運命の女神
よろしくお願いします
(も...もーし!!聞こ...すかー?)
なにか聞こえる、これは誰かの声だ
(もしもーし、ほんとに聞こえてないんですかー?おーい!)
やっぱり聞こえる、これは俺に対して呼びかけているのか
(もしもーし!!......ふむ、まだ起きてませんね)
たぶんだけど、どうやら俺に声をかけているようだ
(ばーかばーか、あほ、間抜けー、あんぽんたーん!!)
「おい、起きてるぞ?」
(へっ、わわっ!お、おはようございまーす...)
この声のヤツさっきの悪口を流そうとしてやがるな
「さっきなんか言ってなかった?」
(え、な、なんのことですか?普通にあなたのことを呼びかけてただけなんですよ?)
こいつ何がなんでも隠そうとしてるな
まぁ深く追求するのはこっちとしても面倒くさいから、やめておこう
「それよりここは...?」
俺は起き上がり周りを見る
ここはどこかの部屋の中みたいだ
そしてどうやら俺は床に倒れていたらしい
部屋の中は質素で食器棚などの家具が置かれていた
そして目の前のテーブルの上には溶けてなくなくなりかけたロウソクとカップが2つだけある
(これはここに誰かがいた痕跡ですね)
「あぁそうだな...って自然と話しかけてきたがお前は一体誰だ?」
(え、私のこと覚えてないんですか!?スーパー美少女、1億年に1人の逸材と言われている運命の女神エリーナさんですよ!?)
「とりあえずお前が嘘ついてるのはわかったよ、スーパーなんちゃら...エなんちゃらさん」
(嘘じゃないですよ!スーパー美少女、1億年に1人の逸材は嘘ですけど、運命の女神エリーナというのは本当ですからね!?あと、ほんとに覚えてないんですか?)
「あぁ、聞いたことがあるような声だとは思うがイマイチ...」
声と...あとこの頭悪そうな感じなのはなんか覚えがあるんだけどな
(んー...ここにやって来るまでに結構時間かかりましたからね...多次元移動による大幅なタイムラグが発生してしまった可能性が...)
なんかブツブツ言ってるが何の話をしているのかまったくわからない
(ほんとに覚えてないですか?あなたは私の手によって天界からこの世界に転生した来たんですよ。よく思い出してみてください)
転生...?すごい聞き覚えのあるワードだ
この謎の声の女...自称女神のエリーナの言ってるように俺は本当に何か忘れてる気がする
「.........思い出したぞ」
(本当ですか!?)
「あぁ、魂だった俺をお前が新たな人生を歩ませるために転生したんだよな?」
(そうです、そうです!よかったですよ、思い出してくれて)
あぁしっかり思い出したよ、俺の了承もなしにこの世界に転生してくれたことをな
まぁこのこと追求しても無駄な時間になりそうだからやめておくか
「とりあえず詳しい話を聞かせてくれ」
(そうですね、どこから説明しましょうか......あ、そういえば私はあなたの事をなんて呼べばいいんでしょうか?魂さんとはもう呼べないですし...)
「あー...そうか、俺には名前が無いのか」
確かに前世の記憶は削除するとか言ってたな
つまり今の俺には名前が無い
ここは適当に名前を考えるべきなのか......
「アレウス」
(え?)
不意に自分の口からその名前が漏れ出た
アレウス
その名前が頭から離れない、一体どうしてだ?
(アレウス...もしかしてあなたの名前ですか?)
「いや.........」
俺は否定をしようとするが、言葉を止める
「そうだな...俺の名前はアレウスで頼む」
どうしてかこの名前は自分にしっかり来る
アレウス、この名前以上に自分が求める名前は出てこないだろう
(アレウスさんですか...ふむ、なかなかいい名前ですね。じゃあこれからアレウスさんと呼びますね!)
「あぁ頼む」
そして俺はついでに説明の続きを頼む
(んー、何から説明すればいいか...じゃあまずどうやって転生したかってことを話しましょうか?)
