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ようこそ、理想郷へ(改稿版)  作者: 林桃華
第1章 旅の始まり
15/21

下準備1

よろしくお願いします

「...さて、これから大変になるな」



俺は街道を歩きながら独り言をつぶやく




(ミラさんのお願いがまさかのものでしたからねぇ)



まったくだ、まさかミラがあんなことを言うなんて



「あなた様...アレウス様が持たれる魔力の凄さはこの魔眼で確認しております。アレウス様の実力は相当なものであると見込んでのお願いがあります。私に...私にノマロ家や悪魔達と戦えるだけの力をください...!!」

「......は?」(......は?)




俺とエリーナの素っ頓狂な声が重なった瞬間であった






「どうしたもんかね」




力をくださいとか言われてもな

つまりあれだよな、俺に鍛えてくださいとお願いしてんだよな




(どうしてアレウスさんは「あぁ任せとけ」なんて言っちゃうんですかねぇ)


俺もどうして言っちまったんだって後悔してるところだよ



だから今悩んでるんだろうが...



ミラは俺に了承を受けて、安心して力が抜けたのか気絶するように眠ってしまっていた


解呪されてからそんな時間ってなかったしな無理させてたかもしれないな



「しかも戦うときたからには色々と調べなきゃいけないしな」




まずは誰が俺たちの敵なのかを明確にしなきゃいけない


オラス・ノマロが悪魔憑きってことはわかったが、この一件の首謀者があいつとは限らないし


やつの親であるガストン・ノマロってら貴族も怪しい


というか怪しむべきはこの一件に関わってそうな奴らだから、やはり敵であるという線引きはしっかりしなきゃいけない



とりあえずマリアのやつに悪魔っていうのがどんな存在かって聞いてみた





「あ?悪魔がどんなのかって?あんたそんなこともしらないのかい?」

「あぁそういうのとは無縁の生活だったからな」

「子供でも普通知ってるようなことを知らないのがあんただったね...。悪魔っていうのは簡単に言えば邪神の使役獣のことさね」

「邪神って、あのおとぎ話に出てくるか?」

「そうさね、初代勇者様が倒してくださったあの邪神の配下なのさ。邪神が滅ぼされて数千年たった今でも配下である悪魔達は生きているのさ」

「そんな珍しいものでもないのか?」

「どうだろうね…あたしにとっては馴染み深いものだけど普通に暮らしてちゃお目にかかる方が少ないかね。正直悪魔よりも盗賊みたいな悪党の方が一般人にとっちゃ怖いもんだね」




悪魔ってのはそこまで身近なものじゃないのか


てか邪神ってホントにいたんだな、エレナたちに読み聞かせで何となく読んでたおとぎ話がノンフィクションとはね



つーか、神だったらエリーナはなんか知ってるんじゃないか?



(知ってるには知ってますが、天界の規定で話すことはできないので残念ながら喋れないんですよ)



天界の規定ね、知ったら知ったで面倒なことになりそうだからもう聞くのはやめとくか




「悪魔のことはわかった。その悪魔とつるんでるような人間ってのはどんなヤツらなんだ?」

「悪魔憑きのことかい?そうさね...心が弱ったものが取り憑かれることもある...あとは邪神教徒が契約していることもあるね」

「邪神教徒ね...確認だけど、そいつらってまともな連中じゃないよな?」

「当たり前だよ、邪神の復活を願っているおかしな連中だよ。教団の教えのためならなんでもやる犯罪集団みたいなものだね」




可能性としては2パターンか

だったらオラス・ノマロは邪神教徒である可能性が高いな




「なぁ例えばなんだが、貴族のやつが邪神教徒だった場合どうなる?」

「お家断絶は当たり前、良くて一生牢屋生活、悪くて打首だね。...って、あんたそんな質問するってことはもしかして?」

「あぁ俺はオラス・ノマロ...いや、最悪ノマロ家自体が邪神教徒と関わりがあると思ってる」

「証拠はあるのかい?」

「いや、まだ推測の段階だけどな...確定してるのはオラス・ノマロが悪魔憑きってことだけ...証拠がでればどうにかなるのか?」

「証拠さえあれば私の知り合いの伝であの男を断罪できるよ」




───────




というのがマリアとの会話、そして俺は街に出て今に至る




ちなみにこんなことを考えている間に色々買い揃える



(マントと仮面ですか、これでかくせますかね?)



