17話
よろしくお願いします
ちょくちょくあげます
「はぁっ─!!!」
ミラが狼型の魔獣 ケイブウルフの喉元を掻き切り絶命させる
「いい感じだな」
俺はその様子を見ながら、こっちに来るケイブウルフを雷魔法で消しとばす
現在俺とミラはダンジョンに潜っている
ミラに実践形式での稽古を始めてから5日目、同じ相手が俺ばかりというのもアレなのでダンジョンの魔物たちを相手にひたすら経験を重ねてもらっている
「正直これくらいじゃ物足りないか?」
「素早さに目を慣らすにはとてもいいのですが、ご主人様と対峙した時に比べると心に余裕が出てしまいますね」
「なるほど。まぁ油断してるわけではないんだから心が落ち着けているのはいいんじゃないか。命のやりとりをしてる以上は緊張感は持つべきだろうけどな」
(よそ見しながら魔法放って魔物倒すアレウスさんが言うことじゃないですけどね)
俺とケイブウルフの場合命の奪い合いじゃなくて俺が一方的に命奪う側だから話は別ってことにしておこう
「ご主人様のように魔力による身体強化で大物と対峙できるようになればいいんですけど」
「そこは向き不向きがあるからな。ミラの戦い型的にもパワーを必要とする戦い方じゃないし、それはしょうがないと思うけどな
。今できることをやるしかないさ」
ミラの戦い方は相手の攻撃をいなし、ナイフで致命傷の一撃を与えたり、相手を何度も切って削っていく戦い方
元々身につけていた護身術とかナイフの扱いを俺との実戦形式の戦闘でその二つの技術を戦いの技術へと昇華させた
はっきり言ってセンスがある、最初俺の相手や魔物の相手に苦戦していたが回数を重ねるごとに動きはよくなっていった
魔力による身体強化も使えないわけではないく戦闘において活用する場合動体視力や身体能力の向上に魔力を使うのに精一杯だという話だ
(アレウスさんみたいに力の押し付けみたいなゴリ押し戦闘法じゃないですからパワーはたしかに必要ないですよね)
そういうことだ。こと技術という話においてはそういう経験をしっかり積んでるミラの方が俺より上なのはたしかだ
「ご主人様、素材の方回収終わりました」
「あぁおつかれ。俺が換金して後でミラに渡すよ」
「いえ、買っていただいた短剣の代金もお返しせねばなりませんし。私が金銭をもつ必要もありませんから」
「気にしなくてもいいんだよ。ミラもしっかりとした武器扱っておかないと後々困るのはだろうし、今ミラが手に持ってる素材はミラ自身の力だけで手に入れたものだしな。正当な報酬なんだよ、だからしっかりあとで受け取ってくれよ」
俺はそう言って自分が倒したケイブウルフから牙を回収する
毛皮の方は雷魔法によって焼け焦げたので素材にならない
「ご主人様、もう少し強い魔物と戦わせていただきたいので下の階層に行かせていただいてもよろしいでしょうか」
「全然いいぞ、強い相手戦った方が面白いしな」
エリーナに「それを面白いというのはあなただけです」と言われたような気がしたが、気のせいだと思うので無視してミラと一緒に下の階層へと進み
時間の許す限りミラと共に魔物の相手をし続けた
◇
「やはり自分より強い相手と戦い、活路を見出した時が一番力をつけるのに効果的だも実感しますね」
ダンジョンから協会へ戻る帰り道にミラがそんなことを言う
なんというかミラは度胸がすごい
実力的にきついし、無傷じゃ絶対に勝てないぞって言っても「やらせてください」といってギリギリの戦いをして勝利を収め自分の糧にしている
(アレウスさんの威圧を浴びながらアレウスさんと何度も戦ったおかげで胆力的なものがついてそれがミラの急激な成長を促してるんじゃないでしょうかね。アレウスさんに比べたら魔物なんて可愛いものでしょう)
相当引っかかる言い方をされたが、なんかいい感じになんちゃって修行がうまくいってるのでいいことだ
いや、まじでこれで何も変わらなかったら俺どうしたらいいかわからなかったもん
ミラに失望されて終わっていたところだ
オラス・ノマロの実力を考えるに、なんとなくだがあいつは別に強者の風格みたいなものは感じなかったし、しっかり状況を整えてやったら今のミラなら普通にあいつに勝てるんじゃないのか。悪魔の力とやらが俺の予想以上でないことを祈るしかない
そろそろギルドマスターのドーラが言っていたツテとやらがこの街に来るみたいだから期限も近い
仕掛ける瞬間を考えなきゃいけないな
「…ちゃん!!お兄ちゃーん!!!」
今後のことを考えて歩いているとかなり焦った様子のエレナが走ってくる、その目には涙が浮かんでいる
「どうしたエレナ!?」
「お兄ちゃん、大変…エミリア先生が…」
「エミリアがどうした」
「エミリア先生が連れていかれちゃったの!!!」
エミリアが連れてかれた!?
