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ようこそ、理想郷へ(改稿版)  作者: 林桃華
第1章 旅の始まり
18/21

18話

どうも



◇ミラ視点   



ご主人様とエミリアさんが無事に脱出したことを確認して私は部屋であの男、オラス・ノマロを待つ


エミリアさんを迎えにくるのはオラス・ノマロではなく、その部下の可能性もあるが私は何故かオラス・ノマロが来ることを確信している



心を落ち着けながら色々なことを考える、これから起こるであろう展開、自分の今の状況、そして母のこと──



母は今の私がどうなってるかを知らない、母に危険が及ばないように母には黙ってオラス・ノマロの命令を聞き奴隷に落ちた


母の無事を願いながら、母の教えを思いだす


『あなたが運命の相手だと思う人に出会ったのならあなたの全てを捧げて結ばれる努力をしなさい』


母は私にそう言いながら、料理や掃除、家事などの奉仕ごとを私に教えてくれた


運命の相手の話を聞くたびに、そんな乙女チックなことを考えてられないと年齢を重ねるたびに思い始めた


だけど、あの人と出会った瞬間に母のその言葉をすぐに思い起こさせた


その男が私がご主人様と呼ばせてもらっているアレウスという名前の男性

私はあの人こそが私の運命の人だと確信している。あの人を見た時、あの人と言葉を交わした時私の全てをこの人に捧げようと思った



多分これはいっときの感情に任せた思考だとわかっている。だけど私は自分のその感情を選び、いまここにいる



母さんがそれを知ったらどう思うだろうか───



そんな思いに耽っていたら、扉の前に人の気配を感じる



そして扉が開くと私が今最もあらわれた欲しい存在がそこにはいた



「麗しの我が─誰だお前は‥??」


入ってきた男、オラス・ノマロを私の顔を見て困惑する


「こんばんは、オラス・ノマロ様。夜分遅くに申し訳ないのですが私と踊っていただけませんか?」


私の復讐に付き合ってもらいます




◇アレウス視点



ピィィィィィ!!!!




甲高い笛の男が夜の街に鳴り響く



この音がした方向はオラス・ノマロの家がある場所だ


「どうやら色々とバレたみたいだな」


ミラはもう既に誰かしらと戦っている可能性が高い


オラス・ノマロだけだといいが、あの感じだとやつの部下たちが集まっている可能性が高い


ミラはオラス・ノマロとの戦うこと、ミラのその復讐とも言える願いを邪魔させないためにも俺はやつの部下たちと相手をしなければならない



「あつまれ!!火事が起きたぞ!!!!」



オラス・ノマロの家に近づくと何故が庭の草木が燃えてちょっとした火事になっていた


そしてやつの部下たちがその火事の消火活動をするために集まっていた

その火事の現場はエミリアが監禁されていた部屋の窓に面した庭であった



庭に集まっているやつらは目の前の火事で精一杯だから俺はこっそりと空から窓の方へと近づく



「はぁぁぁぁっ!!!」


窓を覗くとミラがオラス・ノマロに向かってナイフを振るっていた



「くそ!!どうなってやがる!!おい!!誰かいないのか!!!おいっ!!!!」



オラス・ノマロをミラの攻撃を避けながら必死に叫ぶ

だが何も反応がないのを感じてオラスは舌打ちをする



(お庭が大火事ですもんねぇ、外にいる人たちはそれどころじゃないって感じですね)


そうだな、んでこの部屋覗いて気づいたけどさっきこの部屋を一番明るくしていたランタンが無くなってるからミラがそれを外に投げたっぽいな



エミリアを迎えにきていた時はもっとこの部屋は明るかったが、彼女を脱出させて戻ってきてみたら蝋燭が数本点いてるだけの薄暗い部屋となっていた



(なるほど、別の騒ぎを起こして他のものに気づかれにくくし、さらに自分の有利な環境を作ったと)


