84話・モンスター・パンデミック劇場
同志を殺したオークを見て…レ二ズは、すぐに気がついた。
このオークが、偵察チームのメンバーであることを。
そして、続くように。
偵察チームの面子が、森の奥から姿を現してきた。
だが、彼ら(偵察チーム)の表情は、とても正常ではなく。
全員(偵察チーム)が、緑の液体を流しながら、こちらを睨んでくる。
オークの共喰い。
それに、緑の液体。
異質な要素に、防衛チームは、危険を察するも…
もう、時すでに遅く。
偵察のチームのモンスターたちが、一斉に飛びついてきた。
錯乱した同志を前に、ゴーレムのゲイルが叫ぶ。
「どうしたッ!きこえないのか!」
岩石の巨体が、引裂かれてしまい、ゲイルの体勢が揺らいでしまう。
錯乱した者たちの猛攻は凄まじく、次々と負傷する防衛メンバー。
やられた者は、血しぶきを上げながら倒れると。
緑の液体を流しながら、糸人形のように起き上がる。
その様を見て、レ二ズの頭に「感染者」という言葉が浮かんだ。
正常な者を負傷させ「感染の規模」を拡大してゆく。
どういう原理かは、定かではないが…
感染モンスターから流れる「緑の液体」を、レ二ズは不気味だと感じた。
わずか、数分足らずで、感染モンスターが増殖した。
スライム、オーク、ゴーレム、ゴブリン兵、など…
モンスターの種族に関係なく、仲間が感染してゆく。
レ二ズは、ワイズの背に乗ってから、事の終末を悟った。
「コイツぁ、絶望だな。」
相方を背に乗せたまま、ワイズは黙り込む。
「………」
すると、そんな二人へ「一体のオーク」が救いを求めてきた。
このオークは、シュタハスが神殿にやってきた時。
彼女を煽ってきた、オーク集団の一人だった。
このオークは、すでにボロボロで…今にでも、死んでしまいそうだ。
「俺たち、オレたち…偵察組は」
言葉を途切れさせながら、二人(レ二ズとワイズ)に何かを伝えようとする。
「人間どもの…研究所で、見た」
研究所というキーワードに、反応するレ二ズ。
「何を、見た?何が、あったんだ?」
そのオークが、消えゆくように呟いた。
「緑色の…霧」
そう言い残して、このオークは、ウンともスンとも言わなくなる。
レ二ズは、ワイズに乗ったまま。
「さあ~て、アホ毛姫でも、助けにいくかぁ」
いつものように、軽口を叩いてみせた。
アホ毛姫というのは、シュタハスのことであり。
せめて彼女だけでも、助けようという作戦だろう。
「うん、そうだな…」
ワイズは緊迫しながらも、相方(レ二ズ)を乗せて、神殿へと方向転換した。
仲間の悲鳴に背を向けて…