エレナの様子を見るに連れて行ったのは間違いなくあいつだ
俺はエレナを抱きかかえ、落ち着くように背中を叩いてやる
そしてミラの方を向くと、ミラはうなづいて状況をある程度理解していることをしめしてくれる
とりあえず教会に戻って詳しい話を聞こう
◇
「おい、マリア大丈夫か?」
「なんだい私はまだ心配されるほど老いちゃいないよ」
顔に濡れたタオルを当てているマリアに駆け寄り回復魔法をかける
「オラス・ノマロが来たんだな?」
「あぁしばらくおとなしかったから大丈夫だと思ったんだけどね。あんたがいない隙をつかれたよ」
「すまん、俺も油断してた。子供たちの方はミラに任せてあるから詳しい話を聞かせてくれ、話せるか?」
「あぁあんたの回復魔法のおかげで元からあった腰の痛みもどっちかいっちまったさ。さて、ただ状況は急を要するからすぐに話すよ」
マリアの話からするにいつも通りオラス・ノマロが手下を引き連れてやってきた
俺が教会に来てからは俺にビビって来てなかった。なんなら一回だけ手下だけよこしてちょっかいかけていたが軽く俺が「おはなし」してからはほんとに音沙汰がなくなった
だが今回は来た。俺がいなくなったタイミングは狙ってのことだった
そしていつもと様子が違っていたらしい、マリア曰く急いでいた、と
「何か向こうでも事態が動いたのか?もしかしてこっちの動きがバレた…?」
「いや、そういう感じではない。どうやらここをしばらく離れるようなことを言ってたよ。どうやらこの地域をおさめる父親ノマロ男爵に呼ばれたらしい、去り際にそんなことを言ってたよ」
「なるほどな…エミリアのことはもちろんだが、なにもかもタイミングが悪いな」
「あぁノマロ男爵事態が邪神教に関係する可能性がある今先に息子だけでもバレないように捕縛しておきたいところでもある。だがそんなことよりも私はエミリアを助け出してやりたいよ、オラス・ノマロがどんな無茶をするかもわからない」
めんどうなことになったな…待てよ
タイミングが悪いと言ったが、ある意味いいかもしれない
(どういうことですか?)
今緊急事態を要するから、イレギュラーの行動をとっても許される
(つまりもしかして今すぐにオラス・ノマロのところかちこむってことですか?)
かちこむってお前な…いや、かちこむってことか
そういうことだ、それならすぐにエミリアを助け出せるしミラとの約束を守ることはできる
(相当ゴリ押し理論な気がしますけど、実際悠長にはしていられない状況ですからね)
マリアに俺の考えを提案し、うまく調整できるかどうかを相談した
オラス・ノマロを殺してはならないなどのいくつかの決め事を作り、俺はミラに伝えにいく
マリアはドーラに連絡して、うまく取り合ってくれることを約束してくれた
「本日の夜、ですか?」
「あぁエミリアを助けなきゃいけないし、ミラの約束を守る瞬間は今ここしかない。覚悟はできてるか?」
「はい、覚悟ならばご主人様に助けを求めた時から出来ております。すぐに準備をします」
ミラは特に驚く様子もなく粛々と準備をすすめる
ミラはオラス・ノマロの相手をするとして俺はどうするか…まぁあいつの手下のごろつきの相手を楽しく相手するか、物足りない気するがしょうがないよな
(結局アレウスさんが暴れたいだけな気がしてきますね。まぁここは勧善懲悪、勇者の物語らしく正義のヒーローになっちゃいましょう!!)