「まぁ変装するためだしな」



この世界に変声機とかないだろうしこれが限界だろう



向かうところはある場所、人伝いに場所を聞いてたどり着く




「あそこか...」



2階建ての割かし大きな建物、俺がこの街に共に来た商人エドさんの店である



エドさんは奴隷としてミラを管理していた人間だ、ノマロ家との関わりがある可能性が高い


だから直接敵かどうかを確かめる必要がある


遠目に眺めていると見覚えのある集団が店から出てくる



オラス・ノマロとその護衛者たち、そしてエドさんだ



見た感じオラスのやつは機嫌が悪く、エドさんがひたすら謝っている



ミラを迎えに行こうと思ったが店から失踪していてご立腹といったところか?


ざまぁねぇなとしか言い様がないな、孤児院の時のビビり顔といい調子乗ってるやつが痛い目見るのは気分がいいな



(アレウスさんが今その調子乗ってる人なきがしますけどねぇ)


俺?俺はいいんだよ自分のことだから




そしてオラスたちがどっかに行ったことを確認して建物に近づく



正面からはいる訳にはいかないか



「というわけで裏口から失礼します」

「え、あなた一体───」




少し電流を流して静かに気絶させる



(流石というか躊躇いもなくやりましたね)



ここで眠ってくれた方がお互い様だからな


軽く雷魔法で痺れさせて気絶させただけだし死にはしないし後遺症とかも残らないだろう



とりあえずもう少し慎重にいこ───




ビリリッ!!バタ...



(言おうとした途端に気絶した人が増えましたね)

「.........はぁ」




俺は気絶して倒れた人を引きずって死角となる場所に置いておく





俺はなんとか人に出くわさないように慎重に行動し、ついに目的の部屋を見つける


ドアの前にはエドさんの名前が掘られている


とりあえず扉をあける、中に誰もいないことを確認し直ぐに扉を閉めて来るのを待つことにする



(いた場合はどうしたんですか?)



「その場合は一瞬で距離をつめて口をふさいでたな...っと、誰か来るみたいだな」





俺は扉の横で息を潜めて音を聞く



「では、早急に見つけてくれ」



これはエドさんの声、誰かに指示しているのか?察するにミラに関することのようだが



そして扉が開き、中にエドさんが入ってきて扉を閉める



「やっと来たか」

「っ!むぐっ!?」



俺は一瞬でエドさんの口を塞ぎ声を出させないようにする



「いいか、大声を出せば一瞬で殺す。もちろんそう疑われるような行為もしたら同じだ、この言葉が嘘じゃないことはわかるな?」



言葉に殺気を込めつつ話しかける



エドさんは俺の言葉をしっかりと理解したことを示すかのように真剣に頷く



それを確認して俺は塞いでいた手を離す



「あ、あなたは...?」

「俺のことはどうでもいい。お前は俺の質問に答えるだけでいい、嘘を言った場合も殺す。わかったな?」

「わ、わかりました...」



エドさんはおびえたように答える



「お前の店でハーフエルフの少女を扱っていたな?」

「あ、あの娘のことをご存知なんですか...?」

「名はなんという?」

「彼女の名前はミラノバと申します」



とりあえずミラがエドさんの商品であったことは確認できたな


「彼女は今どこにいる?」

「あの娘は今ここにはおりません」

「それは既に売り先が決まり売ってしまった後ということか?」

「そ、そういうわけでもございません」

「ではどういうことだ?」

「か、彼女は当店から姿をくらまし、今も尚見つかってはおらず現在捜索中でございます」

「そうか...では逃げた理由はなんだ、教えろ」



俺は今まで以上に威圧を込める

あの状態のミラがどうやって1人で逃げ出したかを知るために




「どうした、早く答えろ」

「わ、私が...私があの娘を逃がすために手引きをしました...」

「なに...?」



エドさんがミラを逃がすために手引きした?え、なんで?