そんなところだろうな、もしかしたら戦いの最中にランプが窓から外に吹っ飛んでった可能性もあるけどな



とりあえずミラが心置きなく戦えているようでよかった


火事の騒ぎがおさまるまではこの戦いを邪魔される可能性は低いだろう

それまでは俺もゆっくりとミラの戦いぶりを見学させてもらおう



ちょっと二人の戦いぶりを見ているとどんな感じの流れになっているか理解できた





ミラはとりあえずオラス・ノマロを逃げないように扉からできるだけ遠ざけて戦っている

そしていつも通り相手の攻撃を避け、隙を狙ってナイフで攻撃する戦い方だ


めちゃくちゃ冷静だな、しっかりと考えて戦っている



そして一方のオラス・ノマロの方は…



「くそ!!ちょこまかと動きやがって!!」



風の魔法を放つもミラに当たらずイライラしながら叫ぶ


当たってはないが今の風を刃とする魔法は結構な威力が出ていた。もしあれが1発でもミラにしっかりと当たってたら致命傷を負うことになっているレベルの一撃だ



(でもその威力の割には壁に傷とか全然点いてなくないですか?)


たしかに言われてみればそうだな、ミラが避けた魔法は全部壁や床に当たっている


俺は試しに床に軽く雷魔法を放ってみる

穴が開くような威力ではないがそれでも床を焦げたりするはずなんだが、その感じもない



(ここってもしかして簡単には内側からは被害できない部屋なんじゃないですが?エミリアさんを監禁してた部屋でもあるわけですし)



たしかにな、部屋の内装的に普通の部屋にしか見えないがそういう特別な仕様が施されてるのかもしれない



とりあえず話は戻すが、オラス・ノマロ結構やるな。冷静さを失ってるように見えるがミラの攻撃をしっこり避けてるし魔法の実力もそれなりにある


多分これが悪魔との契約によって得ている力なんだろう


明らかにそういう実力者にも見えないし、戦い慣れてるようにも見えない



ミラが圧倒的に有利に見えるが、オラスの魔法が1発でも当たったら終わり。そういう戦いだ


そんな戦いの最中オラス・ノマロがあることに気づく



「お前のこと思い出したぞ。お前父上のところで働いていたハーフエルフだろ。本当は私の物になっていたはずの…!!」



おっ、どうやらオラスがミラの正体に気づいたみたいだな



「こんなことしてどうなるか分かってるのか?これが父上に知られたお前の母がどんな目に合うのかを!!」


オラスは自分が有利にでもなったかのように笑ってミラにそう問いかける



そしてミラは構えをとかずにこう答える



「えぇたしかに母に危険が及ぶことは願っていません。それが私に対する脅しになることも理解しています。ですがこれから死ぬあなたにとってそれは関係ない話では??」



!?俺はミラの回答に思わず笑ってしまった



「だ、だれだ!?」


俺の場違いな笑いにオラスが気づき、俺の方を向く



「お、お前は教会にいた用心棒…!!」

「よぉ元気にしてたから?そんな怖がるよな、俺は手を出さないからよ。それよりよそ見してても大丈夫か?」

「なに…??くそっ!!」



オラスが俺に気を取られてる隙にミラがオラスを攻める



(アレウスさんなんで教えちゃうんですか?)



いや、俺というイレギュラーのせいで勝敗が決まっちゃうのはミラに悪いかなって思ってたさ


(何ですかそのどうでもいいフェアプレーの精神は…)



俺とエリーナがくだらない話をしている間にも戦いは続く


だがオラスはさっきの会話で動揺したのか段々と勝利がミラへと傾き始める



そしてついにミラのナイフがオラスの首元につきつけられ、勝者が決まった



「こ、殺さないでくれ!!お前を無理やり奴隷にしたことは悪かったし、本当はお前の母親を傷つけるつもりなんてなかったんだ!!なっ!?なにか望みでもあるのか??それだったら─」