別に正義のヒーローになるつもりなんかはないけどな
◇
「特に変わった様子はないな」
闇夜に紛れて空からオラス・ノマロ邸を眺める
一応俺が侵入したんだけどな、特に対策をしてない。俺が侵入したことに気づいてないのか、窓割って入ったんだけど
今思えば無用心の潜入だったからバレてなくてよかったな
「…ん?馬車?」
ノマロ邸に入る一つの馬車、こんな夜中に?
どうやらオラスがここを離れるという話は本当の可能性が高いな
俺は下で待つミラの元へと戻る
「悪い、待たせたな」
「いえ、それよりご主人様馬車が一台屋敷の敷地内に入っていきました」
「あぁただの推測だが、あの馬車に乗ってオラスは領地を出る可能性があるな。わざわざ夜に出て行くものかね」
まるで夜逃げだが、どうやらこの街を離れるのをあまりバレたくない様子だな
「敷地内に侵入したらとりあえずエミリアを探そう。まずは彼女無事を確保するのが優先だ」
「はい、かしこまりました」
「まぁ見回りとかに見つかったら周りにバレる前に撃破って感じで行こう。可能な限り殺さない方向で頼む」
ミラは小さく頷き、準備が整ったので敷地内へと侵入して、屋敷へも無事侵入する
「さて、こっからだが…」
「誰だ、おまっ─!?」
目の前で転がる見回り、俺とミラの間で流れる微妙な空気
「廊下だとな、角でばったりあったり直線で出会ったりするからな。気をつけていこう」
「はい、かしこまりました」
ミラは特に何も言わずにしずしずとついてきてくれる
(なんかアレウスさんってしっかりやろとして逆に上手くいかないタイプですよねぇ)
いつもが適当なだけにな、しっかりしてるふりしてるだけなのが露骨に出てくるんだよな…
正直周りの被害を考えず単純にぶっ飛ばしていいとなるなら、最初からフルパワーでこの屋敷に強襲かけるしな
「こういう時さらった人間を閉じ込めておく場合どういった部屋にいれておく?」
「そうですね…無理矢理さらった形ですが、本来はエミリアさんを婚約者として扱うはずです」
「ということは丁重に扱ってたりするのか」
「はい、それでいて簡単に脱出できない部屋にしてると思います」
なるほどね、簡単に抜け出せないとなると出口から遠い部屋になる…多分二階だな
「そういえば一室だけ2階の窓に鉄格子がついてたな」
「可能性が高いかと、闇雲に探すよりは検討がつくとこから探したほうが良いと思います」
ミラと頷いて意思を取り合いその部屋を目指す
◇
「……誰ですか??」
「どうやら正解だったみたいだな」
「あ、アレウスさんっ!?」
俺の姿を見て驚いたエミリアが大きな声を出す
俺は人差し指をたてて「静かにしてくれ〜」とポーズでアピールする
「アレウスさん…それにミラさんも、どうしてここに?」
「シスターマリアからのご依頼だ、助けに来たぜエミリア。俺は冒険者だからな、報酬があれば依頼は受ける」
エミリアは安心したのかうっすらと涙を浮かべて笑い返してくれる
「怪我とかはしてないか?」
「はい、無理矢理連れられましたがそれ以外乱暴なことをされていません。ただこの部屋に閉じ込められて困ってはいました」
「無事ならよかったよ。さて、ミラここからは手筈通りやるぞ」
「かしこまりました」
「そういえば大変です…!!オラス・ノマロ様が今夜ここを出るとおっしゃってました。その時に私も連れて行くと」
「と、なるとやつがこの部屋に来る可能性が高いか…。それはむしろ好都合だな」
「はい、私はここで待たせてもらうことにします」
俺たちがもう一つ来た理由を知らないエミリアが「えっ…?ミラさんが残る…??えっ…?」と俺とミラの顔を行ったり来たりする