混乱してる俺をよそに何故かエドさんが覚悟をしたように俺を見る



「あ、あなたがどのような方かは知りません。ですが、あなたが腕のたつお方だと思いお願いがあります...ハーフエルフの娘、ミラノバを見つけたら彼女のことをノマロ家から助けていただけないでしょうか!!貴族に歯向かうなど無茶も承知の願いなのもわかっております、ですが、彼女だけは助けていたただけないでしょうか!!」




ん??????????




(アレウスさんが本日2度目の予想の斜め上を行く急展開で頭がおかしくなってしまいました)



いや、だってよエドさんがミラを逃がしたってどういうこと?しかもなんかいきなり力をかしてくださいとかお願いされてるですけど?



(シンプルに考えればエドさんもこの一件に巻き込まれたある意味の被害者で、いいひとだったからミラさんを逃してくれたんじゃないですか?)



確かにな...とりあえずエドさんに詳しい話を聞こう



「お前の事情を詳しく知りたい、話せ」

「は、はい.....実は私の店の本店はノマロ家当主であるガストン・ノマロ様が治めている街、アピエダにありまして一週間前にガストン様直々に息子に受け渡して欲しいものがあると言われました」

「それがハーフエルフの娘だったのか?」

「は、はい。ガストン様からは極秘にと言われ当店で扱っている奴隷の方々と一緒に彼女をブリストンに連れてきました」

「話はわかったが、それとお前がその娘を逃がすのとどう繋がるんだ?」

「そ、それはですね...極秘の依頼と申しましたが、実際には私は脅された形ですして、逆らえず彼女をこの街まで連れてきました。彼女の事情を知ろうとは思いませんでした、知ろうとすれば私...いや、私や私の家族、最悪私の店の従業員全員に災禍が降りかかる可能性もありましたので。....ですが、この店に来て彼女をオラス様に引き渡すまで過ごしてもらう部屋に彼女を連れてきた時に偶然彼女のフードが外れてしまったんです。その時のあの娘の眼を...表情を見てしまったんです...何もうつらないあの顔を...」



エドさんが後悔するように話す




たぶんエドさんは呪われていた時のミラを見たのだろう。目に光はともらず、自分の置かれた状況を理解したミラは絶望し諦めてしまっていたのだろう


あとは色んな感覚を奪われた状態のミラが見る人にはそう見えてしまったのかもしれないな



「私は彼女を見て思ったんです、何をやっているのかと。もちろんガストン様からの報復は恐ろしかったです。ですが、彼女を助けてあげなければ私は人として大事な何かを失ってしまう方が恐ろしかった...」