「いや、どうやってよりどうしての方を俺は知りたい」
(アレウスさんを転生した理由ですか......うーん、いま1度考えてみると特に理由はありませんね。ちょうどあなたの魂が区域外から漏れてるのを発見して、そして偶然的に勇者プログラムが発動可能だったからでしょうか?)
この女神、なんとなくわかっていたが何も考えていなかったな
バカだ、間違いなくエリーナはバカだ
しかし勇者ってなんだ?
「なぁその勇者プログラムというのはなんだ?」
(勇者プログラムはですね、いわゆる魂をこの世界に転生させる起動装置ですね。実はこの世界には天界に悪影響を及ぼす邪神が封印されてましてその邪神を封印するために何百年かに一度勇者を送り込んでいるんです)
「え、じゃあ俺は勇者にならなくちゃいけないのか?」
(いえいえ、アレウスさんは違法で転生してきたので勇者をする義務はないので安心してください)
いや、全然安心できないんだが
むしろ不安が何倍にも膨らんでしかいない
というか勇者って実在するんだな
(何かほかに質問はありますか?)
「んー...そうだ、エリーナお前今どこにいるんだ?もしかして天界から俺に話しかけているのか?」
(いえ、私はアレウスさんの頭の中にいますけど?)
「.........出ていってくれますか?」
え、何勝手に人の頭の中はいってくれちゃってるの?
(大丈夫ですよ、思考とか勝手に読みませんから!とりあえずアレウスさんを通してアレウスさんが見ているものは見せてもらってますけど。それ以外のことは私の力をもってしても無理ですから)
まぁそれくらいならかまわないが...
こいつたぶん自分がやろうとしたことは他人になにも聞かないで勝手にやるタイプだな
普通に問題児だろ
(それでですね、私的に人がいる痕跡があるので色々話し合う前にこの建物を調べた方がいいと思うんですよ。何か危険があってよくないですし)
「まぁたしかにそれは一理あるな」
とは言い返したものの、ここに危険は微塵も感じない
むしろ安心感すら感じるほどである
でもそれでも何か...
「足りない...」
(え、なんですか?)
「いや、なんでもない。とりあえず部屋を見て回ってみるか」
俺はそう言って部屋を一つ一つ見て回る
部屋の数はそんなに多くなく、おかしい所はなかった
唯一あげるとすれば、何も無い空っぽの部屋だけだろうか
あそこだけなぜか抜けていた
まぁ普通に使われてないだけだろう
「部屋の中は問題なしだな。もうこの際だし外に出てみるか?」
(そうですね、辺りを見ておくのはいいかもしれません。でも気をつけた方がいいですよ?外には危険なモンスターがいますから)
エリーナがくだらん冗談を言ってみるみたいだが流しておこう
いちいち突っ込んでたらこっちが疲れる
「モンスターなんているわけ......」
『ウホッ?』
「いるーー?!!?」
(いるーー?!!?)
扉をあけていざ外の世界へと思ったら、目の前に全身白いゴリラが目の前にいた
4メートルくらいのでかさか...?俺がしってるゴリラよりふた回りはでかい
『ウホッ、ウホッ、ウホォォォッ!!』
巨大ゴリラがドンドンドンドンドンと胸を強く叩く、ドラミングというやつだろうか
(あ、あ、アレウスさん!!扉!!扉はやくしめてください!!)
「えっ、あー...」
うーん、びっくりはしたけど
別に怖くはないんだよな、不思議と落ち着いている
自分より焦ってる人を見ると落ち着くとかそういうのじゃなくて、シンプルに恐怖を感じない
『ウホォォォ!!』
ゴリラは怒鳴りながら俺の元へと突進してくる
(アレウスさん!何してるんですか、早く逃げないと!!)
