86話・ロリコンたちの手の平返し
シュタハス神殿、竜の眼にて…
神殿の頂上から、モンスターたち(生存者)は、外の地獄を見下ろしていた。
一体、彼らは何を思うか?
一言も発さずに、外からの悲鳴に耳を傾けている。
烈火のドラゴン…フラムも、今の所は無事で、無力な生存者の一つであった。
感染モンスターの数は、こちら(生存者)側の倍以上…
状況は、見るからに壊滅寸前だ。
絶望に心が折れ、モンスターたちに、苛立ちが募ってゆく。
沈み切った空気の中、ゴクリ…と喉を鳴らすフラム。
唯一の生存者たちは、竜の眼にいる連中で最後…
その上、頼みの綱の「シュタハス」が、消息不明になってしまう。
こう言った、不運の積み重なりのせいで。
彼らの希望が潰えてゆき、今こうして、嘆いているわけだ。
こんな状況で、小柄のゴーレムが、苛立ちながら愚痴を溢した。
「ただの『モブ』だと?ふざけんな!」
「おい、やめろよ」
その『モブ』とは…
シュタハスが演説したとき、宣言された「予言」を指していた。
その内容は「戦士でも、勇者でもない、一般人の男が…世界を救済する」という内容で…
予言の実現の為に、彼女は、モンスターたちに助力を求めたのだ。
演説当初…モンスターたちは、彼女の言葉に、ノリノリだった。
だが、こうして地獄の瀬戸際に差し掛かり、怒りを燃やす者だって出てきた。
「大体!あんな小娘が、シュタハスだと?!」
とある者は、シュタハスを否定し。
「そうだ。騙されたんだ、あのガキ!ミンチにしてやらあ」
とある者は、シュタハスに殺意を燃やした。