「命を奪うつもりですが冷めました。然るべき場所で裁きを受けてください」



そしね呆然としたオラスの即答日をナイフの握った拳で殴り意識を奪う




「お見事、やったなミラ」


軽く拍手をしてミラに言葉をかける



「ご主人様、見守っていただきありがとうございました。そしてあたな様のお陰で無事この男に復讐を果たせました」

「俺は大したことはしてないがな。それで踏ん切りはついたのか?」

「はい、最初は殺そうと思いましたが後々のことを考えましてこういう形で満足させていただきました」



なるほど、こっちのことを考えて気絶で済ませてくれたと

まぁミラは言葉通り満足してるみたいだしよかったよかった




「ですが、ムカつくので1発顔を殴っておこうと思います」



だがちょっと満足してなかったみたいなのでミラは気絶してるオラスのところへ戻る



「誰かわからなくなる強さで殴らないでくれよ」



俺はそう冗談を言って外の庭を眺める



どうやら無事火事もおさまったみたいだ

そうなると屋敷の主人を探すものが現れるかもしれない。というか火事という緊急事態が起こったため誰ががもともと探していた可能性があって、偶然この部屋にたどり着けていないという線もある



それだったら急いでオラスの身柄を確保してここを離れた方がいいな



ドッ──「えっ?」



謎の音とミラの声が聞こえたので振り返る



「なっ──!?」



振り返るとオラスの腹から巨大な怪物の手が生え、ミラの身体を貫いていた



そしてその巨大な腕がミラは振り払い壁に叩きつけようとする



「ミラ!!!」



重力魔法でなんとかミラが壁に衝突するのを防ぎ俺はミラにかけよる


「ご主人様…」

「ミラ、しゃべるな今すぐに治す」



俺はミラに回復魔法をかけて体に開いた穴を塞ぐ



「すみ、ません…ご主人様…」

「おい、ミラしっかりしろ!!!」


傷は治ったはずのミラの意識をどんどんと弱くなっていく


どうしてだ…っ!!!!




(アレウスさん、これは既にミラさんの魂がもう大きく傷ついてるのかもしれません…。魂が大きく損傷している場合器である肉体を位くらい癒しても意味がありません。そして回復魔法では魂の損傷を癒すことは不可能です…)


エリーナの悲痛な声が俺の頭の中に響く



「何か魂を癒す方法はないのか!!エリーナ!!!」



俺は怒鳴りつけるようなエリーナに問いかける



(ないわけではありません…ですが、その場合アレウスさんの命にも大きな危険が及ぶと思われます)



「方法があるならとっと教えろクソ女神…!!」


(クソ女神です…!?…はぁ、今アレウスさんがミラさん魂を癒す方法は一つだけです。ミラさんと契約すればいいんです。魂を共有することを条件に共有契約を発動させるんです)


「それでミラの魂を癒せるのか?」


(理論上は…可能だと思います。ですがもしその共有によってアレウスさんの魂がミラさんの魂に大きく引っ張られた場合アレウスさんの魂も損傷を負い、二人とも命を落とす危険があります…)




エリーナがあまり勧めたくない理由はそこにあるわけか…


だが俺には迷ってる時間はない



「それは俺が引っ張られなければいい話だろ。ミラ、聞こえるか?お前を助けるためにミラには俺と契約を結んで欲しい、どうだ?」

「けい…やく…私の全ては既に…あなたものです…ご主人様…」



ミラはなんとか力を振り絞って俺にそう答えてくれる。つまりイエスってことだよな、ミラ?


だったら迷いも遠慮はいらない


「我アレウス、汝ミラノバに感覚の契約を求む」

「は、い…ご主人…さま…」



ミラの解答をトリガーに俺とミラの間に契約魔法陣が発生する


契約の代償は互いの魂だ──



「ぐっ──!?」



一瞬全身が引き裂かれそうな痛みが走り、その痛みは魔法陣の光が消えると同時に引いていく




「契約は成功したのか?」



俺はそう呟きながらミラの様子を見る


ミラは先ほどまでとは違い、意識を失ってるようだが落ち着いた様子で呼吸をしている



「どうにかなったみたいだな…」



俺はほっと息をつき、安心する


(いや、正直言いますとこれ奇跡ですからね?10000回やって9999回アレウスさんも死ぬレベルのやつですからね!?本当に危なかったんですよ!!!!)