俺はエリーナの言葉を無視して、自らもゴリラへと近づいく
わからない、無意識に身体がそう動いていた
「おらっ!!」
そして自然にゴリラの腹に回し蹴りをくらわしていた
そして呻きもあげずに彼方へと吹っ飛んでいくゴリラ
(え、えぇ...なんなんですが今の...)
「いや、俺にもよくわかんない」
ほんとに、ほんとにただ身体が自然に動いただけだ
驚いてはいるけど、思考は全然クリアで落ち着いている
(流石は転生者といったところでしょうか。アレウスさんも問題なく特別に強いみたいですね)
「いや、それも地味に驚いてはいるが...今のなんだったんだ?」
(あれですか?あれはモンスターですよ?さっき言ったじゃないですか)
「勇者といい、モンスターといいここはファンタジー世界か何かか?」
(なるほど、アレウスさんの知識ではそういったものは空想の話なんですね。アレウスが言う通りここはいわゆるファンタジーがごく普通の世界です。勇者もモンスターも魔王もいます、ちなみに魔法だって普通の世界なんですよ)
「いまさらだが、とんでもないところ転生させられたな」
(まぁまぁ、この世界を安全に楽しむためにアレウスさんにもファンタジー能力を与えましたから問題ありませんよ)
「マジで?」
まさか俺も魔法とか異能とかを使えちゃったりするんだろうか?
(覚えてませんか?私が色々転生前に質問したりしたんですけどね、あれを元に一応アレウスさんには能力をいくつか付与しておきました。またそれとは別にアレウスさんの前世の記憶を燃料に別の能力も付与されてると思いますよ)
なるほど、確かにそんなことがあったかもしれないな
(前者は私が付与したのでどんな能力がわかってますよ。まず1つ目は「調査」ですね、簡易的に対象物を調べることができますよ。そこら辺の木とかに向けてスキャンと念じてみてください)
言われた通りすぐそこにある木にスキャンと念じる
イーストツリー
なるほど簡易的というのは名前がわかるということか
なかなか使えそうな能力だな
(それでですね、その能力をアレウスさん自身に使えば私も把握出来てないアレウスさんの能力がわかるかもしれません)
名前しかわからないから意味無いと思うが...
俺は自分に向けてスキャンを念じる
アレウス
人族
男・17歳
回復魔法、雷魔法、重力魔法
「調査」
「絶対契約」
まさか名前以外も出てくるとは
エリーナが知りたい異能の方もしっかりわかったのは意外だな
しかし魔法が3つに「調査」とは別にもう一つよくわからないのか
(どうでしたかアレウスさん、わかりましたか?)
「あぁ能力っぽいのは5つあるな」
とりあえず5つの能力の名前をエリーナに教える
(私が知らなかったのは3つの魔法ですね)
「じゃあこの「絶対契約」はどんなのか知ってるのか?」
(はい、もちろん。それは自分と他者があるものを共有できるようになる能力です。また一契約するごとに一つ何か物を得ることもできます、契約報酬物ですね。その共有するものがアレウスさんにとって重要なものであるほど、その手に入れられるものが強大なものとなります)
「重要なものでいうと何かあるか?」
(んー、例えば眼球とかですかね?共有しているということは相手の眼球が破裂した場合アレウスさんの眼球も破裂するということですから、ほらとても大事なものを共有してますよね?)
「なるほど、共有というよりは代償という考え方か」
(はい、逆に相手が自分より優れたものな場合はアレウスさんは得をすることになりますね)
そうか、そういう考え方もあるのか
なんというかなり頭を使う能力だな
(ちなみに一回契約しちゃうと破棄するのは不可能なのでこの能力を使う場合は考えながら使った方がいいですね)
なるほど、そういった厳しい制約もあるわけだな
軽々しくホイホイと契約をしない方がいいだろう
(それでものは相談なんですが、アレウスさん私と契約してくれませんか?)
「それは...共有するものによるな」
(ずばり、私がアレウスと共有したいものは感覚です!!)
