悪ではない、それでいい
「あとさ、すごい大事なことなんだけど、ここってなんなの?現実ではないだろ?」
「ここは私の結界で作られた虚無の空間です」
「虚無ね...俺帰れるの?」
「えぇいつでもおかえりいただけますよ」
「そうか、じゃあ逆にいつでもここに来られるのか?」
「いえ、来られるのはごく限定的でございます。貴方様とお話できるのも次がいつになるかわかりません。ですから私に聞きたいことでしたら、今聞いておくのが一番かと」
「そうか......いや、でも今は何も知らなすぎて気になることが少ないからいいかな」
実際エリーナいるし、フェイトに聞けなくてもなんとかなるだろう
まぁ聞く相手があのアホだと思うと色々心配なんだけど
「ではお帰りになられのです?」
「あー...そうだな、悪いけどさ」
いや、そんな寂しそうな目でこっち見るなよ
意識しないようにしていたがこのフェイト、剣の擬人化したやつのくせに美人だ
妖艶で儚げ、必要も無い色香を纏っている
「そうですね...いつまでもここにいる必要はございませんからね」
「あぁ次がいつかはわからんが、次会った時も色々教えてくれ」
「えぇそれはもちろん。私は貴方様のためにありますから」
次会うときはそのなんか重い感じをやめといてほしいね
「それでは貴方様、ごきげんよう」
フェイトがそう言うと視界が白く染まっていく
「ふふっ、言うのを忘れておりましたがこの世界は力が力を呼びます。ではお元気で、我らが王よ」
お読みいただきありがとうございます
改稿前の作品に時にぶっ飛んだ設定のままフェイトを使っていたんで、しっかり設定づけさせてもらいました