87話・破壊の主が回復アイテム?!
実のところ、ドラゴンのフラムも…シュタハスに疑問を抱いていた。
だが、周りと違って、彼は俯いているだけだ。
すると、小柄なゴーレムが、フラムに絡みだした。
「おい、フラム。お前、まだ『アレ』持ってんのかよ?」
『アレ』と言われ、フラムの表情が固まった。
その分かりやすい反応に、周りからブーイングが飛んでくる。
「おいおい、六華の種かよ!」
「俺たち、騙されたんだぜ」
「ソレ(六華の種)だって、きっと詐欺だろうぜ!」
彼ら(モンスターたち)が批判する「六華の種」とは…
シュタハスが、モンスターたちに授けた…特殊なアイテムの事だった。
そのアイテムは「小さな一粒の種」であり。
彼女が言うには…
この種には「如何なる傷をも癒す」治癒の力が、秘められているらしい。
シュタハスから貰い受けた、その種(六華の種)は。
フラムかグラス…どちらかのドラゴンが、所有する事となった。
フラム自身、そんな役など、乗り気ではなかったのだが。
グラスに頼まれ、種の所有者を任せられてしまった。
この通り、六華の種は、重要な回復アイテムなのだが…
今この状況において、モンスターたちは、シュタハスを信用しておらず。
こうして、六華の種までもが、罵倒されている。
「今すぐ出せや、そんなモン、叩き割ってやらあ!」
六華の種を渡せ…と、攻め寄ってくるモンスターたち。
対するフラムはじっと、六華の種を隠していた。
シュタハスの事はともかく、友のグラスから託されたのだ…
そう簡単に、奪われてなるものか。
グッと、辛抱するフラム。
グラスの無事を、友の還りを祈って、遠い夜空を見届ける。
そのとき…
満月の光りが、二枚の翼を照らした。
やがて、そのシュルエットは、ドラゴンの形になってゆく。
歓喜のあまり、フラムは思わず叫んだ。
「グラスだ!生きてたんだ!」
夜空に羽ばたく、その影は、正真正銘グラスのもの。
氷結のドラゴンの帰還に、彼ら(モンスターたち)の少しだけ士気が回復した。