エリーナが怒り半分呆れ半分で俺にそう言ってくる


「でもお前俺に教えてる時点でやらせる気満々だったろ」

(実際それしか方法がありませんでしたからね、アレウスさんが自分の命を天秤に差し出すかどうかは私もわからなかったのですが…、まぁ結果良ければ全て良しです。というか運命の女神たる私がいたから成功したと言っても過言ではありませんね)


いや、過言だろ。都合よく物事捉えすぎるだろこの女神.なめんな




《ククク、美味そうな贄が二つもあるじゃないか》

「あ?」




突如現れた声の主の方を振り向く

そこには全身2メートルほどの真っ黒の人型生物が立っていた。そしてさっきミラの身体を貫いていた腕と同じ腕が生えていた



その生物の足元にはオラスが横たわっている



「てめぇは誰だ?」

《俺は悪魔だよ、人間。この男と契約していたね》


悪魔を名乗る生物は足でオラスを転がしてケタケタと笑う

なるほど、悪魔っていうのはこういう見た目をしてるわけだ



《さて、自己紹介も終わったところだから食事をさせてもらうぞ人間。もちろんその食事というのは、ボゲェっ!!?!!?!!?!?》

「うるせぇ、それ以上喋るなゴミが」


気づいたら俺は悪魔を殴っていた



ふつふつと身体の中で何かが煮えたぎる感覚がする


この悪魔がミラの命を奪おうとした──



俺のミラを──



《貴様人間の分際で─がぼっ!!!》


悪魔が喋ることをおかまいなしに悪魔の頭を掴み、窓の外に放り投げる


そして俺も悪魔を追うように窓から外へ出る


外にはまだ数人のオラスの部下が残っていたが今はそんなことどうだっていい


邪魔だけはさせないように威圧する



《ク、クソ…あがッ…!!!!》



翼を生やして空へ逃げようとしたから重力魔法で地面にたたきつけ、それを防ぐ


《ゆ、許してくれ…》

「悪魔が慈悲を願うのか?くだらねぇ」

《ゴッ!!!!》



さらに重力魔法を強めておしつぶす

すでに重力に押し潰されて悪魔の身体はひしゃげはじめている



《ぐ、そ…殺さないでくれ…》


何が喚こうがどうだっていい

終わらせるか、声を聞き顔を見るだけで怒りが湧いてくる



俺はそう考えながらフェイトを呼び出し手に握る



「死ね」



その一言と共にフェイトを振るう

悪魔は声もなく命を失い、そして砂のように散っていく



(一瞬でしたね…いやぁアレウスさんが怒りの頂点だったので声かけれませんでしたよ)


エリーナの間の抜けた声で冷静さが戻ってくる


人間本当に怒ると我を忘れるもんなんだな


(悪魔ボコボコでしたよ、慈悲のかけらもないし。いつもみたいな戦いを楽しむそぶりもありませんでした)


自分にもそういう面があるということがわかったから、これからは気をつけるとするか



周りを眺めると数人のオラスの部下と目が合い「ひっ…」と怯えられる


(アレウスさんの方が完全に悪魔のような扱いされてますよ)


ちょっと目があっただけでこんなビビるもんかね、これはあいつらの根性が足りないだけだ。絶対にな



俺は深く息を吐いて空を眺める

どうやらすでに朝日はのぼりはじめていたらしい、まじで怒りに頭支配されすぎて何も気づけてなかったみたいだな




とりあえずあらかたの問題は片付いたし、あとはこの問題が穏便に終わるように願いとしますかね──

ありがとうございました

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