「それで逃がしたのか?」

「はい、誰にもバレないように。まわりに彼女が逃亡したと言うことになってますが」

「なるほどな、それに関してオラス・ノマロはなんて言っている?」

「オラス様はありえないと、私たちのミスに対してたいそうお怒りになられてました。それと彼女を見つけださなければわかっているな、とも...」




オラスのありえないという発言は逃げ出したことにありえないってことだろうな


ミラには相当な強めな呪いがかかってたみたいだし、1人で逃げるのは確かにありえないだろう


ミラが逃げ切れたのは本当に運がよかったからだろう、あとは魔眼を持っていたおかげか


そしてエドさんは形だけでもミラを捜索させてるようだ、そしてオラスのやつに脅されていると



「ハーフエルフの娘を見つけなければお前はどうなる?」

「そうですね...私は、間違いなく殺されるでしょう。従業員や私の家族はどうにか守るつもりです」

「お前が助かるための条件は?」

「それは一週間以内にあの娘を見つけてオラス様に引き渡すこと、ただそれだけでございます」



一週間.....一週間か



これならあと聞くことは一つだけだ



「お前の事情はわかった」

「彼女を助けていただけるのですか...?」

「ハーフエルフの娘を助け出す以外にお前は望まないんだな?その場合にお前はオラス・ノマロの条件を満たせず命を失う危険があるが、それでいいんだな?」

「はい、それは彼女を逃がした時に覚悟出来ています」



俺は聞きたい答えを聞けて仮面の裏でふっと笑う



ここまで聞いたらこの人の話していることは自分が今助かるための嘘じゃないとわかる


エリーナが言っていた通りシンプルにエドさんはこの1件の被害者であり、そていい人であるんだろう




「すいません、エドさんこんな真似しちゃって」

「え...?えぇぇぇぇぇぇぇ!!」



俺はそっとマスクを外し、エドさんに正体をバラす



「エドさん、もう少し静かに」

「す、すいません。まさかアレウスさんだとは」

「隠していてすみません、エドさんを見極めるために変装していました」

「い、いえそういう理由でしたら仕方がありません。...しかし、そうなりますとアレウスさんは彼女と会ったのですか?」

「えぇ一時的にですが保護して彼女の安全は確保してあります」




エドさんが俺の言葉を聞いて「そうですか」と安心したように答える



「場所については用心のため話せませんが、既にこの街から遠く離れた場所に彼女は連れて行っています」

「はい、この街から離れたのならばさらに安心です。形だけと言いましたが探しているものたちは本気で探していると思いますので」


ふむ、ミラの場所を詳しくは聞こうとしないか

これも含めて全部演技だったらエドさんを信じた俺のミスだろう


というわけでエドさんに対する警戒度をさらに下げることにする




「彼女が安全ならばよかったのですが、アレウスさんはいったいどうしてここに?」

「それはミラの置かれた状況を見過ごせなかったからですよ。単純にミラを逃すだけでは問題を根本から解決したことにならないといいますか...」

「根本...まさかアレウスさん、ノマロ家を...」

「そうですね、ノマロ家が悪事を暴くこと、そしてその上で断罪すること」




マリアとの会話の時も断罪なんて仰々しいことを言ったが俺に正義感があって言っている訳ではない


ただ単に武力でノマロ家をボコボコにしても問題なくするためだ


断罪という理由さえあればそれくらいのことは許されるだろう




(流石アレウスさんですね、暴虐の塊ともいえる思考)



仕方ないだろ、俺にあるのは戦う力くらいだ

そして力を振るうための客観的な正当性が保険で欲しかったんだよ




(見方を考えれば小心者とも言えると、)



いや、そこは慎重と言って欲しいとこだけどな

あとは事後処理の面倒くさを考えた時に今色々面倒なことをやっておいた楽って思っただけだよ





「それでなんですけどエドさんは何かそういった情報はありませんかね?」

「私ですか、いや証拠として十分なものは私の手にはありません。ただ脅されたなどと話しても言った言わないの水掛け論のようになりますでしょう」

「確かにそれもそうですね」

「すみません、何もお力になれなくて...」

「いえ、俺としてはエドさんが俺が考えていた通りいい人だったってわかってよかったですよ。それにエドさんがミラを逃してくれなかったらミラを助けることはできなかったですし」




とりあえずエドさんに対する考えは俺が言ったことそのままだ



なんか証拠とかがあればラッキーくらいな話だしな

俺はエドさんにまだやることがあるので、と言ってエドさんの店を後にする





「さて、次は証拠を見つけに行かなきゃな」




これが一番面倒なんだが、どこに行くべきかは簡単に検討がつく



(敵の本拠地、ですか.....大丈夫ですかアレウスさん、もしバレたら一戦まじえるとかそういう話じゃ済まないかもしれないですよ?)



まぁそうなったらそうなったで、ミラの約束を守れないかもしれないが証拠さえ見つかれば最悪見つかっても問題はない




とりあえずあいつの屋敷の場所はマリアから聞いてある。潜入するなら闇夜に紛れるのが一番いい



ミラのことも気になるしとりあえず今は孤児院の方へ帰ることにしよう

お読みいただきありがとうございます

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