「感覚?」
(はい、現在は視覚のみ共有してますがいわゆる聴覚嗅覚といった他の五感もアレウスさんと共有してみたいのです!!)
「理由は?」
(私アレウスさんの頭の中にいるんでそういったものを何も感じれなくてつまらないんですよ。そういう点でいうと私と共有した場合私が感じるものはありませんから代償という問題点はかなり解決されます)
しかも感覚となるとかなり代償になるから、その代償の問題がなくなる場合
この契約はかなりノーリスクハイリターンになる可能性が高いな...
「なんかもっと手軽なものとかにした方がいいんじゃないか?」
(んー...でも今の私にはそれくらいしか共有できるものないんですよ。それに代償が大きい場合いいもの貰えますから、この世界をまだよく理解出来てないアレウスさんにはそういったものが必要だと思いますよ?)
「あー...まぁ確かにな」
エリーナの言ってることは正しい
だけど正しすぎて逆に怖い、俺騙されてるんじゃないか?
(ふふふ、味覚を共有したらこの世界の美味しいものをいっぱい...じゅる...いけない、ヨダレが...)
......俺の考えすぎだったかもしれない、そういえばこいつバカだったな
こういう時は思い切りよくいってみた方がいいしな
「いいぞ、エリーナ共有してやろう」
(ほんとですか!?ありがとうございます!!やり方はフルコンタクトと念じて貰えばできますよ)
そこは「調査」と同じやり方なのか
とりあえず言われた通りにフルコンタクトと念じる
どうやら契約相手を指定しろと言われてるみたいだ
契約相手をエリーナに指定...
そして次に頭の中に文字が浮かぶ
これを読めということか
「我アレウス、汝エリーナに感覚の契約を求む」
(なるほど、相手の同意がないと契約できないのは私も知らなかったです。そしてもちろん答えはイエスです!!)
エリーナが同意した瞬間に俺の足元が光りはじめる
これは魔法陣か?
そしてしばらく輝いた後に消えていく
「上手くいったのか?」
(えぇいきましたよ...外って結構寒いんですね、よく普通でいれますね)
「そうか?別にそこまで寒くはないと思うが?」
涼しくて丁度いいといった感じじゃないか?
(どうやら感覚は共有できても感じ方は個人のものなんですね)
俺が受け取った感覚をどう受け取るかは俺の感じ方ではなくてエリーナの感じ方で決まるってことか
(うぅ寒いです...とりあえず契約したんでもらえるものもらったら、早く建物の中に入りましょう)
「おい、結構な代償払ったんだから適当にするなよ...」
こいつもう契約報酬物のことはどうでもいいと思ってやがるな
しかし報酬はどうしようか...
実はさっきから何が欲しい?と問われ続けている
どうしたもんか...
「まぁ特定の何かが欲しいって訳ではないし...とりあえずこの代償に見合う便利なものをよこせ」
......何も起こらないぞ?
辺りを見渡すがどこにも何もない
だが一つだけおかしなものがある
「おい...なんだれ?」
(.......あれは...黒い雲ですね...)
空を見上げると黒い雲が俺の真上に浮かんでいた
そして突風が吹き荒れる
(アレウスさん!!一体何を求めたんですか!!)
「し、知らねぇよ!!便利なものって言ったのお前も聞いてただろうが!!」
(そうですけど、あれどうみてもまともなものじゃないですよ!!)
んなことわかってるよ!!
やべぇ、どうする
逃げるか?いや、風が強過ぎてまともに動けそうにない
「くそっ...」
何かがやってくるのを待つしかないか...
「くるぞ...」
そしてそれは轟音と共に降りてきた
眩い閃光に俺は腕で顔を隠す
「なんなんだよ...」
突風が消えていき、黒雲もどこかへいってしまったのか空は晴れていた
「これが落ちてきたのか...」
そして目の前にあったのは一本の黒い剣であった
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