94話・天然パーマ!お断り!
昇華階段を昇りきると…
大きな正門が、三人を待ち受けていた。
この門こそ、竜の眼への入り口であり。
もはや、ゴール(安全圏)の一歩先まで、差し掛かっている。
が、しかし…
門は硬く閉ざされており、どうやら歓迎されていないらしい。
レ二ズは、ワイズの背中から降りて。
門の扉を、殴りつけるように、何度もノックした。
この門は、かなり大きく、高さ40~50メートルに達する。
とてもじゃないが、手動で開けられる代物ではない。
ゆえに、扉を動かすには、内部からの装置を、起動する必要がある。
つまり、扉の奥にいる連中に「開けてくれ」と、呼びかけるしか無いわけだ。
叫びながら、レ二ズは、扉を何度も殴る(ノックする)。
「おい!あけろよ!おいッ!!」
「おい!シカトか?テメエら!」
だが、中の連中は、スルーを貫いている模様。
シュタハスの方を、チラリと見てから。
「こっちにゃ、シュタハスがいるぜ!それでも、ダメかッ?」
このガキは一応、リーダー格…そう安々と無視できないはず。
そう読んで、レ二ズは、彼女の名を挙げた…が。
彼女の名が、出てきたとき。
ワイズは、直感的な胸騒ぎを感じた。
そして、背中の主に、警告を飛ばした。
「シュタさま。自分の背中から、離れないでください」
その真剣な声に、シュタハスは、目を丸くするも。
言われるまま、ワイズの背中に乗っている。
そんな二人をよそに、扉を殴り続けるレ二ズ。
「アホ毛女が、アホ面垂らしながら、帰ってきたんだぞ!」
「ふぇ、すっごい罵倒されてるぅ~」
後ろで嘆くシュタハスを無視ながら、ひたすら怒鳴り散らす。
すると、ようやく扉に変化が起きた。
ゴゴゴゴゴゴ…と。
巨大な正門が、少しずつ開放されてゆく。
門の隙間が、徐々に広がって。
開かれた扉の向こうから、幾つもの眼光が現れた。
その眼光は、モンスター(生存者)のモノに違いなく。
鋭い視線から、ヒシヒシと、憎しみが伝わってくる。
瞬間…ワイズは察知した。
彼ら(モンスター)の憎悪が、シュタハス一人に、集中していることを…
ここにいては、彼女が危ない。
「シュタさまッ逃げます!」
危機を察して、ワイズは体を翻そうとする…が。
このとき…シュタハス自ら。
「まって!!!」
力強く声を上げ、自ら「安全」を放棄した。
その気迫に圧され、ワイズは、動きを止めてしまう。
そして、シュタハスは、臆することなく。
いつも通り、のんびりと…ワイズの背中から降りた。
やがて、正門が完全に解放されて。
その先奥から、憎悪を抱えながら、モンスターたちがゾロゾロと出てきた。
彼らの怒りは一点、シュタハスのみに注がれている。