「じゃあ俺がエミリアを予定の場所まで連れてくよ」
「はい、お気を付けてください」
「ミラも気をつけろよ。俺もすぐに戻ってきて他の奴らの相手をするよ」
ミラに答えて俺は窓に近づき無理矢理鉄格子を外して外に出れるようにする
「さて、エミリアいくぞ」
「えっ、あのアレウスさん、鉄格子、えっ、っ、えっ!?」
俺はエミリアを抱き抱えて窓から外に飛び出る
「アレウスさん落ちます!!危ない、ほんとに──!!あれ?」
「エミリア俺がモノを浮かしたりするの得意なの知ってるだろ??」
「いや、でも私自身が飛ぶのは初めですから‥!!」
「まぁ落ち着け落ち着け。騒いでると気づかれるぞ」
とりあえずマリアと約束していた地点までエミリアを運ぼう
(こういう時瞬間移動とか出来たら便利なんですけどねぇ)
瞬間移動なんてと思ったが、この世界だったら普通にありそうだな
(もちろんありますよ、空間魔法という魔法の一部ですね。この世界に来る前にアレウスさんにも備え付けようと思ったんですけど、アレウスさんの魂の強度が足りなくて無理だったんですよね〜。空間魔法容量大きいんですよね)
この女神…人の頭の中に居座るだけじゃなくて自分の好みで俺を改造しようしてやがったな
(でも、結果的にアレウスさんは強いから別によくないですか??)
この女神開き直ってやがる‥
実際問題求めたらキリはないが応用が効く雷魔法、色々と便利な回復魔法、限界を超える無茶が可能な環境適応とか癖のない力を得ているのはたしかだから問題はない
まぁひとつだけ癖のある契約能力はあるけど、使う機会がほとんどない能力だからな
(そうですそうです!!私だってね、色々と考えて可能な限りの容量でうまいことやりくりしたんですからえっへん!!)
思い浮かぶ、どんな顔かも知らない女神がムカつく表情で胸張って反り返ってる姿が思い浮かぶ
既に屋敷から離れ大通りまで来る
「さて、この辺まで来たら安全そうだな。エミリアここから一人で冒険者ギルドまでいけるか?」
「はい、道ならわかりますがアレウスさんはどうされるんですか?」
「俺は屋敷に戻るよ、ミラが残ってるしな」
「そうですよ!!ミラさん!!ミラさんひとりで残しちゃうなんて大丈夫なんですか?」
大丈夫かと聞かれたらどうなのだろうか
オラスノマロが達人でもない限りすぐにやられたりする可能性は低いだろう
オラスノマロ意外と接近した場合は引くと言う約束もしてある
だがもし‥もしミラが既に負けていて、殺されたり陵辱などされいた場合‥
「アレウスさん?大丈夫ですか?」
「ん?あぁなんでもない。もちろん俺は今からすぐ戻るよ、俺も暴れたりないしな」
俺はそう告げるとエミリアを残し屋敷に戻る
その道中だ
(アレウスさ〜ん、ミラさんのこと考えて少しムッとしてましたね?もしかしてあれですか、俺のものに手を出すな〜!!的な独占欲ですか?)
エリーナそう茶化してくる
「違うわ、アホが。普通に考えて一週間近くそれなりに関わった人間が不幸な目に遭ってたら気持ちが落ち込むだろ。ミラを命が関わる問題に引き入れた責任があるのは俺だしな」
(といってもアレウスさんががミラの世話を断ってもあの子を一人単身で成し遂げようとしてたと思いますけどな)
「だから少しでも手を貸したんだろ。だかお前が言ってるような感情は抱いてないさ」
(じゃあもし既にミラさんがアレウスさんが想定した最悪の場合になって場合どうするんですか?)
「いや、それはよ‥」
(ほら今明らかにムカッとしましたよね?俺の女になんてことしてくれてんだ!って?)
俺は今とりあえずお前のその茶化しにイラッとしてるよ──
ありがとうございました